えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

entry_top_w.png

「樹木希林さんからの手紙」を読みました。この前、逝去された樹木希林さんからいろんな人たちに宛てた手紙を集めたです。その手紙は長野の上田の私設の美術館「無言館」で行われた成人式での若い人たちに向けた、それぞれ一人ひとりへの手紙も収められ、樹木希林さんは、事前アンケートで自分の夢・目標を空欄で出した人に、こんな手紙を送っていて、びっくり。その手紙の一部をここでこの本からご紹介。

「将来の目標のところが空欄だった
わたしネ 偶然18才で役者の道に入ったけど
60才過ぎてやっと将来役者目ざすかなと
定まったのョ 口を利かない子供でネわたし
しゃべるのが苦手とありますが 逆に
人の言葉を聞く耳が育ちます
…」

さて、その後につづく文はこの本をお読みください。

この「無言館」、前の大戦で戦没した画学生の絵ばかりを集めた美術館で、一度、かなり昔、訪れたことがあります。ぼくが訪れた後、この美術館の中の記念碑「記憶のパレット」が何者かによって、赤いペンキで落書きされるという事件がおこったことに、怖い時代になったと嘆息しました。そういえば「無言館」の再訪する夢をこの前、見たのですが、その夢の中で落書きされた赤いペンキがきれいに修繕されて、ぼくは、ほっとしていたのです。本当に無言館には再び訪れたい。

「樹木希林さんからの手紙」にもどり、ぼくもいろんな人たちに手紙を書こうかなと思う。きれいごとを書かない樹木希林さんの手紙は、きれいごとではない清々しさがあって、なんだかとてもいいのです。けれども、ぼくには歌があるか。ぼくの歌はその時、聴いてくれているみんなではなく、それぞれ一人ひとりへの手紙なのかもしれないなどと思ってしまう。








entry_bottom_w.png
entry_top_w.png


赤坂真理さんの著した「箱の中の天皇」を読む。想像力による答えのない思考実験のような小説だと思った。

たしか、中上健次は日本の物語について考えていくと、そこには被差別部落と天皇制に行き当たるというようなことを言っていたことがあったと思う。その「日輪の翼」を書いた中上健次は、そして、「英霊の聲」を書いた三島由紀夫は、「みずから我が涙をぬぐいたまう日」を書いた大江健三郎は、「風流夢譚」を書いた深沢七郎はどうこれを読むのだろうかなどと考えてしまうのも小説を読む楽しみの一つ。

同じ本に収められている「大津波のあと」はさらに良く、散文詩のようで、祭りの後のみんなが去ったような透明な読後感が心地よかった。







entry_bottom_w.png
entry_top_w.png


「野口久光 ジャズの黄金時代」を読了した。この二段組、250頁以上もある大著はジャズ評論の伝説的草分けである野口久光さんのジャズと呼ばれる音楽についての文集なのだ。もっとも古き文は、一九三九年の「スイング」。その2年後に日本はアメリカと戦争を始めるのか。この本の題名となった「ジャズの黄金時代」とは1920年代は、まさに、F・スコット・フィッツジェラルドの「ジャズ・エイジ」。「戦争と「ジャズ」」という文もあるよ。たくさんの野口氏自身によるイラストも添えられたジャズ・ミュージシャンへ愛に満ちた文集は、ぼくの知らない名前もたくさん出てくるのですが、それは、とても美しくまぶしい。




entry_bottom_w.png
entry_top_w.png
趙景達(チョキョンダル)さんの著した「植民地朝鮮と日本」を読んだ。

自虐史観などと呼ぶことなかれ。過去の加害の歴史を考え、反省し、明日につなげていくことのどこが悪い?

35年間の朝鮮民族の悲劇の中で、最も悲惨だと思ったのは、盧溝橋事件の後、中国との本格的な戦争となり、朝鮮社会の上層部にいた知識人、文化人、地主、資本家らが民族主義、社会主義を問わず、次々と転向していき、下層民の困窮と苦悩は激しくなったこと。けれど、下層の人こそは面従腹背の抵抗をしつづける。1945年8月15日のつかの間の陽光さす喜びもつかの間、同じ民族同士の戦争が始まってしまう。

日本ではどうだろう? 永井荷風や谷崎潤一郎、埴谷雄高のような人もいることはいたけれど、日本の小説家などの知識人の多くが同じように戦争協力を扇動し、戦後、多くの人が口をつぐんだ。

植民地主義とは何だろう? 「植民地朝鮮と日本」から引用します。

「植民地化の後遺症は深刻である。植民地主義の本質とは、何よりも「近代化」の美名のもとに多様になされる収奪・差別・抑圧と、それを担保する暴力の体系性にこそある。暴力の度合いが強ければ強いほどその傷跡も深い」

その傷は被害を受けたものほど深くはないけれど、加害したものにも歪んだ痕を残し、今、世界に嫌な言葉にあふれているような気がして、ぼく一人であっても真摯の過去と今に向き合いたいと思うのです。







entry_bottom_w.png
entry_top_w.png
大林宣彦さんの著した「戦争などいらない‐未来を紡ぐ映画を」を一気読みしてしまった。

大林さんは自身の名刺で「映画監督」ではなく、その肩書として「映画作家」と名のっているそうだけれど、ぼくはそんな大林さんの紡いだ映画が大好きなのです。今でも映画を撮り続けていて、近年の「反戦三部作」とも呼ばれ、大林さん自身は「古里映画」と呼んでいる「この空の花-長岡花火物語」、「野のなななのか」、「花筐/HANAGATAMI」、どれも素晴らしかった。大林組の映画って、わけがわからないんだけど、おもしろくて、感動してしまう。「古里映画」というのは「この空の中-長岡花火物語」が新潟の長岡、「野のなななのか」は北海道の芦別、「花筐/HANAGATAMI」が佐賀の唐津を舞台にしていて、去年撮り終えて、今年の夏に公開が決まっているらしい「海辺の映画館-キネマの玉手箱」はついに大林さん自身の古里、広島の尾道を舞台にした「古里映画」だそう。とても楽しみです。

ところで、この本で知ったのだけれど、あの世界的な巨匠、黒澤明とは、もちろん大林さん自身も世界の巨匠だけれども、黒澤監督の映画「夢」のころから親しくしていらして、黒澤さんからこんなことを話されていたということも「戦争などいらない-未来を紡ぐ映画を」に書かれていた。

「映画には必ず世界を救う力と美しさがある。でも、それを実現するには四百年はかかる。俺はもう八十歳で、人生が足りない。君が五十歳なら、俺よりもう少し先に行けるだろう。君が無理だったら、君の子どもたちの世代、さらにそれがダメだったら孫たちの世代が、少しずつ俺の先の映画をつくってほしい。そして、俺の四百年先の映画をつくってくれたら、そのときにはきっと映画の力で世界から戦争がなくなっている」

「夢」のラストシーンを思い出し、映画はポップ・ミュージックと同じなんだとも思う。

大林宣彦さんのいう「奇想天外の映画マジック」、「ウソから出たマコト」の奥にある人生の真実が少しだけ「戦争などいらない-未来を紡ぐ映画を」では明かされているようなのです。










entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

矢部宏治さんが文を著し、須田慎太郎さんの写真の本「戦争をしない国 明仁天皇のメッセージ」を一気読みしました。近ごろでは左どころか右と呼ばれる人たちにも敵視されているようにぼくが思える平成の天皇の言葉による日本が表わされているようなのです。

こんな本を読んだからには、ぼくもいっぱしの右翼とかウヨクかなと思うとそうでもないらしいけれども、国旗とか国歌とか何か好きではない、そのような人でも日本が好きな人がいたらどうでしょうかと明仁天皇と美智子皇后に畏れおおくも問いかければ、そのような人がいてもいいのではないかしらお答えになってくれそうなお二人は、いまや民主主義と平和の守護者のようではないかしら。

天皇陛下が沖縄を訪れた際に詠まれた琉歌は、今、沖縄戦の最激戦地に建てられた住民、軍人、日本人、アメリカ人の区別なく身元不明者遺骨を収めた「魂魄の塔」に刻まれているそうです。

花よおしやげゆん
人 知らぬ魂
戦 ないらぬ世よ
肝に願て

陛下とともに日本がいつまでも戦争をしない国であることを願ってやみません。






entry_bottom_w.png
entry_top_w.png
ケネス・ルオフ先生によるハーバード大学での天皇制についての講義が新書になり、それを読みました。「天皇と日本人 ハーバード大学講義でみる「平成」と改元」です。おもしろくて一気読みしてしまった。ほとんどが平成の明仁天皇と美智子皇后について書かれている。アメリカの日本現代史の研究者は明仁天皇と美智子皇后の目標と象徴性は五つのことに特徴づけられるといっています。

(1)戦後憲法固有のさまざまな価値を含め、戦後体制を明確に指示してきたこと。
(2)社会の弱者に配慮し、地理的その他の要因により周辺でくらす人びとに手を差し伸べ、社会の周縁との距離を縮めるよう努力してきたこと。
(3)戦争の傷跡と、さらに全般的に帝国の時代がもたらした深い傷跡をいやし、戦後を終結させようと努力してきたこと。
(4)日本が示すぺき誇りを堂々と提示してきたこと。ただし、その誇りは、日本史の見方を含め、単純きわまるナショナリズムとは異なる国際協調主義に裏づけられたものであったこと。
(5)美智子皇后が際立った行動を示し、重要な役割を果たしてきたこと。

お二人を尊敬いたします。具体的な論証は本書をお読みください。すべてとはいいませんが、サヨクにもウヨクにも敵視されているようなところがある。苦しい立場ながら、明仁天皇と美智子皇后は伝統から立ちのぼってきた平和と民主主義の守護者のようではなかろうか。




entry_bottom_w.png
<< 前のページ   HOME   次のページ >>
[25]  [26]  [27]  [28]  [29]  [30]  [31]  [32]  [33]  [34]  [35
plugin_top_w.png
カレンダー
05 2025/06 07
S M T W T F S
4 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
えいちゃんのお奨め

ライブのお知らせ

ぼくのTwitter

plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
最新コメント
[05/19 Pg Soft]
[05/04 ペコ]
[12/23 ロンサム・スー]
[07/27 gmail account]
[08/29 えいちゃん]
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
ブログ内検索
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
最新トラックバック
plugin_bottom_w.png
Copyright えいちゃん(さかい きよたか) by えいちゃん All Rights Reserved.
Template by テンプレート@忍者ブログ