えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
日暮泰人さんの著した『ブルース百歌一望』を読了しました。
日暮さんというと日本のブルースのボスのような人で、この人がいなければ、日本でこんなにたくさんの人に、アメリカの大衆音楽、民俗音楽、民族音楽の中の一つのジャンルであるブルースが認知されなかっただろうし、聞かれなかっただろう。ぼくも大学生のころ、日暮さんらが主催する「P-Vine」というレーベルから発売されたブルースのレコードを漁り、買い、貪るように聴いていた。この『ブルース百歌一望』は、そんな日暮さんが、有名から無名までの100曲(実際は101曲)のブルースを聴きつつ、思ったり、想像したり、考えたことを一冊の本にまとまたもの。
どのようなことをブルースを聴きながら、日暮さんが思ったり、考えたりするかというと、それはブルースという音楽についての深い考察からアメリカの社会、日本の社会、歴史、人の生きざま、孤独、犯罪、希望、愛と、縦横無尽に語られているのです。例えば、この本から、ぼくはこんな日本の近代史について知ることにもなった。Luke Jordanの"Cocain Blues"を取り上げた「コカイン」の章の一部を、長くなりますが、引用します。
「1935年の国際連盟の統計によると、日本はコカインとヘロインの流通量で世界1位、モルヒネで4位とされている。第一次世界大戦に医療用に多く使われていたモルヒネのヨーロッパからの供給が途絶えたため、日本は独自に製造することになり、1916年には星製薬(SF作家、星新一の父親が創業した会社)がその製造に成功したという。日本はモルヒネを朝鮮で浸透させ多くの中毒者を生み出し、また中国ではアヘンを大量に売るようになる。コカの葉の最大供給国であるコロンビアから常に輸入して製造したという歴史があった。ドラッグで巨額の利益を出し、その資金を周辺諸国の植民地政策につぎ込むというのが戦前日本の暗い歴史の一端である」
さて、社会や麻薬、歴史のことを後にして、人のことについて歌ったブルースがやはりほとんどであったようなのだ。"Crossroad Blues"の中で「ウィリー・ブラウンに伝えてくれ」と呻くように歌ったRobert Johnsonの師匠すじにあたるWillie Brownの"Future Blues"の詞が「最期一分のブルース」の章に取り上げられている。これなんかは人生の最奥の何かが歌わているのではないかしら?
「未来のことなどわかりゃしない
過去のことは話せない
一分、一分が思えてくる
おれの最期にちがいないと
何分かが何時間のよう
何時間が何日かのよう
そうさ、何分かが何時間で
何時間が何日にも思えるのさ」
今や伝説ともいえる噺家、立川談志は「落語とは、人間の業の肯定である」といったという有名な話があるけれども、この本を読みながら、ぼくはたえず、その言葉を思い出してもいたのです。「業」には3つの意味があるそうなのです。
・仏語。人間の身・口・意によって行われる善悪の行為。
・前世の善悪の行為によって現世で受ける報い。「業が深い」「業をさらす」「業を滅する」
・理性によって制御できない心の働き。
『ブルース百歌一望』に中にも登場する"Blues impulse"、「ブルース衝動」という言葉、「業」とい言葉の3つ目の意味にぴったりなような気もする。
若いころ、ブルースという3つのコードしか出てこない、同じコード進行の繰り返す音楽を聴いて、その無限の広がりを知り、なんて自由な音楽なんだろうと思った。みんなにアメリカから海を越えてそのブルースという音楽を届ける大きな船の船長のようでもあった日暮泰人さん。
ボス、素敵な本を書いてくれて、ありがとう。
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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