えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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鈴木邦夫さんの著した「愛国者は信用できるか」を読んだ。この人、昔はばりばりの右翼武闘派だったのは菅野完さん著した「日本会議の研究」を読んで知った。三島由紀夫や野村秋介に置いてきぼりにれれたという思いはずぶんあるようだ。鈴木邦夫さんは穏やかになりました。

右翼と左翼という言い方があるけれど、最近の横尾忠則さんのインタビューでぼくは右翼でもあり左翼でもあるというようなことを言っていて、なるほど、そうだろうなと思った。河合隼雄は魂とは何かと問われ、線引きするとなくなってしまうものと答えていた。それは、右と左を線引きすということでもあるように思える。というようなことをこの本を読みながら、つらつらと考えていた。ぼくは、日本の昔のものとか、かなり好きで、しょっちゅう神社や寺に参っていたりする。ある時、誰かがぼくに言っている声が聞こえた。

「国なんか愛せないぞ。人民なんか愛せないぞ」

するともう一人の誰かがぼくに問いかける。

「そんな人生、むなしくはないかい?」

ぼくは答える。

「むなしくても、寂しくてもそれがいいんだよ」

そんなぼくが敬意を込めて鈴木邦夫さんの言葉を引用します。

「愛国心は国民一人一人が、心の中に持っていればいい。口に出して言ったら嘘になる。また他人を批判する時の道具になるし、凶器になりやすい。だから、胸の中に秘めておくか、どうしても言う必要がある時は、小声でそっと言ったらいい」

この本には鈴木邦夫さんの日本への、天皇陛下への恋闕があるように思いました。





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深沢七郎の「楢山節考」を読んだ。何度目かの「楢山節考」になるだろうか。読むたびに何かを感じさせてくれる。

昔、深沢七郎さんに会いに、深沢さんが自給自足生活をしていた埼玉のラブミー農場に行ったことがある。深沢七郎さんは「楢山節考」を昔のお経か何かのような巻き物の形で出版したいと言っていた。ぼくが読んだのは新潮社文庫版で他に「月のアペニン三」、「東京のプリンスたち」、「白鳥の死」を所収。

「東京のプリンスたち」も「楢山節考」と表裏をなす名作で、同じ主題を「楢山節考」では死の側から謳ったものだとすれば、「東京のプリンスたち」は生の側から謳ったものだというような気がする。

「白鳥の死」は深沢七郎が恩義と敬意を感じていた正宗白鳥の死についての短編で、深沢さんの生と死に関する見方が色濃くあらわされた一篇で、そこで「楢山節考」の主人公のおりんにはキリストと釈迦の両方ともはいっているつもりと書かれている。そうか、「楢山節考」はお経でもあり、聖書でもあったのか。

永遠の名作です。




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奥野修司さんの著した「魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く」を読んだ。

悲しく、寂しい聞き書き集なのだけど、なぜか心がほっこり暖かくなるのは、霊となって現れた死者たちのやさしさと、生きている人たちの逝ってしまった人への深い思いによる。これらの聞き書きした話は奥野修司さんも書いているようにもう一つの現代に現れた「遠野物語」のようでもあるかのようだ。これらの物語は柳田國男が書いた「遠野物語」の第九十九話の時を隔てた補遺なのかもしれない。それは科学の網では掬えない魂の物語でもあるかのよう。

この前、読んだ大城道則さんが編著した「死者はどこへいくのか 死をめぐる人類五〇〇〇年の歴史」にもあるような、日本人の彼岸観、あの世に対する見方を思う。日本人にとってあの世とは、空の上の天国にあるのではなく、大きな河に隔てられているところでもなく、三本川の草履でも履いて、小石をつたって渡れそうな近くにあるところのようなのだ。

ぼくも震災の年に人ではないけれど、その年の十月に愛犬を亡くし、その犬に再会するたくさんの夢も見たのだけど、あのレオも遠いところに旅立ってしまったのではなく、ちょっと散歩に出て、帰りが遅れているだけなのかもしれない。そして、そのうちぼくも散歩に出かけるように会いにいくのだけなのかもしれない。

その近しさは、昔、読んだアイルランドの小説家、ジェイムズ・ジョイスの短編「死者たち」に出てくる描写「死者たちにも生きている人たちにもひとしく雪は降っていて、この世界を白くおおいつくす」にあるような近しいそれで、それは「魂でもいいから、そばにいて」の書かれなかった「冬の旅」の章ではなかろうか。

奥野修司さんのいうように、人とは物語を生きる生きもので、多くの東北の人が死んでしまった人と生きている人をわけ隔てない、そんな物語を生きていて、それは愛のことのよう。「愛」は「遭い」や「会い」や「合い」のことでもあるのではないかしら。






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大城道則さんが編著した「死者はどこへいくのか 死をめぐる人類五〇〇〇年の歴史」を読了した。

この本は太古の昔から現在まで、人類が死というものと考えてきたのかを、書き表したもの。読み物というより、研究者が書いた学術論文で、少し難しい。

大城道則さんが「はじめに」と「あとがき」と古代エジプトの死生観、 月本昭男さんが旧約聖書の死生観、松村一男さんがギリシア・ローマ時代の死生観、菊地達也さんがイスラム教の死生観、久恒晃代さんがインドの死生観、設楽博己さんが日本の先史時代の死生観、伊藤由希子さんが古代日本人の死生観、竹内整一さんが近代日本人の死生観を書いた。

やはり日本人の死生観に親しみを感じてしまいます。伊藤由希子さんの書いた平安時代初期の「日本霊異記」の世界が深沢七郎の「楢山節考」に結節していくところが興味深く、さらに、竹内整一さんの章に出てくる近代の仏教思想家、金子大栄が親鸞の「歎異抄」の註解で述べた「花びらは散る 花は散らない」を美しいと思ったのです。





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小川洋子さんの著した「博士の愛した数式」を読了した。おもしろかった。

数学の博士、家政婦さんと彼女の子どもである十歳になる男の子のこの物語を読みながら、ふと友だちのもと数学教師の彼を思い出した。子ども好きな彼がもっと齢をとれば、この物語の老数学者のようになるのではないかと想像してみた。それは、ちょっぴり楽しい想像でもあった。

三人を結びつかせているのは数学の数式、数でもあり、阪神タイガースなのでもあり、三人の胸の奥にある純真さのようなものが暖かい。

阪神タイガースのエース、江夏豊の背番号は28で、それは完全数だというのがこの小説に出てくるけれど、ぼくの大好きなシカゴ・ブルズのマイケル・ジョーダンの背番号は23だった。数学としてはどういう数字なだろう?






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コンビニで見かけ買ってしまった「水木しげる傑作選 ヒットラー」を読む。なかなかの力作です。水木しげるは妖怪ものだけではありません。

ヒットラーの人生を知りました。

国の頂点に立派な人が就くのではなく、その真逆である最悪な人間が就くことも、多くの歴史が繰り返してきたこと。そして、そのような人を人々が支持もしてきて、気が付けば果てしない廃墟がそこに残ってしまう。

かっこいいことを言うやつらに気を付けろ!

水木しげる傑作選 ヒットラー|水木プロダクション公式サイトげげげ通信





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「太田和彦のニッポンぶらり旅2 故郷の川と城と入道雲」を読んだ。太田和彦さん、昼は史跡や古い街並み、夜は居酒屋を巡る旅の記録、随筆なのだけど、東日本大震災の後のその旅は、大災害、天変地異は起こり得ることを知ってしまったから、その眼差しはいつしか、やさしく丁寧になる。東北の地は訪ねておらず、むしろ、おのずと足は出自、故郷、育ててくれた地に向かい、そこに希望や和解を見いだした。感動の一篇です。あとがきから引用させていただきます。

「私は、旅は気持ち次第と感じるようになった。今見ているこの風景は無くなるかもしれないと思うと、心は澄み、まなざしは丁寧に温かくなる。それはまた旅のみならず、毎日の日常もそうだ。まさに「人生は旅」と気づいたのだ」

それから、ぼくはこの本を読んで、すこし前に旅に訪れた上諏訪のとある居酒屋でであった楽しくさわやかで気取らない紳士は太田和彦、その人であると強く信じるようになったのだ。出会う人、会いたい人には、いつか、出会うべき時に出会うのだと思う。それも旅なのです。






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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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