えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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VODで小津安二郎監督の『晩春』を見ました。1949年の日本映画です。

小津の「紀子三部作」と呼ばれる映画の中でもっとも古く、第一作目であります。ちなみに「紀子三部作」のほかの二つは『麦秋』と『東京物語』で、原節子が「紀子」という役を演じています。小津映画の決まりごとのような笠智衆は、『晩春』では紀子の父を、『麦秋』では紀子の兄を、『東京物語』では紀子の義理の父を演じています。

映画を見ながら、『晩春』の舞台の鎌倉や紀子と紀子の父の周吉の旅行する京都はアメリカに空襲でやられなかったところなのか、と思いました。紀子が自転車で爽やかに走る七里ヶ浜の道のシーンには英語の看板がたくさん映されます。二度も従軍した小津は敗戦を以外にもきわめてドライに受容したのかもしれません。

紀子と父が能を見に行くその舞台にかかっているのは「杜若(かきつばた)」で、在原業平と死に別れて杜若の精となった女の悲しい恋情が舞われております。その能の観劇のシーンで紀子が父と再婚することを疑う未亡人を見る目つきは般若のような異様な怖さなのです。

親子の最後の京都旅行の寝床で壺が映される不思議さは、さまざまな批評がされつくされておりますが、平山周吉さんの論考の戦争で亡くなった小津の盟友の山中貞雄の監督作の『丹下左膳余話 百万両の壺』の壺であることをもっとも重要なこととして付け加えたく、思う次第です。

紀子の着物の嫁入り衣装が、ぼくにはなぜか、死装束にも見えました。

『晩春』は語りつくせぬ名画であります。
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国立能楽堂にて能楽を見ました。狂言は大蔵流『萩大名』、能は喜多流『楊貴妃』でした。

『萩大名』はこんな話。和歌を読ませるという邸宅に訪問するという大名に太郎冠者は「七重八重九重とこそ思ひしに十重咲き出づる萩の花かな」という歌を授けますが、覚えの悪い大名が失敗ばかりします。落語の粗忽者噺のルーツであるような気もしました。

『楊貴妃』は白楽天の「長恨歌」を基にした、政変により、玄宗によって悲劇の死となった楊貴妃の蓬莱の黄泉の国で一人暮らす、寂しく悲しい曲。この曲の途中から客席のいろんな席からすすり泣きが聞こえていました。真後ろの一列にほぼ外国人ばかり、多分、アメリカ人が座っていたのだけれど、そこからも誰かのすすり泣きが聞こえます。ぼくも、中国由来の曲から日本人の精神性のもっとも美しい能の精髄を感じさせる舞台に感動した次第です。素晴らしかった。
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黒澤明監督の『野良犬』をVODで見ました。1949年の日本映画です。この先輩と後輩の刑事の物語は、アラン・パーカー監督の『ミシシッピー・バーニング』のようではないか。『野良犬』の志村喬の演ずる先輩の佐藤刑事が『ミシシッピー・バーニング』のジーン・ハックマンの演ずるルパート・アンダーソン捜査官で、『野良犬』の三船敏郎の演ずる後輩の村上刑事が『ミシシッピー・バーニング』のウィレム・デフォーの演ずるアラン・ウォード捜査官のようです。もちろん元祖は『野良犬』の方ですな。そのような志村喬と三船敏郎の兄弟のような、親子のようなコンビがとてもいいし、ラインダンサーを演ずる淡路恵子もなかなかです。

ラインダンサーの踊る怪しげな場末のある闇市のシーンはセットではなく、ロケをしたシーンも多いそうで、とてもリアルです。とても退廃し、淀んだ戦後の日本の街というものを感じてしまい、そのような中で、敗戦国の日本の戦後を生きる日本人の悲しみも、この映画にはあるような気もしました。そして、この『野良犬』という映画の映像の構図は、すべてフレッシュでスタイリッシュでかっこいい。フランスの1950年代の席捲した所謂「フィルムノワール」と呼ばれるギャング映画の元祖ともいわれる黒澤の『野良犬』です。
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六月三十日、新宿末廣亭で令和七年六月下席昼の部でした。いつものように見た演目を書き出してみます。前座の柳家小きちくんの「金明竹」、二つ目の柳家小もんくんの「強情灸」、二つ目の林家ぽん平くんの「松竹梅」、小林けん太さんの音まね、柳家平和師匠の「死ぬなら今」、鈴々舎馬るこ師匠の「夢の国コブシーランド」、遠峰あこさんのアコーディオンと歌、三遊亭武蔵丸師匠の「不精床」、吉原朝馬師匠の「松山鏡」、江戸家猫八師匠の動物物ものまね、柳家さん喬師匠の「替り目」、柳家小満ん師匠の「宮戸川(お花半七馴れ初め)」で仲入りとなりました。柳家海舟師匠の「三方一両損」、林家楽一師匠の紙切り、古今亭志ん輔師匠の 「ふぜいや」、林家正雀師匠の「鼓ヶ滝」、鏡味仙志郎師匠と鏡味千成師匠のお二人の太神楽、主任は柳家小里ん師匠の「三人兄弟」でした。

柳家小もんくんの「強情灸」がよかったね。三遊亭武蔵丸師匠の「不精床」のなりきりようがとても笑えます。柳家さん喬師匠の「替り目」の正統の古典落語がうれしい。柳家海舟師匠の「三方一両損」は大岡越前も登場するの気持ちのいい政談もの。主任は柳家小里ん師匠の「三人兄弟」の絶妙な落ちになるほどと納得します。

暗いこの世のつらさ忘れ、寄席は心のオアシスなのです。
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ディーン・フライシャー・キャンプ監督の『リロ&スティッチ』を見ました。ディズニーの子ども向けアニメを実写化したものだそうです。

テーマは「OHANA」。「家族」のハワイ語が「OHANA」だそうで、宇宙の遠くの星で遺伝子操作で作られた知能の高い動物が宇宙船を自ら操って、ハワイに不時着し、いろんな騒動をまきおこし、父親と母親を亡くした姉妹と家族となるという物語。主人公の妹のリロを演ずるマイア・ケアロハの自然児ぶりがかわいい。それにもまして、奔放な犬みたいな暴れ者の宇宙の動物のスティッチがかわいい。そのスティッチがあるとき目覚め、心という不思議なものをを獲得するかのようなのです。そんな二人にあたふたとする姉のナニを演ずるシドニー・アグドンはシンガーのアリシア・キースにどことなく似ているのが気になります。

ハワイってこんなところでもあるのかと、旅に心が誘われるかのようでもあります。そして、素敵なハッピーエンドに、映画館につめかけたたくさんの小学生と同じく、ぼくの心はうばわれたかのようなのです。

実写映画『リロ&スティッチ』公式サイト
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早川千絵監督の『ルノワール』を見ました。こういう映画を見ると、フランソ・トリフォーの『大人は判ってくれない』を思いだしてしまう。『ルノワール』と『大人は判ってくれない』のラストは真逆なのだけれど、どこか同じような気もするのです。

お父さん役をリリー・フランキーさん、お母さん役を石田ひかりさんが演じています。石田ひかりさんがいい。小学生の子役の鈴木唯ちゃんがさらにいい。

舞台となっている時代は1980年代の初めのほうだというのは、林間学校でみんなでYM0の「ライディーン」をかけて踊るシーンから分かります。

子どもの頃、誰もがこの映画のような喪失を経験するような気もするのだけどどうだろう? その喪失感こそが、なぜか、これからの人生を人間らしく生きていく糧となるような気もするはどうしてだろう?

映画『ルノワール』公式サイト|絶賛公開中
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横浜のKアリーナで竹内まりやさんのコンサートを見ました。「Souvenir 2025 Mariya Takeuchi live」と題されていて、十一年ぶりのコンサート・ツアーだそうです。コンサートのタイトルの「Souvenir」とは「お土産」という意味らしい。十一年分のお土産ですな。

バック・バンドは山下達郎さんをリーダーとする腕達者で息の合った面々での完璧な演奏と山下達郎さんの完璧なアレンジです。

二時間半のコンサートがあっという間に過ぎていきました。もっといろんな曲がライブで聴きたい、とコンサート会場を後にする時、思ってしまいます。というのも竹内まりやさんの曲は名曲ばかりなのだ。しかも、それらの曲のどの曲も奇をてらったところのまったくないのが美しいポップスのど真ん中です。

竹内まりやさんの歌唱にも衰えなし。とても素晴らしいコンサートでした。いつか、次の何年か後にお土産を携えての再会のあることを切に願うぼくであります。
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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