えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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柄谷行人さんの著した『世界史の実験』を読む。柄谷行人さんの柳田國男論。柄谷は評論を始めた初期から柳田を論じていたと思うけれど、マルクスやフロイト、夏目漱石、坂口安吾を論じていた柄谷行人が、柳田國男の祖霊論について書いており、本居宣長の古道についても、必ずしも批判的ではなく言及していることに驚く。ただし、国家神道と対峙した柳田國男は見たこともない新しい社会の実験を見ていたとする。柳田は九段の坂に鎮座する神社には決して収斂されることのない霊を見ていた。柄谷さんの引用した柳田國男の文をいくつか引用します。

「我々の親たちの信仰に従えば、神輿の中には神様が乗っておられる。これは事実っであって、詩でもなく空想でもない」

「空と海とはただ一続きの広い通路であり、霊はその間を自由に去来したのでもあろうが、それでもなおこの国土を離れ去って、遠く渡って行こうという蓬莱の島を、まだ我々はよそにもってはいなかった。一言葉でいうならば、それはどこまでもこの国を愛していたからであろうと思う」

「現在もほぼ古い形のままで、霊はこの国土の中に相隣して止住し、徐々としてこの国の神となろうとしていることを信ずる者が、たしかに民間にはあるのである。そうして今やこの事実を、単なる風説としてではなく、もっと明瞭に意識しなければならぬ時代が来ているのである。信じる信じないとは人々の自由であるが、この事実を知るというまでは我々の役目である」

柳田によれば、人は死んで御霊になるという。死んでまもなくは御霊は「荒みたま」と呼ばれ、子孫の供養は祀りをうけ浄化され、御霊は、一つ御霊に溶け込み、神となり、その神は村の山の高いところに昇り、子孫の繁栄を見守るという。

このようなことが書かれ、「第二部 山人から見る世界史」に続き、さらなる続きのある予感。続く柄谷行人の柳田國男論を楽しみに待ちます。

『世界史の実験』(岩波新書) - 週刊読書人





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頼富元宏さんの著した「密教とマンダラ」を読了した。曼荼羅の前提としての教養である密教について、本の頁数の半分以上は書かれていて、半分を過ぎたころに、やっと曼荼羅についてのことが読めた。こういうシンボリズムについての本、しかも、よくわからない仏や仏の化身の名前がたくさん出てきて、読んでいると、とても眠くなりました。

こんな本を読んだからには、とくに悟りの境地に至りたいとか思っていないけれど、どこか曼荼羅が飾られている静かな寺院に訪れ、一日中、曼荼羅を眺めたり、瞑想したりしてみたい。







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真藤順丈さんの著したこの前の直木賞受賞作『宝島』を読了しました。541頁にも及ぶ第二次世界大戦後のアメリカ占領下の沖縄を舞台にした物語。

20年間に及ぶこの群像劇の小説の力によって底辺からの沖縄現代史を感じることもできたように思います。

文体が46歳で夭折した中上健次の晩年の大作『異族』をより豊かにしたようで、そこにも惹きつけられ、長編を読みおおせたのです。

いろんな錯綜する物語の糸がほぐれつつ、さらなる問いをなげかえるようなフィナーレの「第三章 センカアギヤーに帰還 1965-1962」の後半には感動し、泣いてしまいました。長編の小説を読む物語の愉悦とはこういうことをいうのだと思います。

沖縄に基地のない平和を。

真藤順丈さん、直木賞受賞、おめでとうございます。

『宝島』(真藤 順丈)|講談社BOOK倶楽部

真藤順丈さん『宝島』 | 小説丸

『宝島』——真藤順丈が - 現代ビジネス





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信州の上田市の山に連なる小高い小さな高原の森の中に私設の「無言館」という美術館があって、前の大戦の戦没画学生の絵ばかりを集めている。そこに訪れたことを「無言館と傷ついた画布のドーム」に書きました。

その美術館で買った本、「無言館」の館長であられる窪島誠一郎さんの著し、編纂した『「無言館」の青春』を読みました。「無言館」のすぐ近くにある「傷ついた画布のドーム」にだれでも感想を書いていいノートが置かれていて、そのノートにぼくも訪れた時、短い感想文を書いたのだけれども、『「無言館」の青春』にはそのノートの書かれた若い人の文が収められ、何冊も本を出されておられる著名な文筆家である窪島さんも文を書いておられます。

この本を読みながら、「無言館」のぼくをどうしても惹きつけてしまう魅力は、そこが戦争の記憶をとどめさせ、平和を祈念する美術館であるととに、青春の美術館であることだということに気づきました。青春の真っただ中にいた絵を描く若者は、みんな、死んでしまい、絵だけは青春のままであるかのようなのです。そうか、ぼくは時計のねじを逆に回し、青春の真っただ中にいて、戦争で亡くなった若者に会いに行ったようなのです。そして、絵の中には、戦争はあってなかったかのようでもあったのです。

旅から戻り、ぼくは『「無言館」の青春』を読みながら、そのようなことをしみじみと噛みしめておりました。



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「樹木希林さんからの手紙」を読みました。この前、逝去された樹木希林さんからいろんな人たちに宛てた手紙を集めたです。その手紙は長野の上田の私設の美術館「無言館」で行われた成人式での若い人たちに向けた、それぞれ一人ひとりへの手紙も収められ、樹木希林さんは、事前アンケートで自分の夢・目標を空欄で出した人に、こんな手紙を送っていて、びっくり。その手紙の一部をここでこの本からご紹介。

「将来の目標のところが空欄だった
わたしネ 偶然18才で役者の道に入ったけど
60才過ぎてやっと将来役者目ざすかなと
定まったのョ 口を利かない子供でネわたし
しゃべるのが苦手とありますが 逆に
人の言葉を聞く耳が育ちます
…」

さて、その後につづく文はこの本をお読みください。

この「無言館」、前の大戦で戦没した画学生の絵ばかりを集めた美術館で、一度、かなり昔、訪れたことがあります。ぼくが訪れた後、この美術館の中の記念碑「記憶のパレット」が何者かによって、赤いペンキで落書きされるという事件がおこったことに、怖い時代になったと嘆息しました。そういえば「無言館」の再訪する夢をこの前、見たのですが、その夢の中で落書きされた赤いペンキがきれいに修繕されて、ぼくは、ほっとしていたのです。本当に無言館には再び訪れたい。

「樹木希林さんからの手紙」にもどり、ぼくもいろんな人たちに手紙を書こうかなと思う。きれいごとを書かない樹木希林さんの手紙は、きれいごとではない清々しさがあって、なんだかとてもいいのです。けれども、ぼくには歌があるか。ぼくの歌はその時、聴いてくれているみんなではなく、それぞれ一人ひとりへの手紙なのかもしれないなどと思ってしまう。








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赤坂真理さんの著した「箱の中の天皇」を読む。想像力による答えのない思考実験のような小説だと思った。

たしか、中上健次は日本の物語について考えていくと、そこには被差別部落と天皇制に行き当たるというようなことを言っていたことがあったと思う。その「日輪の翼」を書いた中上健次は、そして、「英霊の聲」を書いた三島由紀夫は、「みずから我が涙をぬぐいたまう日」を書いた大江健三郎は、「風流夢譚」を書いた深沢七郎はどうこれを読むのだろうかなどと考えてしまうのも小説を読む楽しみの一つ。

同じ本に収められている「大津波のあと」はさらに良く、散文詩のようで、祭りの後のみんなが去ったような透明な読後感が心地よかった。







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「野口久光 ジャズの黄金時代」を読了した。この二段組、250頁以上もある大著はジャズ評論の伝説的草分けである野口久光さんのジャズと呼ばれる音楽についての文集なのだ。もっとも古き文は、一九三九年の「スイング」。その2年後に日本はアメリカと戦争を始めるのか。この本の題名となった「ジャズの黄金時代」とは1920年代は、まさに、F・スコット・フィッツジェラルドの「ジャズ・エイジ」。「戦争と「ジャズ」」という文もあるよ。たくさんの野口氏自身によるイラストも添えられたジャズ・ミュージシャンへ愛に満ちた文集は、ぼくの知らない名前もたくさん出てくるのですが、それは、とても美しくまぶしい。




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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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