えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

entry_top_w.png

熊本の地で永い間、田中正造の思想を研究されている大学の先生でおられる小松裕さんの著した『真の文明は人を殺さず 田中正造の言葉に学ぶ明日の日本』を読みました。人の作り出した二酸化炭素のもたらした熱波によって、地球上のどこかの森が焼けていくこの今の地球に、田中正造の思想は確かに読み返されるべきだとも思いました。田中正造のもっとも有名な言葉です。

「真の文明は 山を荒らさず 川を荒らさず 村を破らず 人を殺さざるべし」

みなさまもどこかで聞いたことがあるのではなかろうか? この本で知った田中正造のこんな言葉にもぼくは実際、驚き、畏怖してしまう。

「吾常に語るに、世界人類はもちろん、鳥獣虫魚貝山川草樹、およそ天地間の動植物は、何一つとして我に教えざるなければ、これ皆我良師なり」

田中正造翁は晩年に渡良瀬の公害問題に奔走していた生涯を「一夢のごとくして」と述懐し、「愛」ということばの書を友人に送ったという。







entry_bottom_w.png
entry_top_w.png


大矢英代さんの著した『沖縄「戦争マラリア」-強制疎開死3600人の真相に迫る』を一気に読みました。この前、見た映画『沖縄スパイ戦史』を三上智恵さんとともに共同で監督した人が大矢英代さんで、2009年の時から2020年までの長きに渡った間の「戦争マラリア」の取材記録であるとともに、まぶしいような青春の記録でもあるような本でした。「戦争マラリア」とは軍名によってマラリアのはびこる地域の強制移住された人々が、次々に病死していった史実でもあることで、そこのは、軍というものが住民の生命を惨たらしく犠牲にするのかということでもある。そんな話を重い口を開け、すこしづつ話してくれた波照間島のおじい、おばあとの暖かい心の交流も書かれていた。そして、「最終章 なぜ今、戦争マラリア」で問いかけていることは、とても鋭い。この章から強制移住を経験した潮平正道さんの言葉を引かさせてください。

「戦争になると、国歌は「国」というものを大事にして「民」を犠牲にする。でも、「国」は「民」があって初めて成り立つものでしょう? 戦争になるとね、そんなことは国民は忘れてしまうんですよ。八重山の人たちも、「お国のため」「天皇のため」と言って、マラリアで死ぬと分かっていながら軍の命令に従ったんだから」

そう、戦争マラリアを生き抜いた八重山のおじい、おばあたちは、口々に「また戦争をするんかやぁ」と言っているそうなのだ。今、国が喧伝し始めている敵とする国のこととかを敵として安易に信じてはいけない。

この本『沖縄「戦争マラリア」』の取材の結晶である『沖縄スパイ戦史』は数々の賞も取り、国内では自主上映がつづき、海外の韓国、ドイツ、スイスでも上映され、第二次世界大戦後、もっとも戦争をしている国、アメリカでも上映が始まるそうです。本当におめでとうございます。










entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

村上春樹さんの『猫を捨てる 父親について語るとき』を読む。今をときめく長年のノーベル賞候補の作家、村上春樹が父について書いた珍しい私小説。

ぼくは、父と男の子の間には何かの物語が生まれる揺り籠のようなものがあるとも思う。歌だってそうだ。ロック・ミュージックには特に父との葛藤を生涯の一つの歌うべきテーマとなってしまったシンガーもいて、浜田省吾から尾崎豊、ブルース・スピリングスティーンを思い出す。

村上春樹さんはどうのように父親を語るのだろうか? それは前の大戦の記憶をも呼び覚まし、この読書は、ぼくの身もつまされる。

父さん、あなたは戦争に行ったのですね。父さん、あなたはどうしてそんなに速く走るのですか? あなたの背中しか見えないではないですか。本を読みながら、そんなぼく自身の声を聞いたような気もするのです。

台湾の新進のイラストレーター、高研さんの表紙やカラーの口絵も何かを思い出させるかのようで、素敵な小さな本です。





entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

「木喰五行明満上人道歌抄」を読みました。たった二十二頁の木喰上人の歌集で、この前、訪れた木喰の里微笑館で購入したものです。木喰上人とはどんな人か? この本というより冊子に書かれた「木喰上人略伝」から引用すれば、こんな人だったらしい。

「心願として八宗一見を志し、日本全国中普く霊仏霊者を参して其法印を印せざる所なく、永き遍路の一生を随所に一夜の説教と、一切四百衆の病を見る事と、而て因縁のある所に千体仏を遺す事とを以て特に優れたる行蹟として、今尚ほ国々の全土に其跡が残って居る」

木喰上人は生涯の旅の途中でたくさんの書画も残した人で、この「木喰五行明満上人道歌抄」の歌はその一部であるとのこと。ありがたき、いくつかの歌をご紹介いたします。

日月の。心の神の。天てらば
     祈る心も。おなし日月

皆人の。心に咲きし。白蓮花
     花は散りてもたねはのこらむ

我心。にごせばにごる。すめばすむ
     すむもにごるも。心なりけり
entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

大林宣彦さんの著した「キネマの玉手箱」がおもしろくて、一気に読んでしまった。

大林さんは自らの病気のことを語り始めても、いつしか映画の話になってしまう、それぐらい映画のことが本当に好きで好きでたまらない、そんな映画監督だったんだ。そんな監督自身がもっとも尊敬していた映画監督は、黒澤明だったのですね。あと、チャーリー・チャップリン、ジョン・フォード、小津安二郎など、たくさんの映画監督と映画についても敬意をこめて書かれている。

ぼくは高校生のころ見た大林組の映画「時をかける少女」を見た時の驚きを忘れない。変な映画だなという感想以上に、この大林宣彦という人の頭の中はどうなっているだろうと訝しく思い、いかれているとも思ったのだった。「大林マジック」だった。その「大林マジック」は大林宣彦さんの軍国少年であったころから始まる、いろいろな人生から自然に到達したものでもあった。是枝裕和監督があとがきの「卒業と人生の季節に」に書いているように、ぼくも、あれから三十年、ずっと大林マジックにかかっているのかもしれません。




entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

昨日、ライブ前にライブバー近くの本屋に入って、いろんな本を見ていると、ぼくの目に「ミュージック・マガジン」の8月号の表紙が飛び込んできて、「特集 ブラック・ライヴズ・マターとアフリカン・アメリカンの歴史」というのに魅かれて、さっそく購入してしまった。近年にはなかった硬派な特集に驚いてしまった。

中村とうよう氏が自死するすこし前ぐらいから「ミュージック・マガジン」はぼくからすると、とてもつまらなくなり、ティーン・エイジャーのころの前身「ニュー・ミュージック・マガジン」から読んでいたのを、中村とうようさんの書いていた「とうようズ、トーク」というコラム蘭がなくなったのをきっかけに、ほとんど手に取らなくなっていた。

ふと今のミュージック・マガジンの奥付をみると編集人が高橋修さんから久保太郎さんに変わっている。どちらの方もどんな人かは存じ上げませんが、編集方針の変更とはこういうことを言うのだろう。

ぼくが十代から二十代のころよく読んでいた読み物雑誌としてこの「ミュージック・マガジン」、「話の特集」があるけれど、「話の特集」はなくなってしまった。かろうじてぼくの読まなくなってしまった「ミュージック・マガジン」だけ残っていた。

「ミュージック・マガジン」の2020年8月号の「特集 ブラック・ライヴズ・マターとアフリカン・アメリカンの歴史」は三段組の56頁にもわたる読み応えのあるものだけれど、面白くて一気読みしてしまった。この特集は、近頃、非業の死を遂げたアフリカン・アメリカン、Tony Mcdade、Breonna Taylor、George Floyd、Atatiana Jefferson、Trayvon Martin、Nina Popの6人の方に捧げられていることも、特集記事に一貫して添えられた下の方の小さなイラストで表明されていると思う。CDや書籍、映画のガイドもある音楽をバックボーンにした充実した内容。

少し脇道にそれて、ムービーの紹介です。「特集 ブラック・ライヴズ・マターとアフリカン・アメリカンの歴史」の中に原田和典さんの「'Strange Fruit'こそ、最も幅広い世代に知られている人種差別のプロテスト・ソングではないか。39年4月、歌手ビリー・ホリデイが初録音。シャウト系、スクリーマー系ではない彼女が、一語一句を堅実に届けるさまは、"静の力"の極致だ。」の素晴らしい文章もあるBillie Holidayの"Strange Fruit"です。


あー、これはもっとも古きころの勇気ある静かな力強い歌。

さて閑話休題、あの「ミュージック・マガジン」が帰ってきたみたいなのです。






entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

長谷川博一さんの著した「追憶の泰安洋行 ~細野晴臣が76年に残した名盤の深層を探る」が面白くて、一気に読みました。

細野晴臣さんが1976年に出したアルバム「泰安洋行」とそれと前後した「トロピカル・ダンディー」と「はらいそ」を合わせて、「トロピカル三部作」とよく呼ばれているのだけれど、この「追憶の泰安洋行」は、「泰安洋行」を真ん中にすえつつ、「トロピカル三部作」を当時のさまざまな関係者へのインタビューも含めて、ありとあらゆる角度から深く掘り下げたもの。日本のロックの黎明期にロックのリズムや様式から逃れようとして、この「トロピカル三部作」が生まれ、これらはぼくは未だに聴き続けている三枚のアルバムなのです。

この「追憶の泰安洋行」では、鈴木茂さんや久保田麻琴さん、矢野顕子さんらの錚々たる有名ミュージシャンの当時のことを思い出した貴重なインタビューも読めます。

最終章である「最終回 ぼくと君のララバイ」の前の章に「第27回 細野晴臣が明かす名盤の記憶 その2」にある長谷川さんのオンラインでの質問に答えての近ごろの心境を語った細野さんの言葉は深く、ぼくに何かを感じさせ、これからもぼくに、ある意味でたんたんと普通に生きていかなかればと思わせるものでもありました。

とても私的な質問をさせてください。僕は個人的には3・11東日本大震災の前と後では、まるで戦前と戦後のように日本の姿は変わったと感じています。(略)
「(略)3・11の前と後、全く同じです。自分を覚醒させた現象です。今も時々、トラウマにもなった地震警報を再生すると覚醒します。好きだった日本と日本人に疑問が生じた事件でした。そして今は人類が未経験の衰退時期に来てる感じです。そういう社会に影響されつつも、淡々と好きな音楽に没頭できる自由を噛みしめようと思います」

三段組のこの本は読みごたえがあり、すばらしい内容で、アートワークも美しく、貴重な写真も載せられています。そして、「追憶の泰安洋行」は長谷川博一さんの遺した最後の本にもなりました。

Yellow Magicよ、永遠なれ!






entry_bottom_w.png
<< 前のページ   HOME   次のページ >>
[17]  [18]  [19]  [20]  [21]  [22]  [23]  [24]  [25]  [26]  [27
plugin_top_w.png
カレンダー
01 2025/02 03
S M T W T F S
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
えいちゃんのお奨め

ライブのお知らせ

ぼくのTwitter

plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
最新コメント
[12/23 ロンサム・スー]
[07/27 gmail account]
[08/29 えいちゃん]
[08/29 みさき]
[05/18 えいちゃん]
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
ブログ内検索
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
最新トラックバック
plugin_bottom_w.png
Copyright えいちゃん(さかい きよたか) by えいちゃん All Rights Reserved.
Template by テンプレート@忍者ブログ