えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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神奈川県下の朝日新聞の記者たちが共同で著した「妄信 相模原障碍者殺傷事件」を会社帰りのドトールで一気に読んだ。そうか、今日はその日から一年目の日だったのか。

この本を読んで、1996年まで日本には優生保護法が立法されていた、そんなまがまがしい国でもあるのを知る。被害者が一度も実名で報道されないことに差別が深く日本の社会を蝕んでいることも知る。残忍な加害者を産んだ責任はぼくたちにもあり、ぼくにもあるような気がする。

障害者の子を持つ父親の神戸金史さんが事件の3日後のSNSに投稿した言葉がこの本にも載っていた。長文ですが引用します。

「私は、思うのです。

長男が、もし障害をもっていなければ。

あなたはもっと、普通の生活を送れていたかもしれないと。

私は、考えてしまうのです。

長男が、もし障害をもっていなければ。

私たちはもっと楽に暮らしていけたかもしれないと。

何度も夢を見ました。

「お父さん、朝だよ、起きてよ」

長男が私を揺り起こしに来るのです。

「ほら、障害なんてなかったろ。心配しすぎなんだよ」

夢の中で、私は妻に話しかけます。

そして目が覚めると、いつもの通りの朝なのです。言葉のしゃべれない長男が、騒いでいます。何と言っているのか、私には分かりません。

ああ。またこんな夢を見てしまった。ああ。ごめんね。

幼い次男は、「お兄ちゃんはしゃべれないんだよ」と言います。いずれ「お前の兄ちゃんは馬鹿だ」と言われ、泣くんだろう。想像すると、私は朝食が喉を通らなくなります。

そんな朝を何度も過ごして、突然気が付いたのです。弟よ、お前は人にいじめられるかもしれないが、人をいじめる人にはならないだろう。

生まれた時から、障害のある兄ちゃんがいた。お前の人格は、この兄ちゃんがいた環境で形作られたのだ。お前は優しい、いい男に育つだろう。

それから、私ははたと気付いたのです。あなたが生まれたことで、私たち夫婦は悩み考え、それまでとは違う人生を生きてきた。

親である私たちでさえ、あなたが生まれなかったら、今の私たちではないのだね。

ああ、息子よ。

誰もが、健常で生きることはできない。

誰かが、障害を持って生きていかなければならない。

なぜ、今まで気づかなかったのだろう。

私の周りにだって、生まれる前に息絶えた子が、いたはずだ。生まれた時から重い障害のある子が、いたはずだ。

交通事故に遭って、車いすで暮らす小学生が、雷に遭って、寝たきりになった中学生が、おかしなワクチン注射を受け、普通に暮らせなくなった高校生が、嘱望されていたのに突然の病に倒れた大人が、実は私の周りには、いたはずだ。

私は、運よく生きてきただけだった。それは、誰かが背負ってくれたからだったのだ。

息子よ。君は、弟の代わりに、同級生の代わりに、私の代わりに、障害を持って生まれてきた。

老いて寝たきりになる人は、たくさんいる。事故で、唐突に人生を終わる人もいる。人生の最後は誰も動けなくなる。

誰もが、次第に障害を負いながら生きていくのだね。

息子よ。

あなたが指し示していたのは、私自身のことだった。

息子よ。

そのままで、いい。

それで、うちの子。

それが、うちの子。

あなたが生まれてきてくれてよかった。

私はそう思っている。父より」

神戸さんは神奈川県警が実名を公開しなかったことをとても問題視しているという。神戸さんはの言葉。

「県警は無意識のうちに、『障害者は特別である』というメッセージを発信してしまった。結果的には植松容疑者と同じ心理だ」

むしろ、そういうふうに県警に仕向けているいるのは、善良な一般市民などと呼ばれるぼくたちであり、ぼくではなかろうかと思うと心にいたたまれないいやな灰色が広がるようでもあるのだ。

シベリア抑留でいくにんもの死を見てきた詩人の石原吉郎が大量殺戮について述べた言葉。

「人は死において、ひとりひとりその名を呼ばれなければならないものなのだ」

差別や偏見、優生思想、同調圧力、みんな、いやだな。けれども、それがぼくの生きる社会にはたくさんはびこっている。

すべからくよく見てみれば、あー、みんな、ひとりぼっちのよそものなんだ、そう思うと心が少し安らぐよ。それからだよ、手をつなごう。





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たしか、初めて「星の王子さま」を読んだのが、高校生のころで、何度目の王子さまとの再会となるだろうか? 昔は、もっと単純な小説だと思っていたのだけれど、今、読むと、いろんなことが書いてあるような気がした。

そういえば、昔、NHK教育、いわゆる3チャンネルで「若い広場」という番組があって、その中のいろんな作家が自分の好きな本を何冊か、紹介するというコーナーで、中上健次が紹介したのが「星の王子さま」だった。ぼくは中上健次の小説が大好きだったから、すぐに読んでみたのが最初だったと思う。中上健次はこんなことを言っていました。

「ある意味で非常に恥ずかしいんだけどね…恥ずかしいんだけれど、やっぱり自分の一冊の本ていうとこれ(星の王子さま)を言いたいですね。

想像力を一番解放するジャンルの作品だと思うわけです。非常に透明な部分というのが、子供の心も打つし、大人が深読みもできるというのは、ちょっと稀有な本だと思うんです。

本当の気持ちを伝えたいという欲求がある…、童話はいっぺん書いてみたい。」

中上さん、童話なんか書かなくて、あっさり逝っちゃったな。それから、この番組の中で司会役をつとめていた斎藤友子さん、かわいかったな。

いまでも、ぼくの心の中のどっかに星の王子さまが隠れているみたいで、ふと思い出して、会いたくなってしまうんだ。「星の王子さま」、読んだことのない人にはお薦めです。あなたの世界を変えるかもしれません。


発掘ニュース|NHKアーカイブス 番組発掘プロジェクト - NHKオンライン





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栗原康さんの著した「死してなお踊れ 一遍上人伝」を読んだ。講談調の文体で書かれた鎌倉時代の僧、時宗の開祖、一遍は数十人の引き連れて、踊念仏を唱え、生涯、旅に生きた人。その現代に書かれた伝記には、何度も何度も、踊っちまいながリフレインされる。

そう、昔の日本にP-FUNKやJBSのファンクがあったのだ。日本国中を念仏を歌い、踊ってまわった僧伽たちです。ジョージ・クリントンかジェームズ・ブラウン、はたまた、この坊さまはGreatful Deadのジェリー・ガルシアか、サン・ラ、ボブ・マーレイ、それよりも、さらにさらに、地に足を付けながら、飛び跳ねて、時計の反対まわり、踊って、わけのわからん空の高みに行ってしまっているのかも。

一遍はこんな和歌も残している。

「となふれば 仏もわれも なかりけり 南無阿弥陀仏の 声ばかりして」

さらにはつきぬけて、

「となふれば 仏もわれも なかりけり 南無阿弥陀仏 なむあみだ仏」

だから、踊っちまいな。





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「慨世の遠吠え 強い国になりたい症候群 内田樹 対談 鈴木邦夫」につづき、「慨世の遠吠え2 呪いの時代を越えて 内田樹 対談 鈴木邦夫」も読んでしまった。お二人のお話、一冊目の慨世の遠吠え」に比べ、さらにフランクになっておもしろい。鈴木さんがつっこみ役で内田さんがぼけ役といったところ。さて、そんなこの本の中で話しておられる内田さんのものの見方。

「僕は左翼右翼という識別法というのはあまり使わないんです。「いい人」「悪い人」で判断します」

それから2頁ほどこの話の理由が語られます。

内田さんはあまり外に出ない人のようです。なんでも、武士は用のないところには行かないを実践しているらしい。怖いこの世の中、ぼくも見習おうかなと、ふと思います。つまらない人には会わないとかね。

二人とも心のやわらかい武士ですな。二人とも柔道と合気道の高段者だし。一冊目の「慨世の遠吠え」にあったのだけど、合気道は相手がつかんだら投げるのではなく、相手につかませて投げるのだそうですよ。お気を付けなさいまし。






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「慨世の遠吠え 強い国になりたい症候群 内田樹 対談 鈴木邦夫」を読了した。かたや思想家、かたや活動家のお二方の共通点は武道家であることらしい。このお二方、天下国家についても論じているけれど、合気道のことも一章、五十頁をさいて話し合っていて、それが一番、ぼくにはおもしろかった。

内田樹さんいわく、合気道には「戦わない教え」というのがあるらしく、神戸に自らの道場を持ち師範も務める内田さんが大先生と呼ぶ合気道の開祖、植芝盛平は先の大戦で兵士たちに合気道を教えて欲しいと軍部に頼まれ、それをきっぱり断り、戦中は自らの意志で武道の世界から離れてしまっていたらしい。そういう人ってかっこいいと思う。

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中村元さんの著した「ブッダ伝 生涯と思想」を読了した。ブッダの生涯に即し、仏教の原始経典を解き明かした本。何度も読みながら、うとうとと眠たくなってしまう。けれども、自らの死期を察し、ブッダが随分、年の離れた弟子、アーナンダに人生は楽しいと言った言葉には感じいってしまった。引用します。

「アーナンダよ。ヴェーサーリーは楽しい、ウデーナ霊樹の地は楽しい。ゴーダマカ霊樹の地は楽しい。七つのマンゴーの霊樹の地は楽しい。バフブッタの霊樹の地は楽しい。サーランダダ霊樹の地は楽しい。チャーバーラ霊樹の地は楽しい。
 世界は美しいもので、人間の生命(いのち)は、甘美なものだ」

中村元さんは、ブッダは「善を求めて」出家したのであり、善でも悪でもない「さとり」を求めて出家したのではなくと解説され、ブッダは臨終の時ににこのようなことを弟子のスバッダに言ったそうです。引用します。

「スバッダよ。わたしは二十九歳で、何かしら善を求めて出家した。スバッダよ。わたしは出家して五十年余となった。
 正理と法の領域のみを歩んで来た。これ以外にには<道の人>なるもは存在しない」

そうだったのか。なるほど。そんなブッダとはどんな人だったのだろう。

「アーナンダよ。そうではない。そうではない。善き友をもつこと、善き仲間のいること、善き人々に取り巻かれていることは、清浄行の全体である」

「それ故に、あなたは学ばなければなりません。―「われは善き友となろう。善き仲間となり、善き人々に取り囲まれるようになろう」と」

仏教思想・インド哲学の第一人者はこの本で「善き友、ブッダ」と書いておられました。そして、最後の言葉。

「もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成なさい」






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宇沢弘文さんの著した「人間の経済」を読んだ。

この本のの序に書かれているのだけど、1983年のこと、文化功労者に宇沢さんが選ばれて、宮中での記念行事に招かれ、天皇制に違和感を持ちつつ、昭和天皇を前のしてすっかり舞いあがり、しどろもどろに自分の仕事について説明をしたそうです。天皇陛下が宇沢さんにおっしゃった言葉は、その後の勇気づけになったそう。

「君! 君は経済、経済というが、つまり人間の心が大事だと、そういいたいのだね」

成田空港問題の解決に向けて力をかしてほしいと宇沢さんに言った自民党の後藤田正晴さんの言葉も興味深い。

「自民党の幹部の中に『成田の問題は国家の威信にかかわる重要な問題だ。軍隊を投入して一気に解決すべきだ』という声が高まっていて、もう防ぎきれない。危機的状況だ。今まで運輸省から言われるので、立場上、警察を成田に投入してきたが、その結果として数多くの農民を傷つけ、地域の崩壊をもたらしてしまった。警察の威信はまさに地に堕ちた。今後、成田空港の問題を社会正義にかなうかたちで解決すべく真剣な努力をしないままでは、とても立ちいかない」

一方、左翼のシンパだと思われて、中国に招かれ、中国共産党にこんな題の報告書を宇沢さんは提出したそうです。

「資本主義的な搾取には市場的限界があるが、社会主義的搾取には限界がない」

これに理解を示し、弁護した趙紫陽は天安門事件とともに失脚し、亡くなるまで自宅軟禁されることになる。

「人間の経済」をぼくは社会的共通資本をとく経済学の本というより、アメリカの理想主義の滋養されたリベラリズムと破局的な日本の敗戦がもたらした末に得ることのできたヒューマニティ、この二つのために人生を歩んできた巨人のラスト・メッセージが書かれた大切な教科書であるかのように読んだのです。




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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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