えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
馳星周さんの著した「少年と犬」を読了しました。直木賞受賞のエンターテイメント小説です。
近所の本屋で平積みとなっていたこの本の表紙を見て、あっ、レオだと思い、手が伸び、買ってしまっていた。レオとは昔、わが家で飼っていた犬のことです。この本は一匹の同じ犬を主人公とした「男と犬」、「泥棒と犬」、「夫婦と犬」、「娼婦と犬」、「老人と犬」、「少年と犬」の六篇で、犬の飼い主の一人称で物語られていく。一匹の犬は日本列島を南西へと何年もかけて旅をしていき、その中での六つのエピソードの連作となっています。映画にしたら、一級のロードムービーとなるのではないかしら? おもしろい。そして、読み進めていくうちに、本当にこの本の主人公の多聞の性格やら佇まいやらのすべてが、まるでレオのようだと思ってしまう。
連作をしめくくる「少年と犬」では少し泣いてしまいました。
犬は神が遣わした動物で、人は少年と少女に戻ってしまう。
(写真の犬はレオです。レオ、おまえは神が人に遣わしたオオカミか? 今でもレオの写真を見ると胸がしめつけられように感じてしまう)
内田樹さんの「日本習合論」を読みました。
Wikipediaによれば、習合(しゅうごう)とはさまざまな宗教の神々や教義などの一部が混同ないしは同一視される現象のこと、シンクレティズム(英:Syncretism)の一種、ということだそうですが、何冊も内田樹さんの本を読んで、内田さんの論じる良き日本と良き日本人、美しき日本と日本人は、ぼくの思う日本や日本人とても近しいように感じています。
この内田さんの本を読みながら、芥川龍之介の「神々の微笑」という小説と、その小説を解説しながら、日本国憲法、とくのその第九条を擁護する柄谷行人さんの「日本精神分析」を思い出していました。
日本が習合を無くした時に、もっとも悪い方に進み行き、すべては失速し、世界の友だちなどの何もかもを失うのではないでしょうか。
山上たつひこさんの描いた漫画『光る風』を読みました。山上さんの少年チャンピオンに連載していた『がきデカ』は子どものころ、読んでいて、その前にこんなデビュー作を少年マガジンに描いていたとは知らなかった。
すさまじくダークで救いのない物語です。2015年に再び出版された単行本に内田樹さんが解説を書いていてこんな言葉を寄せられている。
「『光る風』に貫いているのは自由と民主主義を求めるリベラルな主張ではない。そうではなくて、自分は自由と民主主義が失われたときにまっさきに弾圧されるだろうという生理的恐怖である」
『光る風』は1970年に読まれるよりも、今の2020年に読まれた方がよりリアルな漫画なのです。しかも、この話に繰り延べられるような社会は75年前の日本に確かにあった。それが現在に起こりつつあり、未来にそうなりつつあることが、とても恐ろしい。
『問いかけるアイヌ・アート』を読了しました。この前、日本民藝館で『アイヌの美しき手仕事』展を見てからアイヌのことがとても気になります。『問いかけるアイヌ・アート』はいろんな人のアイヌの文化にまつわる文集となっていて、著者は池田忍さん、五十嵐聡美さん、貝澤徹さん、小笠原小夜さん、吉原秀喜さん、高橋桂さん、山崎明子さん、中川裕さん。アイヌ文化に携わってきた研究者や作家、アイヌ文化そのものを体現する芸術家、イラストレーターの人たちの真摯な文集でした。そして、カラーのものも含む楽しく美しい口絵もたくさん添えられた楽しい本でした。
さて、21世紀が始まり、20年経ち、20世紀を振り返れば、植民地からのいろんな国の独立の世紀であったようにもぼくには思えて、となれば、21世紀はどんな世紀となってゆくのだろう? 21世紀は少数民族や先住民族の世紀となり、少数民族や先住民族の伝えてきた文化が、つづいていく戦争をもたらす国と国の争い、宗教と宗教の争いを止揚し、光となるのではないかしら?
これは、この本でも紹介されているアイヌの神話です。
これは『問いかけるアイヌ・アート』で文を書いておられる小笠原小夜さんのホームページ。
TAKE ART EAZY! [ TAEZ! ]小笠原小夜
この本で紹介されていた貝澤徹さんも紹介されている二風谷のアイヌの工芸作家のホームページもある。
http://nibutani.jp
そして、中川裕さんが取り上げた漫画『ゴールデンカムイ』のヒロインのアイヌの少女も溌剌として生きている。
https://kamuy-anime.com
ぼくは楽天したい。
この本の中からアイヌ文様刺繡家であるチカップ美恵子さんの言葉を紹介して、この項を了とします。
「美しく気高い祖母の励ましの夢だった。美しく刺繍した着物を広げて、私に説明してくれた。いくら説明しても、のみこめない私を祖母が叱った。祖母の声で目が覚めた。ああ、あのような美しい着物がほしい。天然色の美しい夢を見たのだ」
熊本の地で永い間、田中正造の思想を研究されている大学の先生でおられる小松裕さんの著した『真の文明は人を殺さず 田中正造の言葉に学ぶ明日の日本』を読みました。人の作り出した二酸化炭素のもたらした熱波によって、地球上のどこかの森が焼けていくこの今の地球に、田中正造の思想は確かに読み返されるべきだとも思いました。田中正造のもっとも有名な言葉です。
「真の文明は 山を荒らさず 川を荒らさず 村を破らず 人を殺さざるべし」
みなさまもどこかで聞いたことがあるのではなかろうか? この本で知った田中正造のこんな言葉にもぼくは実際、驚き、畏怖してしまう。
「吾常に語るに、世界人類はもちろん、鳥獣虫魚貝山川草樹、およそ天地間の動植物は、何一つとして我に教えざるなければ、これ皆我良師なり」
田中正造翁は晩年に渡良瀬の公害問題に奔走していた生涯を「一夢のごとくして」と述懐し、「愛」ということばの書を友人に送ったという。