えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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岩井俊二監督の『キリエのうた』を見ました。岩井俊二さんの映画は『Love Letter』のころからのファンで公開されるたびに見ています。昔、『リリイ・シュシュのすべて』を見た後、その暗さに打ちのめされて三カ月ほど鬱な気分になっていましたが、『キリエのうた』はそんなこともなく、とてもよかったです。感動しました。

今の時代の『スワロウテイル』みたいな音楽映画です。『スワロウテイル』はバブル経済とジャパン・アズ・ナンバーワンの残り香ただよう映画でしたが、あれからニ十七年、あまりに日本も変わってしまっていたことにも気づきます。東日本大震災後、『キリエのうた』では、主人公は路上を彷徨い、パソコン向けのレンタルスペースをねぐらとしてるかのようで、その主人公「キリエ」を演ずるアイナ・ジ・エンドの存在感は圧倒的に魅力的です。

老人の入ってきているぼくには三時間弱というこの映画は、おしっこを我慢するには、もはや、長かった。けれどこの三時間は必要だし、素晴らしかった。年をとるということは、困ったこともあったものですね。昔の自分も嚙みしめつつ、繰り返すも『キリエのうた』は今の最高の音楽映画なのです。

音楽映画『キリエのうた』
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ウェス・アンダーソン監督の『アステロイド・シティ』を見ました。よく分からない変な映画だけれど、不思議に眠くならないのは、アンダーソン監督の作るその映像の喚起力からでしょうか? 映画はアリゾナ州かどこかの大昔に隕石の落ちてきた何もない砂漠の町。疑似B級映画のその映像に、ぼくは藤原新也さんのカリフォルニアの風景を撮った写真やデイヴィッド・ホックニーのカリフォルニア時代の絵画を思い出してしまいます。トム・ハンクスが重要な脇役で出演していたのに全然気付かなかった。

9/1(金)公開|映画『アステロイド・シティ』公式
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『落語紙芝居 古今亭志ん生シリーズ 火焔太鼓/替り目』を見ました。ほとんど、動画の残っていない古今亭志ん生の落語、その落語の音声に林家正楽師匠の切り絵が映し出されて、それが動いて、とても楽しい。

林家正楽師匠の切り絵は寄席で何度も見ましたが、飄々として、面白く、素敵です。そして、志ん生の夫婦ものの落語って、破天荒な自分のことを話して笑わしているんじゃないかねとぼくは思ってしまいます。その落語の深さと切り絵の軽妙さが合わさって、とてもとてもいいのです。








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クリストバル・レオン監督とホアキン・ホシーニャ監督の共同監督による『オオカミの家』を見ました。紙粘土細工で作られた強迫観念の悪夢の中を女の子がさまようかのような映画でした。

普通の映画というよりかは、そのアバンギャルド性は、現代美術館で上映されているかのような映画で、この南米チリ発の映画で、チリの山奥にあった「コロニア・ディグニダ」という宗教コミューンから発想されているという。閉鎖的なそこは、ドイツから逃れたナチスのヒトラーユーゲントを教祖とし、男児への性虐待どころか、当時の軍事独裁政権の庇護を受け、拷問や虐殺すら行われていた。その軍事独裁政権を後ろから支えていたのが、米ソ冷戦下のアメリカ合衆国政府。反戦歌を歌ったフォーク・シンガー、ビクトル・ハラの殺されたチリのもっとも闇の深い現代史のある時の話。

さて、映画に戻れば、歴史を繰り返すことののいようにと、南アメリカ文学のマジック・リアリズムのような容赦ない悪夢が続くかのようであった。

『オオカミの家』公式サイト
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山田洋次監督の『こんにちは、母さん』を見ました。

主演の吉永小百合さん、やっぱ、スターのピュアな輝きがあるなぁ。しかし、こんなお母さんがいたらどうなんだと、ぼくはひとりごちてしまいます。もう一人の主役である大泉洋くんもはまっています。大泉くんの出演している映画は、ぼくはいっぱいよく見ているのですよ。教会の牧師役の寺尾聡さんもいい感じです。黒澤明の『夢』をなんだか思い出します。いい人をこれだけ自然体でできる役者もいそうでいませんね。それから脇役の女二人組、YOUさんと柄元萌さんも効いていますね。YOUさんの自然体。柄元萌さんは小津安二郎の映画の中の高橋とよみたいで、とてもいいのです。

さて、この前、茅ヶ崎市美術館で『小津安二郎 その審美眼』展を見たからか、なんだか、ぼくは『こんにちは、母さん』の映画の居間に出てくる調度品が気になってしかたない。すると、吉永小百合さん演じる母さんの住む古い足袋屋の台所に、あたかも小津映画から抜け出てきたかのような場違いな赤いケトルがあるではないか。この赤いケトルは、松竹映画の伝統の家族劇は確かにここにありますよと、小津先生、見ていてくださいと、山田洋次監督がそこに置いたのではないかしらなどとぼくは考えてしまいます。

締めくくりは苦いながらも、ほんの少し甘酸っぱくて、幸せな気分の中、エンドロールが始まっていました。山田洋次監督、本当にいい映画をありがとうございます。

映画『こんにちは、母さん』公式サイト|大ヒット上映中
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森達也監督の『福田村事件』を見ました。『A』や『A2』などのオーム真理教の信者の事件後を追ったドキュメンタリー映画を作ってきた森監督の初のドキュメンタリーではないドラマは、実際に千葉の寒村で起こった事件を映画化したもの。

「序破急」の物語の「序」では長いある意味では平穏な村での人々の生活が描かれ、「破」の関東大震災が起こり、「急」の村ぐるみの陰惨な事件に流れ込む。「序」での描写の長さは冗長というより、「急」での事件を単なるスペルタスクせずに、問題提起とするための長さであるとぼくは感じた。柄本明さん演じる村人などのこの百年前の日本の村の貧しさにぼくは驚いてもしまう。なんというか、今は亡き今村昌平監督的世界でもあった。

映画を見終わった後の重たさは、見た人のすべての観客がうち沈むようであるけれども、それでも見てよかったと思う。どの出演者の演技も素晴らしく、特に悪いもの役かとも思われる在京軍人を演じる水道橋博士さんや新聞編集長役のピエール瀧さんのリアルさ。そして、被差別部落の頭目演じる永山瑛太さんがかっこいい。

たかだか百年前の事件である。二つのラストシーンの美しさとそのメッセージ。パンフレットを読みながらこう思う。ぼくたちは百年前に殺された人たち、生き残った人たち、殺してしまった人たちに今こそ会わなくてはならないのではなかろうか?

映画『福田村事件』公式サイト
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ウィリアム・ワイラー監督の『ローマの休日』を見ました。テレビ画面のサイズでは何度か見たことはあったけれど、初めて映画館で見ました。

宮殿のような宿泊しているところからオードリー・ヘプバーン演ずるアン王女がお酒の配達の小さなトラックに忍び込んで抜け出して、ローマの街を走る車の荷台からひょこっと顔をあげて、あたりの様子を見るシーンから、オードリー・ヘプバーンの可愛いまぶしさがこれでもかこれでもかとスパークしまくります。アン王女とグレゴリー・ペック演ずる新聞記者の関係のあれこれなんざ、ゲスの極みのかんぐりで、それぞれの見た人の思惑にまかせときゃいいんです。

脚本も完璧に素晴らしくて、これを書いたダルトン・トランボは、当時、レッドパージ(共産主義、社会主義者への弾圧)でハリウッドから追放されているのを同じく脚本家のイアン・マクレラン・ハンターが手を貸して、初めのスタートロールでは「イアン・マクレラン・ハンター」の名がクレジットされているという逸話も残っております。後にイアン・マクレラン・ハンターもパージされるのだけれども…。

見た人の心と想像力をくすぐるいろんな仕掛けもあって、そこはこの名作を見てのお楽しみで、今、見ると、エディ・アルバート演ずる新聞記者の相棒のカメラマンもいいですな。(峰不二子とアン王女はまったく違いますが)この新聞記者と報道カメラマンの二人組はルパン三世と次元大介のようです。

それから、この『ローマの休日』を見ながら、日本の皇室の方や皇室だった方、愛子様、眞子様、佳子様がこれをご覧になられたら、どのような感想をお持ちになるのでしょうか? そんなことも気になりながら『ローマの休日』を見てしまう齢にぼくもなってしまいました。

この映画は1953年の作品ですが、実はこの年、日米映画決戦が開かれていたらしいのです。アメリカ代表がこの『ローマの休日』で日本代表が小津安二郎監督の『東京物語』だったらしいが、その勝ち負けの行方は、いまだにようとして知ることはできないらしいのです。

「ローマの休日 製作70周年 4Kレストア版」特設サイト
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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