えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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町田市民文学館ことばらんどで「三島由紀夫展」を見た。原稿や特別な装丁本、三島由紀夫のパネルとなった写真を見ながらぼくは、こんな書き出しで始まる心理学者の岸田秀の「三島由紀夫論」を思い出していた。

「三島由紀夫の精神ははじめから死んでいた。この現実の世界に生きているという実在感の欠如に、彼の文学その他の活動を解く鍵がある。
 彼は徹底的に人生を演技し通したという人もいるが、彼には、偽りの外面を演技することによって隠さねばならないような真実の内面があったとは思えない。彼は、死の瞬間まで、自分が何を本当に欲しているかつかんでいなかっただろう。理知的であった彼は、演技しているかのごとく演技することによって、あえてわざわざ自己韜晦しているかのごとく見せかけることによって、その背後に本当の自分が隠されていることほのめかしていたかもしれないが、そのようなものは存在していなかった」

興味のある人はぜひ図書館でこの「三島由紀夫論」の掲載されている「続 ものぐさ精神分析」を借りるかして読んでみてください。文学の世界からは無視されつづけている優れた三島論だと思う。文武両道や美と行動などという言葉で三島由紀夫は論や説を語られるけれど、今でいうLGBTからのところはほとんど語られないのはどうしてだろう? 三島由紀夫は「仮面の告白」で書きたいことはすべて書き、あとの膨大な著作は三島自身が生きながらえるために、書かざるえなかったことを書きつづけただけなのではなかろうか? 「仮面の告白」を除くすべての小説が、ある種の作られた工芸品みたいで、そこに描かれる人物はとうていリアルさからほど遠く、けれど、三島由紀夫の小説はどこか、真実のようなものが隠されているみたいなのだ。三島由紀夫の人、人生、昔、読んだ小説のことを思うと、ぼくは無性に寂しく、そして、悲しくなるのです。
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この前、竹橋にある国立近代美術館と国立近代美術館工芸館に行きました。国立近代美術館では「窓展 窓をめぐるアートと建築の旅」と「MOMATコレクション」を見ました。

「窓展」の戦後の近代のアンリ・マティスの窓を描いたものから現代美術のポーランドの劇作家、タデウシュ・カントルの窓から覗きこむインスタレーション作品まで、おもしろかったです。第二次世界大戦以降の現代の歴史は、テレビとかコンピューターのモニターとかスマートフォンまで、いろんな窓が増えていって、人々がそれを家の中でも外でも覗き見ている、そんな時代でもあるらしいことを思ってしまう。その窓に入って、窓に映り込み、それを見られ、そして、見ていたりすると同時に、人は分裂的にその窓の枠外に飛び出したいのではないかしら。

「MOMATコレクション」はいわゆる、膨大な所蔵作品の代表作の常設展で、日本の近代以降から現代の絵画を戦争画も含めて、見通せるような内容でした。戦争協力の戦争画なんて嫌だな、と思いながら、何か懐かしい感じがするのが不思議です。熊谷守一などは戦争協力の絵を描かせられるのが嫌で、戦中は身を潜めて、目立たないように目立たないように生きのびた、そんな人もいるのだけど、藤田嗣治とか、自身の名を汚しているとも思うのですが、後悔とかなかったのだろうか?

さて、国立近代美術館工芸館はいつも素通りしていた所で、こんないい美術館であることを知りませんでした。「パッション2020」という展覧会をしていました。展示場が小さくて、所蔵作品のほんの一部の展示だと思う。近々、金沢に立派な美術館でできて、国立近代美術館工芸館も移転するという。金沢というと九谷焼ですな。ぼくは九谷焼の黄色い招き猫を持っているのだよ。なんでもかんでも東京に集中すればいいってもんじゃない。ぼくは、金沢に国立近代美術館工芸館、国立工芸館というらしいそれができたなら、旅して訪れたいと思う。
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生涯、絵を探求して、いろいろなことを試みたゴッホの絵のほかに、彼に影響を与えた同時代のオランダのハーグに集まっていたハーグ派、フランスのパリに集まっていた印象派の絵も、ゴッホ自身の手紙とともに展示されていて、それもとても良かった。ゴッホというその絵が一枚もその生前には売れなかった素晴らしい画家がいて、そんな彼にたくさんの出会いと別れがあって、友だちというより、たくさんの仲間がいたんだ、とぼくは絵を見ながら、思い浮かべる。そう、ぼくは絵を見ながらも、ふとゴッホのパリの仲間たちのこんな噂話を聞いたような気もしたのです。

「フィンセントのやつ、ゴーギャンとアルルに行き、ついにもの凄い傑作を描き始めたらしいぜ」

その時、ゴッホに残された人生は、後たった3年だったのです。

【公式サイト】ゴッホ展 2019-2020 東京展と兵庫展を開催
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「現代 アウトサイダーアート リアル −現代美術の先にあるもの−」展を見に、原宿にあるGYRE GALLERYに行きました。どの絵も本当にすばらしくて、図録(のような本)も買ってしまった。その本にはとても重たい、いろんなことを考えずにはいられないような論考や対談も載っていました。

この前、このアウトサイダーという言い方が差別だとの議論をインターネットで見かけましたが、その前に本物の絵を見ようよとぼくは言いたくなってしまう。

この絵描きさんたちに障碍者だからという謙譲はいらないし、ぼくは、絵を見て、会ったこともない心の友だちになれればそれで良いのです。

「現代 アウトサイダーアート リアル −現代美術の先にあるもの−」展
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和田誠さんが亡くなられた。高校生のころからよく読んでいた雑誌「話の特集」の表紙の絵が和田誠さんでした。この表紙も楽しみしていました。この「話の特集」に登場するさまざまな分野の執筆陣のほとんどは和田誠さんの人脈だったそうです。地味だったけれど、自由な文化の発火点のような雑誌でした。

若いころのぼくの追いかけていた先輩世代の達人が次々に亡くなられ、とにかくさびしい。
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加島美術という画廊に「小早川秋聲―無限のひろがりと寂けさと―」展を見に行く。

小早川秋聲が単に戦争画だけの日本画家でなく、戦争画がその残した多くの画業に一部であることを知るのだが、あまり広くはない画廊に小早川の最も有名な「國の盾」は飾られてあった。もとは「軍神」という題であったこの絵は、この絵の依頼主であった陸軍から受け取りを拒否され、その時は、桜舞う背景であったものが、戦後、幾度かの改作が小早川自身の筆によって加えられ、背景は垂らしこみという手法で黒く塗りつぶされ「國の盾」となったそうなのである。ある美術批評家はこれを平和を志向する戦後社会との妥協であるとし、ある美術批評家は兵士の真実に迫ろうとしてのことだという。

ぼくは小早川秋聲の画集を加島美術で買い、家でそれを見つつ、その画集の中ほどの頁に「國の盾」があって、それを、それを戦争経験者であった亡き父の部屋に置いておくことを想像してみる。父は、あの画集は何だ、あの本の中に変な絵があったな、あんな絵は父さんはもう見たくないのだよ、というのかもしれないし、いわないのかもしれない。それよりも、父はすでに奈辺のありとあらゆるところにいて、ぼくの見たものなどは、常にすでに見ているような気がした。

さて、小早川秋聲のことにもどり、小早川は戦後、大病の後、父を継ぐの僧籍に戻り、絵筆はあまりとらないようになり、観音菩薩などの仏画、富士、月、日の出、日の入りなどの絵を時々描くようになる。画業を始めたころのきらびやかさはそこになく、淡く慈しむ光が、この世も、あちらの世界もやさしく包むかのようなのだ。

小早川秋聲―無限のひろがりと寂けさと― | 加島美術
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町田市立国際版画美術館に「畦地梅太郎・わたしの山男」を見に行きました。見ながら、これは、昔、行った山小屋のお土産に売っていた絵ハガキの元の木版画だと思う。畦地梅太郎さんの版画にある時、突然、山男が山の中から現れて、それが結婚し、家族を持ち、子どもも増え、山を下りてくる、そんな物語も、ぼくの心のどこかに夢のように版画の向こうに見えてきてしまう。そんなありふれていそうで、ありふれていない鈍い自然の色の木版画なのでした。

同時開催の「インプリントまちだ展2019-田中彰 町田芹ヶ谷えごのき縁起」も素晴らしかった。大きな一部屋がまるごと一つの作品であるかのようで、聖なる樹木のたくさんの精霊が部屋のあちこちで遊んでいるかのようです。

(田中彰さんの電熱ペンでの木版画、ぼくもしてみたくなりました。次のぼくのCDのジャケット・デザインは木版画がいいかも)

畦地梅太郎・わたしの山男

インプリントまちだ展2019-田中彰 町田芹ヶ谷えごのき縁起
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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