えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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府中市美術館で『ほとけの国の美術』展を見ました。この美術展のいう「ほとけの国」とはどこかといいますれば、仏教の発祥したインドではなく、伝わった中国でもなく、鑑真が来日し、その教えが独自の発展を見せた日本のことなのです。その仏教にまつわる美術を集めた江戸時代を中心にした展覧会なのでした。

地獄、極楽、来迎、浄土、禅、悟り、そして、仏性(心)をもつ動物(『大般涅槃経』で動物は人と同じく仏性をもつとされる)たちの絵を見ながら、ぼくは江戸時代こそ、世界でもっとも早くポップアートが花ひらいたのではないかと愉しくもなるのです。このありがたきこと、かたじけなきことこの上もない教えを伝えて、そして、解き、説いてくれた、鑑真よ、空海よ、最澄よ、ありがとう。

春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術
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上野にある東京芸術大学の美術館で開催されている『大吉原展』を見に行きました。どうしても見たかった展覧会です。

近頃、好きな落語を聴きに寄席によくか通っているのですが、廓噺というジャンルさえあって、例えば、この前に聴いた鈴々舎美馬さんの二つ目昇進披露の公演での吉原を背景にした長講の「文七元結」がすばらしかった。そして、林家つる子師匠の自らの解釈と改作による「紺屋高尾」が、素晴らしいこと、限りなかったのです。

この『大吉原展』には江戸の世のもっともきらびやかな文化の発信地であった吉原遊廓の陽の要素の前提となる「苦界」とも呼ばれた負や陰の部分にも、監修者の江戸時代と文化の研究者である田中優子さんは光を当てるかのようで、素晴らしい。見学しているうちに、ぼくの耳には、林家つる子師匠の「紺屋高尾」の花魁、高尾太夫の「ここにあるものはあたしのものなんか何にもないんだよ」が響いてくるようです。

浮世絵に描かれた遊女や辻村寿三郎さんの花魁の人形を配した吉原のジオラマの素晴らしさ、美しさ。この展覧会で見つけた辻村寿三郎さんの吉原への言葉を引用させてください。

 華の吉原仲の町。
 悲しい女達の住む館ではあるのだけれど、それを悲しく作るのは、あまりに彼女達に惨い。
 女達にその悲しみを忘れてもらいたくて、絢爛に楽しくしてやるのが、
 彼女達のはなむけになるどろうと。
 男達ではなく、女達にだけに楽しんでもらいたい。
 復元ではなく、江戸の女達の心意気である。
 女の艶やかさの誇りなのだ。
 後にも先にも、この狂乱の文化はないだろう。
 人間は、悲しみや苦しみにもにも、華やかにその花を咲かせることができるのだから、ひとの生命とは尊いものである。
 私は、置屋の料理屋で育ったので、こうした苦界の女達への思い入れが、人より強いのかもしれない。
 辛いこと、悲しいこと、苦しいこと、冷酷なようだけれど、それらに耐えて活きているひと達の、なんと美しいことだろう。
 ひとの道に生まれてきて、貧しくても、裕福でいても、美しく活きる姿をみせてこそ、
 生まれてきたことへの、感謝であり、また人間としてのあかしでもあるのです。
 艶めいて、鎮魂の饗宴のさかもりは、先ず吉原の女達から・・・・・・

その技芸に富んだ遊女の生活とその過酷さ。公娼制度の廃止によるアンビバレントな負の部分。いろんなことを感じ、考えさせられます。ここで、この展覧会で知った松尾芭蕉の高弟、宝井其角の一句。

 闇の夜は吉原ばかり月夜哉

この句は、「闇の夜は、吉原ばかり月夜哉」と読んだときと、「闇の夜は吉原ばかり、月夜哉」と読んだときの二つの意味を有しているという。ぼくは歴史の向こうに消え去り、弥陀の本願の岸辺で眠る遊女たちの平穏を祈るばかりです。

それから、三千五百円のすこし値のはる図録もすばらしかった。全オールカラーの大きく分厚い本は吉原研究の集大成のようでもあります。

大吉原展
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八王子市夢美術館で『川瀬巴水 旅と郷愁の風景』を見ました。川瀬巴水のいわゆる新版画を鑑賞していると、なんともいえないような懐かしさを感じて、なんだか泣きたいような気持ちになります。柄谷行人さんは、その著書『日本近代文学の起源』で近代になり初めて日本人は「風景」を発見したというけれど、ぼくの川瀬巴水の版画を見ての感情の高ぶりも、その近代人の「風景」の発見によるのだろううか、などと考えます。むしろ、川瀬巴水の「風景」とは一瞬にして風のように過ぎ去る景色なのではないかしら? 川瀬巴水は旅の名所よりもありきたりな景色を好んだといいます。その余情はすぐれた俳句のようでもあって、あー、それこそが「風景」なんだと、せんかたないことを考えてしまいつつ、なんでもない夕暮れの風景の薄明かるい窓や寂しげな人影に、なんだか、ぼくは泣きたくもなるのです。
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町田市国際版画美術館に『版画の青春 小野忠重と版画運動 ―激動の1930-40年代を版画に刻んだ若者たち―』を見に行きました。

この展覧会の大きなテーマである戦前から戦争期の小野忠重の主導した版画運動に、ぼくは何だか「ナロードニキ」という言葉を思い出す。「ナロードニキ(narodniki)」というロシア語を訳せば「人民の中へ」となり、「人民」とは貧しい農民な工場労働者のことで、たしか、五木寛之さんの昔の小説だかエッセイだかで知った言葉で、ロシア革命の時のスローガンであったと記憶しているのだが、青春を鼓舞するスローガンはあらぬ方向へと流され、実践と現実に負けてしまう。小野忠重たちはどうだったのだろうか?

残された版画はあるものは苦悩に満ちて美しく、あるものは清澄に美しく、それぞれなのだが、彼らがあからさまな戦争協力の作品を残さなかったのはよいことのような気もした。戦前、戦中、戦後を生きていくとはどういうことだろう? これからの日本が永久に戦後であることを願うばかりです。
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竹橋にある国立近代美術館で『中平卓馬 火―氾濫』展を見ました。ぼくの中のイメージでは、中平卓馬というと、森山大道と並ぶあの1960年代後半から1970年代前半の叛乱の時代、大学生がヘルメットをかぶり「革命」や「造反」を叫び、街を闊歩した、そのような時代を駆け抜けた寵児のイメージがあるけれど、中平卓馬は、その1970年代に二度の危機的な変節を遂げていた。自己批判と事故による記憶喪失。そして、2015年に七十七歳で没するまでの長きの間、『なぜ、植物図鑑か』を著した言葉の人、文章家でありラディカルな理論派でもあった中平は、写真とは何かを追及しつづけたし、『中平卓馬 火―氾濫』はそのような中平の人生をかけた撮ることの実戦と追求をもとらまえた強烈な展覧会でなのであります。写真好きな人にはお勧めでございます。

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時間の間に間に、町田市立国際版画美術館で『町田市公立小中学校作品展』を見る。ピュアな表現がなんとも眩しい。ここには、ぼくが齢を重ねて、失ってしまった輝かしきものがあるように思え、その失ったものやことが、失ったゆえに甘露のような味すらすると思えてしまう。子どもたちの絵は素晴らしい。
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横須賀美術館に『となりの国の絵本 躍動する韓国イラストレーションの世界』展を見に行きました。美術館の中は遠足の小学生で一杯。きっと、子どもたちは、こうして偏見という牢獄からいつまでも自由になるんだ。偏見や差別こそ、それをする人を不自由にする、などと思いつつも、ぼくは、昔話の絵本や、数十年前のできごとを題材にした絵本に列島と半島の民俗の違いを感じていたりします。けれど、それらもなぜか無性に懐かしい。きっと、人と人、民族と民族は地下茎でつながっているんだね。韓国と紀州を行き来し、韓国も紀州も半島だと喝破した中上健次は、おれはどこにでもいる、とご機嫌になると言っていたという。おれは、新宮にも、韓国のソウルやプサンにも、ジャマイカのキングストンにも、パレスチナのガザにも、アフガニスタンのペシャワールにも、ニューヨークのブルックリンにもいる。そして、『となりの国の絵本』にもどれば、スージー・リーの絵本は国境、民族、人種を軽々と越えてコスモポライツでその普遍はダイナミック。それこそが素晴らしい未来の予感ではなかろうか?
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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