えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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物語には二つの型があると聞いたことがあるのでけど、一つはとても有名な「起承転結」で、もう一つは「序破急」。ハンガリーの現代作家、アゴタ・クリストフの「ふたりの証拠」は「悪童日記」に続いての二作目で序破急の破にあたるもの。

「悪童日記」の簡潔で乾いた独特の装飾のない文体はそのままに、語りは一人称から三人称になり、「悪童日記」が掌ほどの短い日記のような数ページを無数に集めたような小説だったのから変わり、「ふたりの証拠」では八つの短編の集りかのようで、三人称のその文体から、ぼくは、ヘミングウェイを超え、初期の丸山健二の研ぎ澄まされた文体を思い出したもした。

書かれている内容は、あの中上健次の最も豊饒であった「岬」から「地の果て至上の時」のあたりの小説をぼくに思い出させ、それは重く深く、昔、十代のころ、中上健次の小説を読んで、今の日本にこんなところ、まさしく土地、中上曰く「路地」があるのかしら、などと思ったことを思い出した。アゴタ・クリストフの小説からもヨーロッパにこんなところがかつてあったのだろうかと訝しく思ってしまうのだけれど、そこはヨーロッパの真ん中の平原に出没したすべてを飲み込んだこともある穴のようなハンガリーという土地のようなのだった。

この「ふたりの証拠」では所謂東側、ソビエト連邦の衛星国のようになってしっまいながら、ハンガリーのコミュニティーが少しづつ朽ちていく、そんな状況も描いているのだけど、ハンガリーの人々はそれでもすべてを手放しはしなかったのだとも、思う。抑圧されたソビエト社会主義、その昔、スターリンが作ったそれの内側からのレポートとしても読めもし、それはあくまでも内側からの日常のレポートに徹し、その崩壊の糸口となったハンガリー動乱には触れていないのだけれど。

ひさびさに文学に触れたという気がした「悪童日記」と「ふたりの証拠」に続き、完結となる三作目「第三の嘘」も読むぞ。






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えいちゃん
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音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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