えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

三上知恵監督の『戦雲(いくさふむ)』を東中野ポレポレで見ました。
南西諸島のドキュメンタリー映画を見ながら、ぼくは撮影期間の七年間でのその地域のあまりの変貌に驚きます。いい方にではなく、悪しき戦争の暗い雲が垂れ込めているような方への変貌に胸がふたがれる思い。
ヘミングウェイの『老人と海』に登場するかのようなカジキマグロを追う漁師のおじいが、この『戦雲』にある種のヒーローとして出てきます。南の島の神話すら心と体の奥に秘めているかのようなその人は、もとは基地や自衛隊が島に来ることを容認していたそうなのだが、軍用車両が我が物顔で行き交うようになった島に、与那国の人間だけだったら、平和なままだったのではないかと心は揺れ、考えてこんでしまう。
次から次へと約束は反故にされ基地は拡張され、夜遅くまで演習の騒音が家々に響く。映画を見つつ、ぼくには内地の人間の沖縄への差別もあるように思えてしまう。パンフレットから三上監督の三つの文を引きます。
「住民まで玉砕を強いられた沖縄戦で勇気を振り絞って命乞いをした「白旗の少女」を今こそ全力で肯定し、「立派な死」という概念が甦ろうとした時代に抗していかなければならない。」
「国を守るために「やむをえない多少の犠牲」になっていい地域など、どこにもない。」
「濃紺に透き通る海に囲まれた、あの豊かな自然と誇り高い文化を紡いできた人々に送られるべきは、敬意と称賛であって、島外避難命令であってはならない。」
この映画『戦雲』にあるように、ぼくはまず、平和を祈ることから始めたいと思います。
映画『戦雲 -いくさふむ-』公式サイト|三上智恵監督最新作


リサ・コルテス監督の『リトル・リチャード アイ・アム・エヴリシング』を見ました。ロックンロールのオリジネイターであるリトル・リチャードのドキュメンタリーの伝記映画にして、日本でもちらほら見かけるようになった「クイア」という言葉、そのクイア賛歌であることも素晴らしい。今こそ知られるべきリトル・リチャードが時代を切り開いた。そして、黒人教会での信仰、人種差別、麻薬のことなども、リチャードの生涯をたどりつつ、出てきます。
いずれにしろ、ぼくはダイナマイトがこれでもか、こらでもかと爆発するかなようなリトル・リチャードのロックンロールが大好きだ。そして、ロックンロールは、人々を解放した、二十世紀が生んだ最も偉大なものだよ。そして、ロックンロールはリトル・リチャードなんだよ。
映画『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』公式サイト


あつぎのえいがかんkikiでアンドレイ・タルコフスキー監督の1983年の映画『ノスタルジア』を見ました。ほとんどストーリーのない映画で何度か眠くなってしまった。すべてのシーンが、意味のよく分からないそれも含めて、美しく象徴的な絵のようです。この映画は、ロシア、当時のソビエト連邦を逃れた詩人である監督自身が、それでもロシアへの望郷を思い出すかのように夢見る、そのような映画だと思いました。
自由を求めてパリに亡命し、ペレストロイカを知らずに、1986年に54歳で客死したタルコフスキーは、ウクライナに侵略する今のプーチンのロシアを、生きていたら、どう見るのだろうか? ロシアについては幻滅から絶望へいたるだろうけれど、人類への希望の火は心に灯しつづけただろうと、この『ノスタルジア』のラストのシーンを見ながら、ぼくは思うのです。
「ノスタルジア4K修復版」公式サイト


ロバート・レッドフォード監督の『リバー・ランズ・スルー・イット』を見ました。フライフィッシングを始めてから、ずっと見たかった映画をついに映画館で見てしまった。
大自然のモンタナの渓谷でのフライフィッシングのシーンはそれほど多くない。けれど、魚が毛鉤を咥えるシーンには思わずドキドキしてしまいます。
アメリカ人はこの映画を見て、深い郷愁を感じるのだろうな、などと思う。
ブラッド・ピット演ずる早折する釣りの天才の弟は、厳格な牧師の父や生真面目な兄にどこか挑戦するかのようなのだ。その弟のラストのフライフィッシングのシーンがまぶしく、かっこよく、美しい。渓谷の川で毛鉤を流すあの何ともいえない感じもありなのです。
原題は「River Runs Through It」でその「It」とは何なのだろう? ふとフライフィッシングをしている時に、すべては光の中にあって、その中にぼく自身もいて、光になっている気がしはしないだろうか? それがきっと「It」ということだよ。
リバー・ランズ・スルー・イット : 作品情報


ケリー・ライカート監督の『ファースト・カウ』を見ました。
暗い夜のシーンが多いのとストーリーの流れがゆるやかだからか、時おり眠くなってしまいました。
舞台は18世紀半ばのアメリカ西部コロラドの森で美しい。吹きだまりのような小さな町には、白人、黒人、ネイティブ、アジア系の人たちと犬、猫、鶏。こんな背景を見ながらアメリカの歴史も確かに現代によって更新されているのだなとぼくは思います。誰かがその小さな町のはずれに一匹の雌牛をもたらします。その牛のミルクを無断でしぼり、主人公の白人のコックと中国系の流れ者の二人は、美味しいドーナツを作り、一山当てて、この森の中の吹きだまりから抜け出して、南の方へ旅立つことを夢見ます。さて、どうなるかは、ご覧ください。
これは21世紀になり、新たに作られたアメリカン・ニュー・シネマであり、歴史にあった過ちや忌まわしい悲劇を含みつつ、新たに発見された美しいアメリカなのではないかしら。
映画『ファースト・カウ』オフィシャルサイト


久保茂昭監督の『ゴールデンカムイ』を見ました。奇怪な人物が次々と登場し、活劇と殺陣を繰り返すこの映画は見るものを飽きさせませんが、その殺伐とした中で、山田杏奈さんの演ずるアシㇼパのみが華麗な清涼であり、救いのようでもあると、ぼくは思いました。
殺伐ではなく、どちらかというと、ある種類の小津安二郎の映画にあるようなしみじみに惹かれてしまうしまうぼくは、アイヌのコタン(村のこと)のシーンに見入ってしまいます。小津映画にも残酷さや不気味さは多いけれど。
この『ゴールデンカムイ』は物語としては、序章で終わってしまうような印象です。これから物語は展開しそう。エンドロールの後が予告編のようになっていた。
アイヌの生活や風俗も丁寧に描かれていて、そこはとてもよかった。そして、北海道の大自然。白いオオカミがかっこよくて、かわいい。続編が作られれば、やっぱり見に行きますぞ。
映画『ゴールデンカムイ』公式サイト


香港のアナスタシア・チャン監督の『燈火(ネオン)は消えず』を見ました。ノスタルジーこそぼくの心を動かす、そんな齢になっている自分を再び発見するかのような映画です。しかも、後半には小津安二郎の映画のような展開になり、ぼくは驚いてしまいます。あるものがなくなっていくのは何て寂しいことでしょう。付き加えるに、このネオンというのは、民主主義のメタファーであるかもしれないとぼくは思ってしまう。自由な香港もネオンが消えるように消えた。なんだか涙が出てくる。
映画『燈火(ネオン)は消えず』公式サイト


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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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