えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

entry_top_w.png

国立能楽堂で能楽の鑑賞をしました。狂言は「二九十八」の昔のおおらかな笑いです。能は「嵐山」。「嵐山」を見たぼくは、日本の桜の林や森では、春になり、桜の咲くとき、日本の男の神と女の神は、毎年若がえり、夫婦の儀式をし、「祝言」をあげていることは、決して疑えません。感動しました。シテの蔵王権現の仕舞の、ありがたき、かたじけなき日本の心のような詞章でございます。

 和光利物の御姿
 我本覚の都を出でて
 分段どうごの塵に交わり
 金胎両部の一足をひっさげ
 悪業の衆生の苦患を助け
 さて又虚空に御手を上げては
 たちまち苦海の煩悩を払い
 悪魔降伏の青蓮のまなじりに
 光明を放つて
 国土を照らし
 衆生を守る
entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

東京芸術大学の美術館で「大吉原展」を見て、午後の一時半ごろ鈴本演芸場の四月上席昼の部に参りました。古今亭春菊師匠の「お花半七馴れ初め(宮戸川の前半)」、入船亭扇遊師匠の「初天神」、姉さん方三人のだるま食堂のコント、柳家はん治師匠の「妻の旅行」で中入りとなりました。花渡家ちとせ師匠の浪曲「秋色桜」、林家正雀師匠の「猫の皿」、橘家圓太郎師匠の「親子酒」、アサダ二世さんの奇術、主任は金原亭馬生「紙入れ」で、その後、入れ替わり、立ち替わりの大喜利の春らしい高座舞でした。橘家圓太郎師匠の「親子酒」がなんだか印象に残りました。落語パラダイスですな。
entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

上野にある東京芸術大学の美術館で開催されている『大吉原展』を見に行きました。どうしても見たかった展覧会です。

近頃、好きな落語を聴きに寄席によくか通っているのですが、廓噺というジャンルさえあって、例えば、この前に聴いた鈴々舎美馬さんの二つ目昇進披露の公演での吉原を背景にした長講の「文七元結」がすばらしかった。そして、林家つる子師匠の自らの解釈と改作による「紺屋高尾」が、素晴らしいこと、限りなかったのです。

この『大吉原展』には江戸の世のもっともきらびやかな文化の発信地であった吉原遊廓の陽の要素の前提となる「苦界」とも呼ばれた負や陰の部分にも、監修者の江戸時代と文化の研究者である田中優子さんは光を当てるかのようで、素晴らしい。見学しているうちに、ぼくの耳には、林家つる子師匠の「紺屋高尾」の花魁、高尾太夫の「ここにあるものはあたしのものなんか何にもないんだよ」が響いてくるようです。

浮世絵に描かれた遊女や辻村寿三郎さんの花魁の人形を配した吉原のジオラマの素晴らしさ、美しさ。この展覧会で見つけた辻村寿三郎さんの吉原への言葉を引用させてください。

 華の吉原仲の町。
 悲しい女達の住む館ではあるのだけれど、それを悲しく作るのは、あまりに彼女達に惨い。
 女達にその悲しみを忘れてもらいたくて、絢爛に楽しくしてやるのが、
 彼女達のはなむけになるどろうと。
 男達ではなく、女達にだけに楽しんでもらいたい。
 復元ではなく、江戸の女達の心意気である。
 女の艶やかさの誇りなのだ。
 後にも先にも、この狂乱の文化はないだろう。
 人間は、悲しみや苦しみにもにも、華やかにその花を咲かせることができるのだから、ひとの生命とは尊いものである。
 私は、置屋の料理屋で育ったので、こうした苦界の女達への思い入れが、人より強いのかもしれない。
 辛いこと、悲しいこと、苦しいこと、冷酷なようだけれど、それらに耐えて活きているひと達の、なんと美しいことだろう。
 ひとの道に生まれてきて、貧しくても、裕福でいても、美しく活きる姿をみせてこそ、
 生まれてきたことへの、感謝であり、また人間としてのあかしでもあるのです。
 艶めいて、鎮魂の饗宴のさかもりは、先ず吉原の女達から・・・・・・

その技芸に富んだ遊女の生活とその過酷さ。公娼制度の廃止によるアンビバレントな負の部分。いろんなことを感じ、考えさせられます。ここで、この展覧会で知った松尾芭蕉の高弟、宝井其角の一句。

 闇の夜は吉原ばかり月夜哉

この句は、「闇の夜は、吉原ばかり月夜哉」と読んだときと、「闇の夜は吉原ばかり、月夜哉」と読んだときの二つの意味を有しているという。ぼくは歴史の向こうに消え去り、弥陀の本願の岸辺で眠る遊女たちの平穏を祈るばかりです。

それから、三千五百円のすこし値のはる図録もすばらしかった。全オールカラーの大きく分厚い本は吉原研究の集大成のようでもあります。

大吉原展
entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

恩田川の桜が満開です。吟行して、詠んだ俳句が五句。

 桜咲きやさしき笑顔恩田川

 桜咲く川のほとりでワイン開け

 桜咲きそぞろ歩きと川の音

 人はみな桜の咲くのを喜ばん

 桜の枝向こう岸まで届かんとす(枝:え)
entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

八王子市夢美術館で『川瀬巴水 旅と郷愁の風景』を見ました。川瀬巴水のいわゆる新版画を鑑賞していると、なんともいえないような懐かしさを感じて、なんだか泣きたいような気持ちになります。柄谷行人さんは、その著書『日本近代文学の起源』で近代になり初めて日本人は「風景」を発見したというけれど、ぼくの川瀬巴水の版画を見ての感情の高ぶりも、その近代人の「風景」の発見によるのだろううか、などと考えます。むしろ、川瀬巴水の「風景」とは一瞬にして風のように過ぎ去る景色なのではないかしら? 川瀬巴水は旅の名所よりもありきたりな景色を好んだといいます。その余情はすぐれた俳句のようでもあって、あー、それこそが「風景」なんだと、せんかたないことを考えてしまいつつ、なんでもない夕暮れの風景の薄明かるい窓や寂しげな人影に、なんだか、ぼくは泣きたくもなるのです。
entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

町田市国際版画美術館に『版画の青春 小野忠重と版画運動 ―激動の1930-40年代を版画に刻んだ若者たち―』を見に行きました。

この展覧会の大きなテーマである戦前から戦争期の小野忠重の主導した版画運動に、ぼくは何だか「ナロードニキ」という言葉を思い出す。「ナロードニキ(narodniki)」というロシア語を訳せば「人民の中へ」となり、「人民」とは貧しい農民な工場労働者のことで、たしか、五木寛之さんの昔の小説だかエッセイだかで知った言葉で、ロシア革命の時のスローガンであったと記憶しているのだが、青春を鼓舞するスローガンはあらぬ方向へと流され、実践と現実に負けてしまう。小野忠重たちはどうだったのだろうか?

残された版画はあるものは苦悩に満ちて美しく、あるものは清澄に美しく、それぞれなのだが、彼らがあからさまな戦争協力の作品を残さなかったのはよいことのような気もした。戦前、戦中、戦後を生きていくとはどういうことだろう? これからの日本が永久に戦後であることを願うばかりです。
entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』を見ました。「原爆の父」とも呼ばれるロバート・オッペンハイマーその人を、二つの事件、原爆開発の「マンハッタン・プロジェクト」と「レッド・パージ(赤狩り)」を軸に描いています。

この映画のもっとも大きなテーマは原爆を開発し、それを日本の二つの都市、広島と長崎に投下されたことのオッペンハイマー博士の苦悩であることは間違いありません。オッペンハイマーの一人称的な物語のこの映画には、実際の広島と長崎は直接は描かれていないのだけれども、戦後、原爆を開発した博士の心の闇と狂気は広がっていくかのようなのです。ついにオッペンハイマーは科学者の良心に断罪され、世界の暗い絶望の未来すら悪夢の中にほのめかされる。

ハリウッド的なエンターテイメントの向こうに、クリストファー・ノーラン監督は自分の国の加害ということについてに、アメリカの映画史上、初めて向き合っているようで、ある種、アメリカの歴史の中でも画期的な映画でもあると思いました。

映画のエンドロールを見ながら、ぼくは、広島と長崎の原爆の被害による死者を哀悼の祈りを捧げ、世界は二度とこのようなことを繰り返さないであってくれと願います。

映画『オッペンハイマー』公式|3月29日(金)公開
entry_bottom_w.png
<< 前のページ 次のページ >>
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6]  [7
plugin_top_w.png
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 3 6
8 9 10
14 15 18 19 20
22 23 24 25 26 27
28 29 30
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
えいちゃんのお奨め

ライブのお知らせ

ぼくのTwitter

plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
最新コメント
[12/23 ロンサム・スー]
[07/27 gmail account]
[08/29 えいちゃん]
[08/29 みさき]
[05/18 えいちゃん]
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
ブログ内検索
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
最新トラックバック
plugin_bottom_w.png
Copyright えいちゃん(さかい きよたか) by えいちゃん All Rights Reserved.
Template by テンプレート@忍者ブログ