えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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アレ・アブレウ監督のブラジル発のアニメーション映画『ペルリンプスと秘密の森』を見ました。2022年製作の映画であるにもかかわらず、監督いはくパウルクレーに影響された水彩画の絵のような美しい森の世界で展開される二人の子ども、一人はキツネ狼の妖精らしく、一人は熊ライオンの妖精らしい、そんな二人の友情を発見する物語は、ついには、今のパレスチナ、イスラエル、ガザで起こっていることに接続し、その寓意であるかのようなのだ。ぼくたち大人は取り返しもつかなく失敗した、子どもたちの友情がかろうじて世界を変えてくれるということ。驚愕した。続編をぜひ製作して欲しい。早く世界から戦争がやむことを願うばかり。

映画「ペルリンプスと秘密の森」
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ヴィム・ヴェンダーズ監督の『PERFECT DAYS』を見ました。ヴィム・ヴェンダーズ監督以外、協同脚本を含めて多くの日本人スタッフによる映画は、エキゾチックに流されずに、ありのままの今の東京をとらまえているように思いました。それにトイレ清掃員を演ずる役所広司さんがとてもいい。トイレ清掃員の人生が淡々と流れていくけれど、それが美しい。役所広司さんはこの映画でカンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞しています。脇役の抑えた演技も素晴らしい。石川さゆりさんが小料理屋のママを演じていたりしていて、ブルースの名曲「朝日楼」を歌ってくれています。

役所広司さんの演ずる主役の清掃員の名前が「平山」で、これはヴィムが勝手に師匠としているという小津安二郎監督の映画の中で笠智衆の演ずる娘を嫁に出す父親の名前「平山周吉」からとられているのではないか、という発見もうれしい。そして、映画もおしまいになり、映画館から出て、いつもの街を歩いていると、その街が愛おしいような、いつもの街と違った街に見えたりしました。ふと、映画のいろんなシーンも思い浮かばれ、目頭が熱くなります。あー、東京を舞台にヴィム・ヴェンダーズの映画が帰ってきたんだ。

PERFECT DAYS 公式サイト
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フィンランドの名匠、アキ・カウリスマキ監督が映画の力を再び信じて、引退宣言を撤回して、帰ってきたようなのです。カウリスマキ監督の『枯れ葉』を見ました。アキ・カウリスマキ監督は、引退の最中、おれはやはり、尊敬する小津安二郎の何分の一も映画を撮れていないと自分を嘆き、『枯れ葉』の男の主人公のごとく、飲んだくれていたのかもしれません。

映画の舞台はラジオからロシアがウクライナに侵略し、病院を爆撃しているというニュースの流れるヘルシンキの町で、犬を連れた女の主人公は映画そのもののアナロジーかもしれないのは、ここでは明かすことのできない最後のセリフがあるからなのです。アキ・カウリスマキ監督のこの映画についての弁。

「取るに足らないバイオレンス映画を作っては自分の評価を怪しくしてきた私ですが、無意味でバカげた犯罪である戦争の全てに嫌気がさして、ついに人類に未来をもたらすかもしれないテーマ、すなわち愛を求める心、連帯、希望、そして他人や自然といった全ての生きるものと死んだものへの敬意、そんなことを物語として描くことにしました。それこそが語るに足るものだという前提で。

 この映画では、我が家の神様、ブレッソン、小津、チャップリンへ、私のいささか小さな帽子を脱いでささやかな敬意を捧げてみました。しかしそれが無残にも失敗したのは全てが私の責任です。」

アキ・カウリスマキさん、戻ってきてくれて、ありがとう。

映画『枯れ葉』公式サイト
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東京国際映画祭で見逃した小津安二郎監督の『風の中の牝雞』を渋谷のルシネマで見ました。

1948年制作のこの映画での東京の景色を見ながら、ぼくは、日本は東京や神戸、ありとあらゆるところに雨霰と爆弾をアメリカに落とされ、ついには、広島と長崎に原子爆弾まで落とされて負けたんだと思う。小津自身、失敗作と認めたこの映画は、没後、評価を高め、『スパイの妻』の監督、黒沢清さんは、小津映画の最高傑作だと評価していました。この『風の中の牝雞』の後、小津安二郎は日本に回帰してゆき、『晩春』を撮ることになるのは、ぼくは痛いほど分かる。佐藤忠夫のこの映画についての批評を引用します。

「「敗戦で日本人は娼婦のごときものとなった、しかしそれでも、空き地で弁当を食べる素朴さは保持しようではないか」というのが本作に込められたメッセージである」

ジョーン・メレンの批評も引用したい。メレンは田中絹代の演ずる時子が守ろうとした子どもの名前の「ヒロ」が天皇の名前と同じであることは偶然ではないとし、以下の説をとなえる。

「彼女は日本人の生活のすぐれた点を守るために身を売ったのである。小津は日本人に向かって、すぐれた点、つまり占領によって汚されることのないと彼が信じる日本人の生活の貴重なものを守るために、新しい社会を受け入れるべきだと語っている」

翌年、無声映画の時代から映画を撮り続けてきたある日本の映画監督によって、フィルムという武器のみで、文化という血をめぐる戦い、日米映画決戦が挑まれる。それは、小津安二郎監督の紀子三部作を含む『晩春』、『宗方姉妹』、『麦秋』、『東京物語』。

さて、1ヶ月以上続いたぼくの小津映画を劇場で見る祭りももうおしまい。残業をしない小津組の監督の午後5時の言葉が聞こえてきそうです。

「これからはミルクの時間だよ」
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今日は鎌倉芸術館で小津安二郎監督の映画『東京物語』と『秋刀魚の味』を見ました。

『東京物語』の上映の後、映画監督の濱口竜介さんが登壇し、『東京物語』の映像の反復、ずれ、崩壊ということを軸に記号論的分析を行っておられ、圧巻でした。濱口さんの分析に首肯しつつ、ぼくは小津安二郎は映画という技法を持った物語の鬼でもあったとも思いました。

『秋刀魚の味』の上映の後は、岩下志麻さんが登壇され、小津安二郎の思い出話。岩下さんは小津の人柄をとてもやさしくて、声を荒げるようなところを見たことがないとおっしゃっておりました。その半面、演技には厳しく、100回、テストを繰り返し、朝に始めた一シーンの撮影が夕方にOKになるということもあったそう。その次の日、岩下さんは小津に食事に誘われ、小津は志麻さんに、人間というのは悲しい時に悲しい表情をするものでもないんだよ、人間の感情はもっと複雑なんだよ、と言ったということでした。やさしい映画の鬼。

さて、今日は小津安二郎の120年を迎える生誕祭であるとともに、没後60年を迎える日でもあって、ぼくは、おっちゃんこと小津安二郎の戦後のベスト5の映画を考えて、発表してみることにします。

1. 東京物語
1. 秋刀魚の味

同列1位はこの2つの映画とします。言わずもがなの親子の別れを描いた映画『東京物語』と『秋刀魚の味』は、この前、亡くなった坂本龍一さんもベストにあげておられました。この作品の系統には、他に『晩春』、『麦秋』、『彼岸花』、『秋日和』があります。

3. 東京暮色

現代の映画に通じるような小津映画のもう1つの流れをなす中の傑作であります。この作品の系統には、他に『風の中の牝雞』、『宗方姉妹』、『早春』があります。

4. 浮草

二代目中村鴈治郎を主演にした怪作です。『浮草』での中村鴈治郎と京マチ子は本当にかっこいい。この作品の系統には、他に『小早川の秋』があります。

5. 長屋紳士録

戦前の流れをくむ憂いも含むコメディーです。この作品の系統には、他に『お茶漬の味』、『お早う』があります。

どうでしょう? ご参考になりましたでしょうか?

ぼくには小津安二郎の映画は何度見ても面白い。ドイツの巨匠、ヴィム・ヴェンダーズも言っておりましたが、小津安二郎の映画は汲めども尽きないミステリーのようでもあります。
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渋谷に出かけ、ユーロスペースで塚本晋也監督の『ほかげ』を見て、ランチにムルギーで、カレーを食べました。

『ほかげ』は、今、NHKの朝ドラ『ブギウギ』で人気の朱里さんが圧巻の演技です。それに子役の塚尾桜雅くんの寡黙さと表情、目が素晴らしい。ついには、この子どもの目に行きついてしまうのではなかろうか? この映画『ほかげ』は今のガザでの戦争とも結び付くのではないかと、ぼくは考えてしまう。子どもも含むパレスチナの市民を殺しまくっているイスラエルの兵士たちよ、君たちは、パレスチナの人々を殺しながら、日々、自分たちも殺しつづけているのだ。そのようなことを考えさせられる『ほかげ』は、今、公開され、見られるべき映画なのだと思いました。

ランチで食べたムルギーのたまご入りムルギーカレーの辛口も、コーヒーも、とても美味しかったです。辛いカレーにふんわり自然なゆで玉子の甘さが溶け合いますな。久しぶりに食べました。

映画「ほかげ」公式サイト
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ボブ・スミートン監督の『クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド』を見ました。映画の初めの方はバンドの成り立ちやら、メンバーのインタビューがあり、その後、1970年のヨーロッパ・ツアーのロンドンのロイヤル・アルバート・ホールのライブになります。インタビューで唯一無二のシャウター、ジョン・フォガティは、極端なことを言って人を扇動する極右とか極左は嫌いだね、麻薬をやってへらへら笑っているやつもごめんだね、と答えていたりいます。なんか、かっこいい。アメリカのテレビ・ドラマの『大草原の小さな家』でマイケル・ランドンの演じた主人公のチャールズ・インガルスみたいです。圧巻のライブでは振りきれた演奏と歌がかっこよすぎ。ドラマーのダグ・クリフォードは演奏の途中、シンバルを割ってしまう。その太い腕は森の樵のようで、髭もじゃのその風貌は山の熊のようです。日本語字幕で見られたジョン・フォガティの書く詞はなかなか激しくて、素晴らしい。ぼくはここで「Fortunate Son」を拙く意訳してみる。

♪♪♪
旗を振るようにしつけられたやつもいる
赤と白と青の旗
バンドが演奏するのは「大統領を尊敬しろ」
けれど、大砲はおまえの方を向いているぜ

それはおれじゃない、おれのことじゃない
おれは上院議員の息子じゃない
それはおれじゃない、おれのことじゃない
おれは運のいいやつじゃない

銀のスプーンを持ってうまれてくるやつもいる
あんたは自分で何かできるのかね
ドアから税務署の係がやってきて
家中、ひっかきまわして帰って行ったとよ

それはおれじゃない、おれのことじゃない
おれは大金持ちの息子じゃない
それはおれじゃない、おれのことじゃない
おれは運のいいやつじゃない

星条旗の星を受け継ぐやつもいる
おまえは戦場に送られるのさ
おれの命の値段はいくらぐらいなんだと聞くがいい
やつらはもっと値段を上げてやろうかと口で言うだけさ

それはおれじゃない、おれのことじゃない
おれは高級将校の息子じゃない
それはおれじゃない、おれのことじゃない
おれは運のいいやつじゃない♪♪♪

Foolsの伊藤耕の書く詞のようではないか。ロックンロールを聴いても、ガザで殺されていく市民を思えば、心はまったく晴れない。映画のエンドロールでかかった歌は「Who Stop the Rain」で、ここで歌われている「Rain」とはベトナムで雨のように落とされた爆弾で、それはガザに雨のように、今、落とされている爆弾であるかのようなのだ。半世紀以上が過ぎ、何も変わっちゃいない。畜生。

映画「クリーデンス クリアウォーター リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド」公式サイト
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えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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