えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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真藤順丈さんの著したこの前の直木賞受賞作『宝島』を読了しました。541頁にも及ぶ第二次世界大戦後のアメリカ占領下の沖縄を舞台にした物語。

20年間に及ぶこの群像劇の小説の力によって底辺からの沖縄現代史を感じることもできたように思います。

文体が46歳で夭折した中上健次の晩年の大作『異族』をより豊かにしたようで、そこにも惹きつけられ、長編を読みおおせたのです。

いろんな錯綜する物語の糸がほぐれつつ、さらなる問いをなげかえるようなフィナーレの「第三章 センカアギヤーに帰還 1965-1962」の後半には感動し、泣いてしまいました。長編の小説を読む物語の愉悦とはこういうことをいうのだと思います。

沖縄に基地のない平和を。

真藤順丈さん、直木賞受賞、おめでとうございます。

『宝島』(真藤 順丈)|講談社BOOK倶楽部

真藤順丈さん『宝島』 | 小説丸

『宝島』——真藤順丈が - 現代ビジネス





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信州の上田市の山に連なる小高い小さな高原の森の中に私設の「無言館」という美術館があって、前の大戦の戦没画学生の絵ばかりを集めている。そこに訪れたことを「無言館と傷ついた画布のドーム」に書きました。

その美術館で買った本、「無言館」の館長であられる窪島誠一郎さんの著し、編纂した『「無言館」の青春』を読みました。「無言館」のすぐ近くにある「傷ついた画布のドーム」にだれでも感想を書いていいノートが置かれていて、そのノートにぼくも訪れた時、短い感想文を書いたのだけれども、『「無言館」の青春』にはそのノートの書かれた若い人の文が収められ、何冊も本を出されておられる著名な文筆家である窪島さんも文を書いておられます。

この本を読みながら、「無言館」のぼくをどうしても惹きつけてしまう魅力は、そこが戦争の記憶をとどめさせ、平和を祈念する美術館であるととに、青春の美術館であることだということに気づきました。青春の真っただ中にいた絵を描く若者は、みんな、死んでしまい、絵だけは青春のままであるかのようなのです。そうか、ぼくは時計のねじを逆に回し、青春の真っただ中にいて、戦争で亡くなった若者に会いに行ったようなのです。そして、絵の中には、戦争はあってなかったかのようでもあったのです。

旅から戻り、ぼくは『「無言館」の青春』を読みながら、そのようなことをしみじみと噛みしめておりました。



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「樹木希林さんからの手紙」を読みました。この前、逝去された樹木希林さんからいろんな人たちに宛てた手紙を集めたです。その手紙は長野の上田の私設の美術館「無言館」で行われた成人式での若い人たちに向けた、それぞれ一人ひとりへの手紙も収められ、樹木希林さんは、事前アンケートで自分の夢・目標を空欄で出した人に、こんな手紙を送っていて、びっくり。その手紙の一部をここでこの本からご紹介。

「将来の目標のところが空欄だった
わたしネ 偶然18才で役者の道に入ったけど
60才過ぎてやっと将来役者目ざすかなと
定まったのョ 口を利かない子供でネわたし
しゃべるのが苦手とありますが 逆に
人の言葉を聞く耳が育ちます
…」

さて、その後につづく文はこの本をお読みください。

この「無言館」、前の大戦で戦没した画学生の絵ばかりを集めた美術館で、一度、かなり昔、訪れたことがあります。ぼくが訪れた後、この美術館の中の記念碑「記憶のパレット」が何者かによって、赤いペンキで落書きされるという事件がおこったことに、怖い時代になったと嘆息しました。そういえば「無言館」の再訪する夢をこの前、見たのですが、その夢の中で落書きされた赤いペンキがきれいに修繕されて、ぼくは、ほっとしていたのです。本当に無言館には再び訪れたい。

「樹木希林さんからの手紙」にもどり、ぼくもいろんな人たちに手紙を書こうかなと思う。きれいごとを書かない樹木希林さんの手紙は、きれいごとではない清々しさがあって、なんだかとてもいいのです。けれども、ぼくには歌があるか。ぼくの歌はその時、聴いてくれているみんなではなく、それぞれ一人ひとりへの手紙なのかもしれないなどと思ってしまう。








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赤坂真理さんの著した「箱の中の天皇」を読む。想像力による答えのない思考実験のような小説だと思った。

たしか、中上健次は日本の物語について考えていくと、そこには被差別部落と天皇制に行き当たるというようなことを言っていたことがあったと思う。その「日輪の翼」を書いた中上健次は、そして、「英霊の聲」を書いた三島由紀夫は、「みずから我が涙をぬぐいたまう日」を書いた大江健三郎は、「風流夢譚」を書いた深沢七郎はどうこれを読むのだろうかなどと考えてしまうのも小説を読む楽しみの一つ。

同じ本に収められている「大津波のあと」はさらに良く、散文詩のようで、祭りの後のみんなが去ったような透明な読後感が心地よかった。







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「野口久光 ジャズの黄金時代」を読了した。この二段組、250頁以上もある大著はジャズ評論の伝説的草分けである野口久光さんのジャズと呼ばれる音楽についての文集なのだ。もっとも古き文は、一九三九年の「スイング」。その2年後に日本はアメリカと戦争を始めるのか。この本の題名となった「ジャズの黄金時代」とは1920年代は、まさに、F・スコット・フィッツジェラルドの「ジャズ・エイジ」。「戦争と「ジャズ」」という文もあるよ。たくさんの野口氏自身によるイラストも添えられたジャズ・ミュージシャンへ愛に満ちた文集は、ぼくの知らない名前もたくさん出てくるのですが、それは、とても美しくまぶしい。




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趙景達(チョキョンダル)さんの著した「植民地朝鮮と日本」を読んだ。

自虐史観などと呼ぶことなかれ。過去の加害の歴史を考え、反省し、明日につなげていくことのどこが悪い?

35年間の朝鮮民族の悲劇の中で、最も悲惨だと思ったのは、盧溝橋事件の後、中国との本格的な戦争となり、朝鮮社会の上層部にいた知識人、文化人、地主、資本家らが民族主義、社会主義を問わず、次々と転向していき、下層民の困窮と苦悩は激しくなったこと。けれど、下層の人こそは面従腹背の抵抗をしつづける。1945年8月15日のつかの間の陽光さす喜びもつかの間、同じ民族同士の戦争が始まってしまう。

日本ではどうだろう? 永井荷風や谷崎潤一郎、埴谷雄高のような人もいることはいたけれど、日本の小説家などの知識人の多くが同じように戦争協力を扇動し、戦後、多くの人が口をつぐんだ。

植民地主義とは何だろう? 「植民地朝鮮と日本」から引用します。

「植民地化の後遺症は深刻である。植民地主義の本質とは、何よりも「近代化」の美名のもとに多様になされる収奪・差別・抑圧と、それを担保する暴力の体系性にこそある。暴力の度合いが強ければ強いほどその傷跡も深い」

その傷は被害を受けたものほど深くはないけれど、加害したものにも歪んだ痕を残し、今、世界に嫌な言葉にあふれているような気がして、ぼく一人であっても真摯の過去と今に向き合いたいと思うのです。







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大林宣彦さんの著した「戦争などいらない‐未来を紡ぐ映画を」を一気読みしてしまった。

大林さんは自身の名刺で「映画監督」ではなく、その肩書として「映画作家」と名のっているそうだけれど、ぼくはそんな大林さんの紡いだ映画が大好きなのです。今でも映画を撮り続けていて、近年の「反戦三部作」とも呼ばれ、大林さん自身は「古里映画」と呼んでいる「この空の花-長岡花火物語」、「野のなななのか」、「花筐/HANAGATAMI」、どれも素晴らしかった。大林組の映画って、わけがわからないんだけど、おもしろくて、感動してしまう。「古里映画」というのは「この空の中-長岡花火物語」が新潟の長岡、「野のなななのか」は北海道の芦別、「花筐/HANAGATAMI」が佐賀の唐津を舞台にしていて、去年撮り終えて、今年の夏に公開が決まっているらしい「海辺の映画館-キネマの玉手箱」はついに大林さん自身の古里、広島の尾道を舞台にした「古里映画」だそう。とても楽しみです。

ところで、この本で知ったのだけれど、あの世界的な巨匠、黒澤明とは、もちろん大林さん自身も世界の巨匠だけれども、黒澤監督の映画「夢」のころから親しくしていらして、黒澤さんからこんなことを話されていたということも「戦争などいらない-未来を紡ぐ映画を」に書かれていた。

「映画には必ず世界を救う力と美しさがある。でも、それを実現するには四百年はかかる。俺はもう八十歳で、人生が足りない。君が五十歳なら、俺よりもう少し先に行けるだろう。君が無理だったら、君の子どもたちの世代、さらにそれがダメだったら孫たちの世代が、少しずつ俺の先の映画をつくってほしい。そして、俺の四百年先の映画をつくってくれたら、そのときにはきっと映画の力で世界から戦争がなくなっている」

「夢」のラストシーンを思い出し、映画はポップ・ミュージックと同じなんだとも思う。

大林宣彦さんのいう「奇想天外の映画マジック」、「ウソから出たマコト」の奥にある人生の真実が少しだけ「戦争などいらない-未来を紡ぐ映画を」では明かされているようなのです。










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えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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