えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

世田谷文学館に「澁澤龍彦 ドラコニアの地平」を見に行った。展覧会場に入ると澁澤龍彦の声が響いている。しゃがれていて少し甲高い活舌のはっきりした声は、舞踏家、土方巽が死去した際の追悼の言葉であった。原稿とか本とか書斎に飾られていたものだとか、その中には、四谷シモンのエロティックな人形どころか人の頭蓋骨まで入っている。原稿の文字はまるっこくてかわいいのが以外です。
高校生の頃はぼくは澁澤龍彦のエッセイとかよく読んでいた。それから、この人の紹介したフランス文学とか、背伸びして読んでいた。ジャン・コクトー、ジョルジュ・バタイユ、J.K. ユイスマンス、そして、マルキ・ド・サド。
澁澤龍彦の翻訳したマルキ・ド・サドの「悪徳の栄え」の発売禁止にまつわる裁判で1960年代に10年近く戦うのだが、澁澤龍彦自身の7万円の罰金刑を課せられたその敗訴での弁。
「たった7万円、人を馬鹿にしてますよ。3年くらいは(懲役刑を)食うと思っていたんだ」「7万円くらいだったら、何回だってまた出しますよ」
自由な魂です。
その裁判も終わり、1970年ごろからヨーロッパを中心に世界各地、そして、日本のいろんなところを旅行した時の写真も飾られていた。澁澤龍彦の隣には夫人である澁澤龍子さんのニコニコの笑顔がいつも写っていて、二人が本当に幸せそうです。


「ヨコハマトリエンナーレ―2017―島と星座とガラパゴス」を見に行きました。3年おきに横浜で開催される現代美術のお祭りです。
以前、多分2000年代のころに初めて見た「ヨコハマトリエンナーレ」は爆発するような五感で経験するような作品が多かったように記憶しているが、今回の「ヨコハマトリエンナー」何か内向的、内省的であるような気がした。芸術作品も時代からは無縁ではいられず、アーティストたちもどこへ行けばいいのか、足をこまねき、迷っているのだろうか? けれども、了解された答えを差し出すのではなく、問いを発することこそすぐれた作品なのかもしれない。
その中で特に印象に残った作品が四点、香港で活動するヨーロッパ人の団体、マップ・オフィスのジオラマ、ホーチミン(ベトナム)とロサンゼルス(アメリカ)で活動しているザ・プロペラ・グループの映画、Don't Follow the Windプロジェクトと観客参加型の作品、尾道在住の柳幸典のインスタレーション。あたかも起承転結。
マップ・オフィスのジオラマはお盆に乗るぐらいのジオラマの奇妙な島でに小さな小さな人間たちが奇妙な日常をしているというもの。
ザ・プロペラ・グループの映画はこんなストーリー。核戦争後の人類の絶滅した世界にある男が一人、マレー半島沖の孤島にに暮らしている。その孤島は、1970年代にベトナム戦争から逃れた数万人のボート・ピープル(難民)であふれかえっていたのだけど、ベトナム戦争終結とともにベトナムからもアメリカからもはんば見捨てられたような状況に置かれていたことが差し挟まれた当時のニュース・フィルムから分かる。島のいたるところに流れ着いたベトナム人の築いた仏教の宗教施設、仏塔や祭壇が廃墟のように残っている。そこに一人の女が流れ着く。世界に残された二人。女はこの島から出ようと男に提案するが、男は頑としてそれを拒む。ここには記憶があるからここからは出れないと男は言う。
Don't Follow the Windプロジェクトの作品はガラクタのようなヘルメットをかぶって映像を見るというもの。映像にはがれきの山のようになっている福島の帰還困難区域に設置されたアーティストの作品が遠く小さく映さている。その地に封鎖解除後に見れるようにと2015年に12組のアーティストの作品が置かれたそうだ。見に行くことができない展覧会は今もそこで開催されている。
柳幸典のインスタレーションは放射能物質のマークのあるドラム缶の捨てられた廃墟の中、赤いLEDライトの古ぼけた電光掲示板に日本国憲法の九条や前文をうつし出されているというもの。この作品はぼくにはとても悲しかった。
世界が終わっていなければ、三年後にまた会いましょう。




最近は車を滅多に動かさない。それで、乗ろうとするとバッテリーが上がっていて、エンジンがかからないということが二度もあった。一カ月に一回は車を動かした方がいいのかもと思い、月に一回は車でちょっとだけの遠出をする。以前から行ってみたいと思っていた原爆の図丸木美術館にドライブした。
丸木位里さん、丸木俊さんの共同制作の「原爆の図」が展示されている埼玉の北の方の個人美術館です。静かな川のほとりの美術館は今は亡きご夫妻の自宅兼アトリエを改造した小さな美術館であった。
「原爆の図」を見ながら、ピカソの「ゲルニカ」を連想もした。あのピカソの「ゲルニカ」は、ピカソ自身が制作の指揮にあたったその精密に復元したタペストリーがニューヨークの国際連合本部の国際連合安全保障理事会議場前に飾られているというのだが、重要な議決の前には、なんということか、青いカーテンが張られ、見えなくさせられているという。あぁ、国連にはシャガールの「平和」のタペストリーも飾られているのだが、戦争や殺し合いは終わらない。
史上初であった一般市民への無差別な爆撃であったスペイン、バルセロナへの空爆を描き、反戦を訴える「ゲルニカ」が国連に飾られているならば、ぼくは丸木夫妻の「原爆の図」も、同じように国連に飾られるべきなのではと思ったのだった。
何点もの「原爆の図」を見ると、核兵器ほどヒューマニティーに反し、残酷なものはないと思う。そして、ぼくはある時からある国がある国を「ならず者国家」と名指しするようになったのを知っている。しかし、核兵器を持っている国、核兵器を持とうとしている国こそ、ならず者ではなかろうか?
日本が国連の核兵器禁止条約の議決で反対に票を投じたことを知った時は暗澹たる気分になった。ぼくの生まれ育ち、今、生活している、被爆国である日本は、何を目指し、どこに行こうとしてるのだろうか?
話は絵画にもどり、「原爆の図」は政治についての絵ではなく、屏風に書かれてはいるけれど、日本画でもなく、西洋画でもなく、ヒューマニティーと人の命についての絵なのだと思う。
帰りの道で渋滞に巻き込まれ、ぼくにも丸木俊さんのような人がいたらいいのにとも思った。丸木位里さんと丸木俊さんはジョン・レノンとヨーコ・オノのようだ。家に帰ったらジョンとヨーコの"Sometime in New York City"と"Double Fantasy"を聴きます。
原爆の図丸木美術館 / Maruki Gallery For The Hiroshima Panels


町田市の芹が谷公園を散歩していると、町田市立国際版画美術館で「紙の上のいきものたち!!」という展覧会をしていたので、入ってみた。
版画で表された生きものたちでいっぱい。聖書で使われた版画での動物たちとか、古いヨーロッパの大航海時代の世界中の植物や動物、鳥たちが版画で表された博物学の大きな本。中でも一番いいなと思ったのが、町田市在住の竹上妙さんの版画でした。彼女の楽しくてやさしい版画の前に時を忘れてしばし立ちつくしてしまうのでした。
紙の上のいきものたち!! | 展覧会 | 町田市立国際版画美術館
竹上妙もくはんが日記


世田谷美術館に「エリック・カール展」を見に行ってきた。ちっちゃな子どもをつれたお父さん、お母さんがいっぱい来ていて、けっこう混んでいました。
このアメリカ絵本作家の大家はナチスのドイツで青春時代を過ごし、絵を描く原点は、その時代にひっそりと隠れて見せられた当時、退廃芸術と烙印され禁ぜられていたパウル・クレー、フランツ・マルクやアンリ・マティスの複製画だったという。切り絵と貼り絵を駆使した絵が楽しくて美しい。乾いた心のぼくにおいしいお水が注がれるようでもあったのです。
何枚も何枚もエリック・カールさんの絵を見ていると、小学生の時の写生の授業を思い出した。校庭に出て、ぼくが砂場の絵を水彩絵の具でその色の灰色で描いていると、森田先生が来て、こんな風に描いてもいいんだよとおっしゃって、ぼくの描いた灰色の砂場を赤や青、黄色や緑のいろとりどりで塗ってくれたのです。絵を描く自由と自由に絵を描くということを知ったのだと今ごろになって思い出すのです。
エリック・カール展


町田市立国際版画美術館で「横尾忠則 HANGA JUNGLE」展を見た。横尾忠則の版画作品の大回顧展なのです。多種多様に時代時代でさまざまに変転しながらも、とてもイマジネイティブで、やはり横尾さんは天才であった。
感じるのは死と生のコントラストであったり、廃墟と楽園であったり、豊かに含まれる相反的、分裂的な何か。エロスとタナトス。
この前、国立新美術館で「ミュシャ展」を見たのだけど、横尾忠則も出発点はポスターであったのか。横尾さんはビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のジャケットをもっとも影響を受けたグラフィックとして称揚していたけれど、彼のポスターの方がもっと早いではないか。きっと、1960年代に江戸の浮世絵も伝承する世界でもっとも先端のサイケデリックとして、横尾忠則さんのデザインしたポスターこそが、三島由紀夫から唐十郎までを触発し、挑発した日本のカウンター・カルチャーの震源地であったのだろう。そういえば、この展覧会には展示されていなかったけれど、1970年代では、サンタナの「ロータスの伝説」やマイルス・でデイヴィスの「アガルタの凱旋」のレコードジャケットも横尾さんの作品だったのを思い出した。
数人の大学生風の女子が見に来ていて、かっこいい、かっこいいを連発していた。もしかして近くの女子美術大学の画学生さんの集団だろうか。もう半世紀前の作品もそこには含まれていて、けれども、確かに、今でもかっこいんだよね。町田市立国際版画美術館は近いし、散歩がてら、もう一回は見に来たいと思った。
横尾忠則 HANGA JUNGLE


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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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