えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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加藤直樹さんの著した「九月、東京の路上で」を読む。

副題である「1923年関東大震災ジェノサイドの残響」が表しているように、90年前の東京や横浜が、つい近年のルアンダやボスニア・ヘルツェゴビナで立ち現われたような残虐さで市民がもう一方の市民、マイノリティたちを一方的に殺害し、その多くの殺人者がほとんどまったくといってもいいような何の罪にも問われないという信じられない光景が現れたという。

この本の前半は本当に読んでいて、苦しかった。後半に書かれていたほんの少しの良心が輝いていた。

そうだ、この本でも紹介されていたぼくの好きな民俗学者であり詩人であり国文学者でもあった折口信夫の「砂けぶり」を引用します。

「焼け原に 芽を出した
ごふつくばりの力芝(チカラシバ)め
  だが きさまが憎めない
  たつた 一かたまりの 青々した草だもの

両国の上で、水の色を見よう。
せめてもの やすらひに─。
身にしむ水の色だ。
  死骸よ。この間、浮き出さずに居れ

水死の女の 印象
黒くちゞかんだ 藤の葉
よごれ朽(クサ)つて 静かな髪の毛
─あゝ そこにも こゝにも

横浜からあるいて 来ました。
疲れきつたからだです─。
そんなに おどろかさないでください。
朝鮮人になつちまひたい 気がします

深川だ。
あゝ まつさをな空だ─。
野菜でも作らう。
この青天井のするどさ。

  夜になつた─。
また 蝋燭と流言の夜だ。
  まつくらな町で 金棒ひいて
  夜警に出掛けようか

井戸のなかへ
毒を入れてまはると言ふ人々─。
われわれを叱つて下さる
神々のつかはしめ だらう

かはゆい子どもが─
  大道で しばつて居たつけ─。
  あの音─。
   帰順民のむくろの─。

命をもつて 目賭した
一瞬の芸術
苦痛に陶酔した
涅槃の 大恐怖

おん身らは 誰をころしたと思ふ。
  かの尊い 御名(ミナ)において─。
  おそろしい呪文だ。
   万歳 ばんざあい

我らの死は、
涅槃を無視する─。
  擾乱(ジョウラン)の 歓喜と
  飽満する 痛苦と」

折口は、人間の凄まじさあさましさを痛感した、此気持ちは三カ月や半年、元通りにならなかった、と述懐している。ぼくたちはこれを繰り返さないようにこれを忘れないほうがいい。ぼくたちは違う人間同士、手を結び合ったほうがいい。そして、寂しさに泣くほど、しばしば孤独であったほうがいいのかもしれない。








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