えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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新百合ヶ丘の川崎アートセンターでシノニエ・チェクウ監督の『ティル』を見ました。川崎アートセンターはあつぎのえいがかんKIKIと同じぐらいよく見にいく独立系の映画館でとても重宝しております。

1955年のアメリカでの人種差別による「エメット・ティル殺害事件」を映画化したもの。後半の茶番のミシシッピーの法廷のことの後、主人公が町を去るシーンはよかったけれど、ハッピーエンドではなかった。

映画を観て、ぼくはこの世界が1955年から、どれほど変化し、進歩してあるのかと、疑問にも思ってしまう。映画に描かれた昔日のミシシッピ州は差別と憎悪が常態化し、あたかも今のイスラエル国のようだ。その今のイスラエルを支援し続けるアメリカ合衆国は、無差別な発砲事件が絶えず起こる、世界で最も野蛮な国の一つかもしれない。それに、国境とかの話の前に、一つの国の中では、いろんの人種、民族、いろんな宗教を信じる人が生活していて、誰もが平和に、自由に生きていっていいのだとも思うし、その権利が人にはあるのだと思う。

エンドロールでは憎悪犯罪を取り締まる「反リンチ法」がアメリカで成立したのが2022年という遅さで、アメリカも、アメリカ以外の世界にも、当然、日本にもそのようなことがまだまだ足りない、とぼくは映画の見ながら思っていました。

映画『ティル』
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神保町シアターで小津安二郎監督の『長屋紳士録』と『お茶漬の味』を見ました。これで戦後の小津安二郎の映画はすべて、映画館で見たことになります。

『長屋紳士録』は落語の長屋の人情噺のような風情が素敵すぎます。飯田蝶子演ずる戦争が終わった直後のバラックの家に子役の青木放屁演ずる親とはぐれた子のめでたしめでたしの別れが涙をさそいます。

『お茶漬の味』は、海外に単身赴任する夫と妻が別れの前の夜にお茶漬を食べるという、それだけの話で、これだけでよく映画として成立させて、客を感動させるのは、奇跡のようなことではありますまいか。映画が終わりふと隣に座っていた知らない若い女子を見ると、涙で赤く目をはらしているようでした。木暮実千代演ずるつんつんした妻に佐分利信演ずる夫のやさしいこと、やさしいこと。夫は糠漬けのきゅうりかなにかを包丁で切る妻に手を切らないかいと気づかい、着物のにの腕の裾をそっともってやったりします。ご飯を食べる妻が自分の手が糠味噌臭いというと、夫は指が驚いているんじゃないかという。いつの時代も人の求めているのは同じで、さりげないやさしさと気づかいなのですな。そして、めでたしめでたしとなります。

小津の人を見る目のやさしさに心を打たれた二本でした。
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古賀豪監督の『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を見ました。見始めると、ぼくは、この映画の昔の日本のどこかの村の因襲にまみれた怪しげな世界に、鬼才、市川崑監督の『犬神家の一族』を思い出してしまう。物語が進むと更に更に、映画は妖気ただよう世界に進んでいき、すさまじい。小学生が見ると、トラウマになりそうです。日本でしか成立しない物語に戦後日本への批評も表される。日本のアニメはやはり凄い。そして、ついに鬼太郎は誕生するのです。

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』公式サイト
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アレ・アブレウ監督のブラジル発のアニメーション映画『ペルリンプスと秘密の森』を見ました。2022年製作の映画であるにもかかわらず、監督いはくパウルクレーに影響された水彩画の絵のような美しい森の世界で展開される二人の子ども、一人はキツネ狼の妖精らしく、一人は熊ライオンの妖精らしい、そんな二人の友情を発見する物語は、ついには、今のパレスチナ、イスラエル、ガザで起こっていることに接続し、その寓意であるかのようなのだ。ぼくたち大人は取り返しもつかなく失敗した、子どもたちの友情がかろうじて世界を変えてくれるということ。驚愕した。続編をぜひ製作して欲しい。早く世界から戦争がやむことを願うばかり。

映画「ペルリンプスと秘密の森」
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ヴィム・ヴェンダーズ監督の『PERFECT DAYS』を見ました。ヴィム・ヴェンダーズ監督以外、協同脚本を含めて多くの日本人スタッフによる映画は、エキゾチックに流されずに、ありのままの今の東京をとらまえているように思いました。それにトイレ清掃員を演ずる役所広司さんがとてもいい。トイレ清掃員の人生が淡々と流れていくけれど、それが美しい。役所広司さんはこの映画でカンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞しています。脇役の抑えた演技も素晴らしい。石川さゆりさんが小料理屋のママを演じていたりしていて、ブルースの名曲「朝日楼」を歌ってくれています。

役所広司さんの演ずる主役の清掃員の名前が「平山」で、これはヴィムが勝手に師匠としているという小津安二郎監督の映画の中で笠智衆の演ずる娘を嫁に出す父親の名前「平山周吉」からとられているのではないか、という発見もうれしい。そして、映画もおしまいになり、映画館から出て、いつもの街を歩いていると、その街が愛おしいような、いつもの街と違った街に見えたりしました。ふと、映画のいろんなシーンも思い浮かばれ、目頭が熱くなります。あー、東京を舞台にヴィム・ヴェンダーズの映画が帰ってきたんだ。

PERFECT DAYS 公式サイト
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フィンランドの名匠、アキ・カウリスマキ監督が映画の力を再び信じて、引退宣言を撤回して、帰ってきたようなのです。カウリスマキ監督の『枯れ葉』を見ました。アキ・カウリスマキ監督は、引退の最中、おれはやはり、尊敬する小津安二郎の何分の一も映画を撮れていないと自分を嘆き、『枯れ葉』の男の主人公のごとく、飲んだくれていたのかもしれません。

映画の舞台はラジオからロシアがウクライナに侵略し、病院を爆撃しているというニュースの流れるヘルシンキの町で、犬を連れた女の主人公は映画そのもののアナロジーかもしれないのは、ここでは明かすことのできない最後のセリフがあるからなのです。アキ・カウリスマキ監督のこの映画についての弁。

「取るに足らないバイオレンス映画を作っては自分の評価を怪しくしてきた私ですが、無意味でバカげた犯罪である戦争の全てに嫌気がさして、ついに人類に未来をもたらすかもしれないテーマ、すなわち愛を求める心、連帯、希望、そして他人や自然といった全ての生きるものと死んだものへの敬意、そんなことを物語として描くことにしました。それこそが語るに足るものだという前提で。

 この映画では、我が家の神様、ブレッソン、小津、チャップリンへ、私のいささか小さな帽子を脱いでささやかな敬意を捧げてみました。しかしそれが無残にも失敗したのは全てが私の責任です。」

アキ・カウリスマキさん、戻ってきてくれて、ありがとう。

映画『枯れ葉』公式サイト
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東京国際映画祭で見逃した小津安二郎監督の『風の中の牝雞』を渋谷のルシネマで見ました。

1948年制作のこの映画での東京の景色を見ながら、ぼくは、日本は東京や神戸、ありとあらゆるところに雨霰と爆弾をアメリカに落とされ、ついには、広島と長崎に原子爆弾まで落とされて負けたんだと思う。小津自身、失敗作と認めたこの映画は、没後、評価を高め、『スパイの妻』の監督、黒沢清さんは、小津映画の最高傑作だと評価していました。この『風の中の牝雞』の後、小津安二郎は日本に回帰してゆき、『晩春』を撮ることになるのは、ぼくは痛いほど分かる。佐藤忠夫のこの映画についての批評を引用します。

「「敗戦で日本人は娼婦のごときものとなった、しかしそれでも、空き地で弁当を食べる素朴さは保持しようではないか」というのが本作に込められたメッセージである」

ジョーン・メレンの批評も引用したい。メレンは田中絹代の演ずる時子が守ろうとした子どもの名前の「ヒロ」が天皇の名前と同じであることは偶然ではないとし、以下の説をとなえる。

「彼女は日本人の生活のすぐれた点を守るために身を売ったのである。小津は日本人に向かって、すぐれた点、つまり占領によって汚されることのないと彼が信じる日本人の生活の貴重なものを守るために、新しい社会を受け入れるべきだと語っている」

翌年、無声映画の時代から映画を撮り続けてきたある日本の映画監督によって、フィルムという武器のみで、文化という血をめぐる戦い、日米映画決戦が挑まれる。それは、小津安二郎監督の紀子三部作を含む『晩春』、『宗方姉妹』、『麦秋』、『東京物語』。

さて、1ヶ月以上続いたぼくの小津映画を劇場で見る祭りももうおしまい。残業をしない小津組の監督の午後5時の言葉が聞こえてきそうです。

「これからはミルクの時間だよ」
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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