えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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1966年のロイヤル・アルバート・ホールでボブ・ディランと聴衆の一人との間でこんなやり取りがあった。一人がディランにこうヤジる。"Judas!"(ユダヤ野郎)。"I'm never listening to you again, ever!"(二度とお前の歌なんて聞かないぞ)。ディランはこう答える。"I don't believe you."(おまえのことなんて信じない)。"You're a liar."(おまえは嘘つきだ)。"Play it fuckin' loud."(爆音でぶちかましてやれ)。そして荒々しく"Like A Rolling Stone"がフルテンで演奏される。この時、何かがぶち壊され、新しく生まれたものがあった。ジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョップリンやドアーズが登場する前のリハーサルを繰り返しているころのこと、何か爆発が起こったのだった。そんなボブ・ディランのギグをこの前、二十一世紀の東京で見た時も、ぼくはその変わらぬ自由に感動したのだった。信じられるかい?

その興奮は後を引き、本屋である本を見かける。「現代思想 5月臨時増刊号 総特集ボブ・ディラン」。20人以上の人がディランについて書いている。例えば、音楽評論家の平井玄氏の言うように、何かを求めて永遠に吃りながらずれていく問いと発見とさらなる問いの永久運動がボブ・ディランなのだろうか? アメリカ文学の研究者である堀内正規氏はこの前の日本公演を見て、こんなことを書いている。

「二四日のライブではたまたまディランの表情、唇の動きまで見える場所に立つことができたが、最後に"like a rolling stone!"と唄い終えた瞬間、ディランがにやっと笑ったのが見えた。混沌の中でニヤリと笑う人間-それは六〇年代からずっと続く、ディランのシンボリックなしぐさである。それは「ブルーにこんがらがって」いる人たち(だがこんがらがることのない人がうるだろうか?)にとって励ましとして働き続ける」

ひるがえって、この本にも書かれることのない日本の音楽シーンについて思う。ディランが"Play it fuckin' loud."と言って演奏し、ぶち壊し、産声をあげた何かは日本では根付くことはなかったのか? 壊滅的? 兄貴や姉貴だと慕う何人もが去り、何人もの仲間が地下や周縁に潜行してしまったのか? その地下や周縁に潜った何かが爆発前夜ではないのか? 死んだものすら生き返るのではないか? 南の国境線から吹く調べにのって、ボブおじさんがにやりと笑ってこう歌うのが聞こえる。

The answer my friend is blowin' in the wind.
The answer is blowin' in the wind.





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えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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