えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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三井記念美術館で『円山応挙 革新者から巨匠へ』展を見ました。これまであまり足を運ばずにいた日本画の展覧会に最近、はまっております。今日もいいもの観ました。後に財閥となる三井家は円山応挙のよき、もっとも熱心な今でいうパトロンだったそうで、今回の展覧会も見ごたえがありました。とくに「竹雀図屏風」や「遊虎図襖」、伊藤若冲の「竹鶏図屏風」と対となっている、いわば合作の「梅鯉図屏風」が若冲の絵もあわせて、とてもいいと思いました。応挙の描く生きものたちがとてもかわいいのです。若冲との合作は、お互いに立てながらも、一番、得意なものを描いたという風情ですな。お互いのレスペクトが伝わってきます。

ところで、近ごろ、ぼくは日本の伝統の何がしかに惹かれますが、ふと立ち止まって考えてもしまいます。最近のインターネットではびこる排外や差別をあおる右翼、いわゆるネトウヨには嫌悪を感じますが、ぼくなどは彼らのいうパヨクなのでしょう。維新の会という政党は助成金を打ち切り、文楽を途絶えさせようとしていましたな。国立劇場の建て替えもしくは補修を長く店ざらしにして、何も進展させない自由民主党のどこが保守なのかぼくにはさっぱり分かりません。すると、ネトウヨとは真逆の坂本龍一が長谷川等伯についてインタビューで熱く語っていたのを思い出しました。ぼくといえば、今回の円山応挙展、平日にもかかわらず、たくさんの人で賑わっていることにほっと胸をなでおろすのです。
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県立神奈川近代文学館で『坂口安吾展 あちらこちら命がけ』を見ました。あらためて、坂口安吾ってかっこいいなあ。そのかっこよさとは、生き方から文章による作品のあれこれまで。ぼくの卒業した大学のもっとも誇れる先輩でもあります。大学では悟りを得ようと仏教を研究するために印度哲学倫理学科に学んだけれど、悟りは得られず、文学、作家への道に舞い戻ったという。売れない作家として身を立てつつ、第二次世界大戦の真珠湾攻撃の時には、国のために身を捧げることを覚悟し、その後は戦争に行くことを免れるために、あれこれと画策し、軍部のために軍の嘱託で映画の脚本を書く仕事に形だけ就いたという。戦争を生き延びたい、と願いながら、空襲に燃え、瓦礫となった東京をいつまでも離れなかった。その相矛盾するそれぞれの行動と恣意を、真珠の粒に例え、安吾の全体をつらなる真珠の首飾りに喩えたこの展覧会のキュレーターはさすがだと思う。

この『坂口安吾展』を見つつ、安吾の言葉はけっして古くならず、ふと、ぼくは、安吾のいくばくかの言葉を、はげましの言葉としてガザの人たちにも贈りたいとも思ってしまったのは不遜だろうか? いや、人を愛し、人の営みを愛し、風が吹きとおるかのように、故郷を形なきものとして称えた安吾大兄、安吾大先輩ならば、許してもくれよう。安吾の生涯すら安吾の作品のように思えてしまいながら、ぼくの一番好きな坂口安吾の言葉による作品は「青鬼の褌を洗う女」なのです。ぼくはこの戦争の世界に「青鬼の褌を洗う女」に出てくる青鬼の調子外れの胴間声を今一度、響かせたいのです。

神奈川近代文学館の隣の港の見える丘公園にある英国式庭園も素晴らしかった。いつ来てもここでは花が咲いてるねえ。つかの間の癒しのひとときでもありました。
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府中市美術館で『フジタからはじまる猫の絵画史 藤田嗣治と洋画家たちの猫』を見ました。戦前期の藤田嗣治の何気なく描く猫がリアルでありながら、かわいい。戦後はカリカチュアされた猫なども藤田はいっぱい描いている。本当に猫が好きだったんだ。藤田は日本画で「猫」も描いているのだけど、自ら日本画を知っていたから西洋で自分の絵が認められた、などと語っていたらしい。付け加えるに、西洋では単なる動物で背景や象徴にすぐぬものが、日本では心のある生きものなのです。真言宗の胎蔵界曼荼羅にはたくさんの心ある生きものも描かれているではないか。などという講釈はここまでとして、日本画からは、原在明の「虎耳草と猫図」、菱田春草の「黒猫」、岸田劉生の「眠猫」なんかがまたいい。ひさしぶりに熊谷守一の「白猫」も見れました。中村寛の「猫の子」や長谷川潾二郎の「猫と毛糸」のもふもふ感。猫好きにはたまらない垂涎の展覧会のようです。
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竹橋の国立近代美術館で『コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ』を見ました。二回目の鑑賞です。深く印象に残った展覧会は二度、見ることにしています。この展覧会は宣伝されず、図録も作られていない。

平日にかかわらず、盛況なのは、この前のNHKのテレビ番組「日曜美術館」のためだろうか? その番組に出ていた音楽家の坂本美雨さんは藤田嗣治の「アッソ島の玉砕」を見て、言葉をつまらせ、泣いているようだった。いわゆる戦争画。「アッソ島の玉砕」よりも凄惨で悲劇的なのは藤田の「サイパン島同胞臣節を全うす」。しかし、これらの戦時中の戦争協力の絵に芸術的な価値があるかどうかは、ぼくにはまったく疑問なのです。暗い抒情ということなかれ。

「愛国」、「報告」、「天皇」という美しいかもしれない言葉の下に醜い人の営みと無念の死体が横たわっている。先人の死のおかげということなかれ。その言葉はあまりに軽すぎて、軍国主義の手垢にまみれて、うす汚すぎる。このぼくの言葉すら軽すぎる。画家ということではなしに、日本人には忘れてはならない歴史も、繰り返してはならない歴史もある。この展覧会で図録をあえて制作しなかったことの理由をぼくは理解し、忘れるなというメッセージも再びしかと受け取りました。
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岡田美術館の『愛と平和の江戸絵画』展を見にいきました。たくさんの吉祥を目で愛でました。誰が描いたか判然としない屏風画などにも名画がたくさんあります。日本は素晴らしいのう。酒井抱一の『月に秋草屏風図』、伊藤若冲の『孔雀鳳凰図』、森狙仙の『鹿に猿屏風図』とか、みんな素晴らしい。日本に生まれたことが本当によかった。徳川家の二百六十年の平和の治世に万歳です。

常設展では本当ににたくさんの中国、韓国、北朝鮮、日本の美しい磁器、白磁や青磁や白青磁を一度機に初めて見ました。ぼくは朝鮮半島の高麗時代の菊の模様をうすくあしらった青磁の水さしもしくは花器の『青磁象嵌菊花文長頸瓶』にいたく惹かれてしまいます。なるほど、柳宗悦が朝鮮の陶磁器に惚れこんだ理由がわかるというものです。

帰りに天山湯治郷に寄りました。いい湯でした。
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竹橋の東京国立近代美術館で『コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ』を見る。これだけたくさんの「戦争画」と呼ばれる絵を見たのは初めてだ。気が滅入りながらも、何か懐かしいものを感じるのはどうしてだろう? 藤田嗣治の戦争画はその陰惨さによって、両義的でもあり、ぼくの目をいつまでも惹きつけてやまない。そして、戦時下の進軍喇叭の音に背を向けた松本竣介という画家がいたことが、ぼくに勇気を与えてくれる。

昭和元年から昭和二十年までは、日本人が罪を犯し、悪徳に染った、日本人にとってもっともいまわしい時代であった。それは、アジアを解放するといいながら、アジアを抑圧する欺瞞の日々でもあった。しかし、その時代に復古しようと主張する政治勢力がいて、強くなってしまったことが、ぼくには恐ろしい。記憶も、記録も忘れてしまってはいけないことだ。

靖国史観ではない、図録もあえて制作されないこの展覧会を企画したキュレーターに、ぼくは拍手喝采を送りたい。続投するという石破首相(ぼくは自民党員ではないが、なんと、自民党員の七割が続投を支持しているという)は、愛国者ならば、戦争の方に日本を行かせないためにも、この展覧会を見てほしいとぼくは願うものであります。
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川崎市岡本太郎美術館で「戦後80年 《明日の神話》 次世代につなぐ 原爆×芸術」展を見ました。岡本太郎と現代の9人の美術家、及び広島市立基町高等学校の創造表現コースの生徒たちの原爆に関する絵が展示されております。

渋谷駅にある岡本太郎の壁画「明日の神話」の原画が展示されてあって、素晴らしい。現代の9人の美術家の作品も素晴らしい。しかし、この展覧会の白眉は、広島平和記念資料館からの依頼による、広島の高校生たちの被爆者から話を聞いて描いた原爆が落とされた、その町とその町の人が何に見舞われたかの絵であろう。全世界の人たち(とくに核爆弾を保持している国の政治家)に見てほしい特別な絵が何十点も展示されてあった。広島平和記念資料館と広島市立基町高等学校の生徒によるこのプロジェクトは今も続いていて、その絵は207点におよぶという。これらの絵に描かれた、地獄のような悲惨は人類が記憶しつづけなければいけない特別な何かであると、ぼくは思うのです。
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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