えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

VODで小津安二郎監督の『お茶漬の味』を見ました。1952年の映画です。
もとは1932年に制作されるはずだった映画で、時局に合っていないということで、検閲による不許可となったといういわく付きの映画です。夫が軍隊へ応召するという内容が、敗戦後、会社の命令でウルグアイに赴任となるということになった。
「うん、今が一番、いい時だよ」というのは小津の映画で何度も出でくるお馴染みのセリフであるのに気づきました。それから、これも、よく出てくるセリフです。「ああ、戦争は、もうごめんだね、やだね」。監督がそこはかとなく自分の本音を主人公のセリフに託しているのでしょうか? 小津安二郎は三回も応召しているのです。
妻役の木暮実千代が憎たらしくてとてもいいのですが、それをすべて許すのが佐分利信の演ずる夫で、そのやさしさに感じいってしまいます。夫は手を洗う妻の羽織にそっと手をやり、濡れないように気を使います。昔、映画館でこの映画のこのシーンを見たとき、隣にいた女子の涙腺が決壊しているようでありました。後に小津安二郎はこの『お茶漬の味』を失敗作と言っておりましたが、なかなかいい映画だとぼくは思うのですが。




八月二十二日、 新宿末廣亭にて令和七年下席昼の部です。いつものように見た演目を書き出してみます。前座の林家十八くんの「鶴」、二つ目の柳家小はぜくんの「権助魚」、小林けん太さんの音まね、鈴々舎馬るこ師匠の「タトゥーに込めた愛」、蜃気楼龍玉師匠の「鹿政談」、寒空はだかさんの漫談、初音家左橋師匠の「酢豆腐」、古今亭菊千代師匠の手話についての漫談、ロケット団のお二人の漫才 、林家しん平師匠の焼肉屋についての漫談、古今亭志ん輔師匠の「紙入れ」で仲入りです。柳家あお馬「金明竹」、柳家小菊師匠の三味線弾きの唄いの粋曲、桃月庵白酒師匠の「ざるや」、林家木久扇師匠の立川談志についての漫談、むかし家今松師匠の「親子酒」、翁家社中のお二人の太神楽曲芸、主任は柳家小せん師匠の「井戸の茶碗」でした。
最近は落語を聞きながら、うとうとと夢のはざまに行ってしまうことも、いいことのような気がしています。さて、特に印象に残った演目です。蜃気楼龍玉師匠の「鹿政談」。この噺は大好きなのです。蜃気楼龍玉師匠、うまかった。ロケット団の漫才はテレビでは放映できないような爆笑ものでした。林家しん平師匠の漫談でさらに笑い、古今亭志ん輔師匠の「紙入れ」で大爆笑。桃月庵白酒師匠の「ざるや」のぽんぽんと軽妙な小気味よさが楽しい。林家木久扇師匠の漫談でのいつもの談志のこと。鈴々舎馬風師匠もよく談志のことを漫談にしていて、立川談志もその変人ぶりがこれだけ語り継がれるとは、えらいやっちゃ。柳家小せん師匠の「井戸の茶碗」は一人の江戸の町民の正直さと二人の武士の清廉さが、思わぬ幸福となります。お見事。
暗いこの世のつらさ忘れ、寄席は心のオアシスなのです。


VODで黒澤明監督の『生きる』を見ました。1952年の映画です。
深刻な悲劇をユーモアで包んだエンターテイメントを黒澤監督のヒューマニズムが支えており、映画史上に残る素晴らしい映画になっております。「黒澤ヒューマニズム」とも称されます。
志村喬が主役をはった一世一代の素晴らしい演技に感動します。志村喬がブランコに乗って、少しだけ揺れながら「ゴンドラの唄」を歌うあのシーンほど美しい何かを表したシーンをぼくは知りません。
この映画は何度も見たけれど、今回は左卜全の演技に注目してしまいました。左卜全ほど人をくった異能の名脇役はおりません。演技を離れた左卜全も並外れた変人だったそうです。
ぼくの年齢で見ると、「おまえは生きてきたか?」と問われるようでもあり、この『生きる』という映画は何か痛切に身につまされます。


岡田美術館の『愛と平和の江戸絵画』展を見にいきました。たくさんの吉祥を目で愛でました。誰が描いたか判然としない屏風画などにも名画がたくさんあります。日本は素晴らしいのう。酒井抱一の『月に秋草屏風図』、伊藤若冲の『孔雀鳳凰図』、森狙仙の『鹿に猿屏風図』とか、みんな素晴らしい。日本に生まれたことが本当によかった。徳川家の二百六十年の平和の治世に万歳です。
常設展では本当ににたくさんの中国、韓国、北朝鮮、日本の美しい磁器、白磁や青磁や白青磁を一度機に初めて見ました。ぼくは朝鮮半島の高麗時代の菊の模様をうすくあしらった青磁の水さしもしくは花器の『青磁象嵌菊花文長頸瓶』にいたく惹かれてしまいます。なるほど、柳宗悦が朝鮮の陶磁器に惚れこんだ理由がわかるというものです。
帰りに天山湯治郷に寄りました。いい湯でした。


侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『冬冬(トントン)の夏休み』を見ました。1988年の台湾の映画で、デジタルリマスターのリバイバル上映です。むかし、レンタルビデオで見た記憶がうっすらとあります。
黒木和雄監督の『祭りの準備』をなんとなく思い出した。
なぜか、『冬冬(トントン)の夏休み』の中の風景が昔の日本の田舎にあったかのような懐かしさを感じてしまいます。これは東京でオリンピックのあった1964年以前だろうか? それとも大阪で万博のあった1970年以前だろうか? セブンイレブンの1号店が開店する前の1974年より前だろうか? もしかして、日本のどこかにこのような景色が残ってはおるまいか? やっぱ、ないだろうと思い、近代か、現代で喪失した何かを思ってしまうのです。などと思って調べてみると、この映画の背景は1960年代なのだそうです。
冬冬(トントン)を演じる子役の王啓光(ワン・チークァン)とその妹役の李淑楨(リー・ジュジェン)がとてもいい。特に冬冬(トントン)のあの目。あの目は高畑勲監督の『火垂るの墓』の清太と同じ目。
冬冬(トントン)とその妹を送り迎えする車がフォードの高級車だったり、エンディングにかかる曲が日本の「赤とんぼ」であったり、錯綜した台湾の近現代史のことも考えてしまった。
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督のもっとも尊敬する映画監督は小津安二郎だそうです。なるほど。
映画『冬冬の夏休み デジタルリマスター版』公式




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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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