えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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この前、小さな旅をした。その宿に着いたのは午後の三時ごろなのであった。千葉の鴨川の方から山に車で登っていくと清澄寺という寺があって、さらに山を登っていくと、木更津市とのちょうど境に「秘湯の宿 白岩館」はあったのです。そのお宿は七十歳過ぎの元気なおばあさんと三十代か四十代の男の人の営む十二畳が二部屋のみの硫黄温泉の宿であった。宿の男の人に温泉の入り方などを案内してもらい、その男の人は、さっき、鹿が猟で仕留められた、解体する現場を初めて見た、すごかったなどと語る。今夜は鹿肉が食べられるかもしれないなどと思う。このあたりは、鹿や猪、猿などがたくさん出没するらしい。宿で飼っている一歳になる柴犬が夜中に吠えるのは、そのせいらしい。そんな中、今夜の泊まり客はぼく一人らしい。

夕食前にひなびた温泉に入っていると、硫黄の湯のあの独特のゆで卵みたいな匂いの立ち込める中、天気雨ならぬ、天気雪が降ってきた。ほとんど雲のない暮れかかる空を見渡して、どこから降ってくるのだろうと不思議に思う。はらはらと雪が硫黄の湯に溶けていく。いい湯だなぁ。

夕食になり、猪鍋や焼き物を炉ばたで箸でつつく。どれもおいしくて、しかも量もいっぱいで、ビールやお酒もすすみます。炉ばたというのが何とも風情があるし、しかもおいしくて、たくさん。さっき猟をされたという鹿の肉も出てきた。焼いて塩で食べてみると、牛肉のさっぱりした赤肉のような味。さっきまで野山を駈けていたものを食べているのかと思うと、すこしどきどきする。

夕食の後、再び、風呂に入る。露天の夜空の星がはっきり輝いていてきれい。部屋に戻りうだうだしているうちに夜もふけ、十一時前にふとんに入る。夜の三時ごろ目が覚めて、テレビを付けてみる。俳優の林隆三さんがNHKのアナウンサーとともに宮澤賢治の童話「鹿踊り(ししおどり)のはじまり」を朗読しているのだった。その童話の主人公は動物たちの声を聞けるようになり、自分の落としていった手ぬぐいを鹿がなんだろうと不思議に思い、踊っているのを見るのだった。いのちをいただくというようなことを思った。明日からぼくも生きものたちの声がはっきりと聞こえるのではないか?

旅から帰り、こたつに入っていると、うちにいる犬のレオが暖かくともっている石油ストーブの前まで歩いていき、ぺたんと腹ばいになった。レオのこんな声が聞こえた。

「ここあったかいな。これのせいかな?」

あの湯宿にまた、今度は誰かと訪れたいなと、思い出す。


秘湯の宿『白岩館』館主さんのブログ
http://ameblo.jp/shiraiwakan/
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えいちゃん
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男性
職業:
S.E.
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音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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