えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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本の帯にこんな言葉がある。

「中上健次は、そこを路地と呼んだ 「路地」とは被差別部落のことである」

この帯の文がちょっとショッキングかもしれない上原善広さんの著した「日本の路地を旅する」という本を読んだ。東京近郊の新興住宅地に育ったぼくは被差別部落と言われても、はなはだピンとこず、中上健次の小説を読んでも、「路地」が被差別部落であることを長い間、気付かなかったほどなのだ。この著者である上原善広さん自身がそのような所の出身であるらしい。「それは、自らのルーツをたどる旅でもあった」ともう一つの帯の言葉にあるのだけど、過去に犯罪を犯した兄を沖縄に訪ねる終章を読み終わって、心の中のモヤモヤの澱が、出口を求めてたまってしまう。

知らないことがいっぱい書かれていた。デモ登校と言って、子どもに「差別反対」と書いたゼッケンのようなものを着せて登校させるようなことや教室の中で「ぼくは被差別部落出身です」と啓蒙の意味を込めて宣言するというようなことが大阪では行われるのか? 驚いてしまう。

昔、白土三平の「カムイ伝」という漫画を読んで、そういう被差別部落とかって、不謹慎かもしれないが、かっこいいんじゃないかと思ったこともある。

中上健次曰く「異族」という人たちもぼくたちの社会にも身近にいるのだが、同じ時代を生きていく仲間として、仲良くやっていった方がいいのではないかと思うぼくは、甘いのだろうか? けれど、人の幸せよりも、まずは自分の幸せだな。





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忘れ去られそうで、忘れることのできない作家、中上健次の小説に出会ったのは高校生のころであった。そんな中上健次に21世紀の今、インターネットの動く絵の世界、YouTUBEで再会した。

初めて中上健次の小説を読んだ時、ここに描かれたような処が本当に日本にあるのだろうかと思うほど、衝撃を受けたのだったけど、それは「岬」という短編集で、この「岬」という小説の南紀州にあるらしい舞台は「路地」と中上から名付けられ、その「路地」を舞台とした小説は「枯木灘」や「千年の愉楽」、「地の果て、至上の時」に書き連ねられていく。後でこの「路地」という場所が和歌山県の新宮市の被差別部落であるらしいことを知った。なぜ分からなかったかは、中上の「路地」を舞台にした小説には「差別」やら「解放」という言葉の一字も出てこないことによる。

中上健次はエッセイもたくさん残した人で、そのエッセイによってジャズのアルバート・アイラーやジョン・コルトレーンを知った。ボブ・マーレイについて書いていた。対談でビートルズをいいと言っていた。ぼくはニューヨークのイースト・ヴィレッジやリバプール、ジャマイカのキングストンにも中上の「路地」があるような気がする。

中上健次は1992年に逝ってしまったのだけど、中上健次の故郷の新宮市に旅をしたことがある。「路地」らしいところはどこにも無かった。中上が「路地」を舞台にした小説を書き連ねているころ、市の同和行政によって、「路地」は再開発され消失したと言う。

小説家の宮内勝典はニューヨークのイースト・ヴィレッジの麻薬密売人がたむろするところからスラム街の奥まで、中上と歩き入ったそうだ。微塵も臆せず歩く中上に不安になり、宮内氏は中上に大丈夫かと尋ねると、中上はこう呟いたと言う。

「おれはこういうところで生まれたんだからな」

このYouTUBEには韓国のソウルに「路地」を発見し、ご機嫌な中上健次がいる。


http://www.youtube.com/watch?v=ZtxAvSuuGGo

何か一冊と言われれば「紀州 木の国・根の国物語」をお奨めします。南紀を旅してのルポルタージュでありエッセイなのだが、中上健次の作品の中では読みやすく、けれど、内容は濃い。古本屋とかで見かけたら読んでみてください。





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最近、諸般の事情で更新してなかったが、何か書こうかなと思った。なぜか、世間の厳しい状況をひしひしと感じたこの頃であったのだけど、やはりそうか、日本の一人当たりGDP(国内総生産)というものが2009年、世界で23位であるという。最高が世界で第2位だった1993年ごろであったそうだ。2001年ぐらいまで、2位から5位ぐらいまでをさ迷い続けるのだが、小泉という人が首相になってから下落し続けていくのであった。構造改革、派遣労働の解禁とか、にやけながらアメリカ合衆国の後を追えと行っていたのだが、明らかな失政だったのではないか?

話は変わるようで変わらず、昔、中学生の頃、NHKのFMで渋谷陽一という人のロックの番組を良く聴いていたんだな。その渋谷陽一氏、忌野清志郎が逝ってしまった時、追悼の文で、自分はキヨシローと同じ年齢だった、くやしい、残されたものとして、まだまだ頑張らねばと書いていたのだが、そのロックを電波に乗せてぼくに教えてくれた人が、オピニオン雑誌を出しているを見つけたのだった。彼の頑張らねばという言葉の応えのような「SIGHT」という雑誌を本屋で見つけたのだが、謳い文句に「リベラルに世界を読む」とある。季刊誌になっていて、最新号の特集は「ありがとう小沢一郎 僕たちは卒業します」とある。保守系の雑誌ばかり隆盛のオピニオン誌の中で左翼ではない反保守という、一昔前では生ぬるいと批判されてただろうこのスタンスが、現在進行形のロックであるよううな気もしたのだった。けれど、ソウル・フラワーの中川くんあたりからは、めちゃくくちゃ批判されてしまうのかもしれない。

内田樹と高橋源一郎の小沢一郎を巡る対談やら、「ペンタゴンに振り回されるアメリカと、どう向きあえばいいのか」と題された、オランダのジャーナリスト、カレル・ヴァン・ウォルフレンへのインタビューなど一読の価値あり。そして、音楽に関するコラムでピーター・バラカン氏が「名盤おとぎ話」という連載を書いていて、今号は「ボビー・チャールズ」。いいですなぁ。

渋谷陽一さん、思わぬところで再会し、Led ZeppelinやEarth, Wind & Fire、Joni Mitchellをかけながらのボソボソと語るラジオの彼のディスク・ジョッキーを思い出したのです。


渋谷陽一さんのブログ「渋谷陽一の「社長はつらいよ」」
http://ro69.jp/blog/shibuya/
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「クマは眠れない」という本を読んだのだけど、読了後、ツキノワグマの壮絶なブルーズを聞いた思いがした。クマというと、ヒッピー・ロック・バンド、グレートフルデッドのキャラクタであるビーンベアや絵本のプーさん、ぬいぐるみのテディー・ベアなどかわいいイメージがあるのだけど、日本では絶命の危機であるかもしれないのだ。著者の米田一彦さんはそんなクマたちのためにフィールドを駆けずり回り、考え抜く守護天使のような人なのだ。環境問題とかエコロジーなどという言葉で言われるのが歯がゆく、粗大ゴミのように扱われ刹処分されるクマたちの次には、ぼくたちの暗い未来があるのかもしれず、自然を蕩尽しつくし、生きものたちの命を粗末に扱うぼくたちにとって、クマたちの次にやられるのはぼくたち自身ではないかという暗い予感も覚えてしまう。

付け加えるに、マグロが本当に絶滅の危機に瀕しているのならば、ぼくは大好きなマグロの刺身や寿司を食べなくてもよい。

ニホンオオカミ、ニホンカワウソの歌は聞こえなくなり、そして、今、泣くように歌っているクマのブルーズを聞いたし、聞こえるのです。


日本ツキノワグマ研究所のホームページ
http://ha3.seikyou.ne.jp/home/kmaita/index.htm




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コンビニで禅の本を見かけて、買って読んでしまった。赤根祥道さんの著した「心が晴れる禅の言葉」という本。読みながら、こんな日常的に使っている言葉も禅に由来しているのかと思う。例えば、「無事」という言葉であったり、「去来」という言葉であったり、「主人公」という言葉であったり。けれども、それらではなく、この本に書かれているそれらの言葉による人生指南、生活の指針や心構えでもなく、こんな言葉のそのままが心に残った。

「紅爐上一点の雪」

「水を掬すれば月手にあり」

「一片の好風光」

活!

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この本には、半藤一利、保坂正康、中西輝政、戸髙一成、福田和也、加藤陽子の六人の作家、評論家、学者の方々による「あの戦争になぜ負けたのか」というテーマによる鼎談と「あの戦争に思うこと」というテーマでの6人の方々それぞれの短いけれど内容の濃い評論が書かれている。あの戦争とは第二次世界大戦のことで負けたのは日本という国。この本に書かれている日本という国の組織の中の人の動きを読むにつれ、近しい会社という組織などでも同じであるなどと思った。組織も人も無能であったのか? 戦略なき場当たり主義と海軍と陸軍の組織間の分裂。その組織を動かす士官たちの自己保身による嘘とごまかしによって死体が累々と積み重なる中、虚偽を発しつづけた当人は生き延び、戦後、国会議員になっていたりすることに驚く。そんな人、あなたの会社にもいませんか? 会社ではなく、国家間の戦争となると、直接的に人の生死の問題であり、罪は限りなく重い。保坂氏の発言から引用します。

「僕は長年、元兵士たちの声をかなり聞いてきましたが、インパール作戦に参加した人に会うと、みんな数珠を握りしめながら話すんです。インドからビルマへ、仲間たちの死体で埋めつくされた「白骨街道」を引き上げてきた無念の思いでしょう。
 そして牟田口司令官の名前が出ると、元兵士の誰もがブルブル身を震わせて怒るんです。「牟田口が畳の上で死んだのだけは許せない」とまで言いきります。前線にいたときは知らないけれど、戦後になって、牟田口が前線から離れた「ビルマの軽井沢」と呼ばれる地域で、ひたすら「前進あるのみ」と命令を出していたことを知る。しかも作戦の失敗を部下の師団長に押し付けて、自分は責任を問われぬまま生き延びたんですから」

同じく保坂氏の発言。

「前線の兵士だった人に、「なんであんなに懸命に戦ったんですか」と質問すると、主に学徒兵のインテリ層ですが、こう答える人たちがいるんです。「日本は一度、こういう無理な戦争をくぐり抜けなければ仕方ない運命なんだ。それを私たちの世代が引き受けているんだと理解していました」と。次の世代にこんな戦争をしてほしくないから、自分たちがやるしかない、と思ったというんですね」

この部分だけでも買って読む価値のあると思われる、深く心に残った戸髙氏の評論の「果たされなかった死者との約束」から引用します。

「自分は死ぬことのない立場で、他人に死を要求することの理不尽さは誰にも分かっていた。だからこそ、多くの指揮官は出撃する特攻隊員に「君たちだけを死なせない、自分も後から必ず行く」と訓示したのである」

この約束は、ほとんどは果たされることはなかった。

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NHK大河ドラマにあやかって世はいわゆる坂本龍馬ブームです。本屋に並ぶ龍馬関係の本の数々。そして、歴史ブームでもあるらしい。歴史好きの「歴女」という女子たちもいるらしい。そんな本屋の中で少なからず目立っていた「幕末史」という本を読んだ。おもしろくて一気に読めた。

半藤一利さんの書いたこの本は、何でも、反薩長史観で書かれているらしい。半藤さんは幕末をペリー来航の西暦でいうところの1853年から大久保利通が暗殺される1878年として切り取った。維新という言葉は使わず、これは下級武士による暴力革命だったと主張する。ちょうど四半世紀、25年間の間にさまざまな人物が登場し、生き生きと描かれ、主人公が目まぐるしく変わっていき、みんな若くして殺されたり、自害させられたりする。この日本の歴史の本当に近い過去にこのようなことがあったということが、それは驚くべき、恐るべきことだと思った。国難を救う、みんなのためだと言いながら、自分のため、小さな範囲の自分たちのためにすり変わっていく。

その25年の間に庶民は辛酸をなめた、もっと言えば、辛酸をなめつくしていたことも本書の一等後ろの方で書かれる。内乱と内戦とテロの25年間であったようなのだ。そう、テロ。むすびの章の題としてこう言われている。

「だれもいなくなった後|明治十一年(一八七八)参謀本部設立」

参謀本部とは軍隊において高級指揮官の作戦指揮を補佐するための合議機関のこと。これが天皇の直下の政府や内閣とは独立した機関として設置され、それが、1945年の第二次世界大戦での悲惨な敗戦までの間、日本が富国強兵の名のもと軍国主義にひた走る、その端緒であったと、半藤氏は主張し、この本は後書きを残すのみとなる。歴史って怖いね。

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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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