えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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玉居子精宏さんの著した「大川周明 アジア独立の夢 志を継いだ青年たちの物語」を読む。大川周明 というと東京裁判の時、東条英機の頭をぽんぽんと何回も叩いた映像で有名でもあるけれども、むしろ大アジア主義を掲げた右翼のイデオローグを掲げた人としての方が歴史としては残っているのだろう。戦前と戦中に時の経済界と政界の支援を受け私塾を開き、そこで学んだ青年たちが、少なからず、インドも含めた東南アジア諸国の独立に影響を及ぼしたらしいのだが、この本の中にある光機関やらF機関やら南機関という組織を知るにつけ、工作とか陰謀とかそういうことってあるらしいことを知る。青春の夢物語のような外国の独立運動のかかわりは、終章になって書かれた、さまざまな塾生たちに述懐される歴史の皮肉と悲しさよ。ぼくには「終章 歴史の一部になって」が一番、おもしろかった。引用します。

「大川周明は復興アジア、すなわちアジア独立の精神を最後の弟子たちに打ち込んだが、戦争が終わると、大川塾生が派遣されていた南方の地域では宗主国との葛藤や争いを経てベトナム、インド、ビルマ、インドネシア、マレーシアと独立していった。彼らの宿願は彼らが去ったあと、その土地の人々によって果たされていった」

塾生の一人はこう述べてもいる。

「インド国民軍やインド独立運動というのは、ボースさんや大東亜戦争以前に、数百年の歴史を持っているわけですからね。僕はINAの仕事というのは、その中のほんのわずかのコマにすぎないのだ、主役は常にインド人であったという点で、非常にいいことだと思うのですがね」

そして、この人はこうも付け加えている。

「東亜の解放というのは、スローガンであっても、軍の本当のインテンションではなかったと思います」

ぼくの送る言葉は、若者よ、体を鍛えておけ、若者よ、だまされるなよ、若者よ、だまされちまえ、さて、どれなのでしょう?

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ドナルド・キーンさんと瀬戸内寂聴さんの対談本「日本を、信じる」を一気読みしてしまった。

東日本大震災の後、日本国籍を取り日本人となった、世界に日本の文学を知らしめた偉大なる日本文学研究者が、今の日本をどう思っているのか、知りたいと思ったのです。

当たり前みたいな会話ばかりだけれども、共感しつつ、今の日本の首相やそのまわりの議員らが進もうとしている道と異にしていると感じ、日本の未来を危惧してしまいます。けれど、ぼくもキーンさんや寂聴さんのように「日本を、信じる」ことにしましょう。今が人生で初めて立ち会う日本の危機であるような気もするのです。

この本には目新しいことは書かれていないと言いましたが、ぼくの知らなかったことが一つ、語られていました。瀬戸内さんとキーンさんの共通の友だちに三島由紀夫がいましたが、デンマークのある有名な選考委員が三島は過激な左翼だとの進言し強硬に反対し、三島はノーベル賞を逃し、川端康成になったそうです。この本には載っていませんが、有名な話として、三島は内心は悔しいながらも、次は大江(健三郎)くんの番だねと言いのけ、その言葉は本当になりました。作家同士の立場を越えた不思議な友情を感じさせてくれる話ではありませんか。

九十歳を前に日本に帰化したドナルド・キーンさん、ぼくはあなたにこう声をかけてもいいでしょうか?

(日本に!)お帰りなさい





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井上理津子さんの著した「さいごの色街 飛田」を読了した。こんなことまで書いてしまっていいのかなというようなところも含む内容で、単行本を取材した飛田新地料理組合の献本をし、その後の生々しいやりとりはぼくの読んだ文庫本の「文庫版あとがき」に書かれていたのだけど、立ち入り禁止にはならなかったもよう。

この「文庫版あとがき」が濃い内容で、文庫本が出た今、単行本ではなく文庫本の方をお薦めします。このルポルタージュにはその取材手法や取材対象に対しての姿勢だの、いろいろと厳しい批判も多いのだけれども、ぼくは読んで良かったと思いました。

「飛田に行ってみたいと思う読者がいたとしたら、「おやめください」と申し上げたい。客として、お金を落としにいくならいい。そうでなく、物見にならば、行ってほしくない。そこで生きざるを得ない人たちが、ある意味、一生懸命に暮らしている町だから、邪魔をしてはいけない」と筆者は「あとがき」に書いているのだけれど、その言葉の剣は井上さん自身にも向けられていようことも、井上さん自身もわかっているだろう。

大阪はディープです。






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大岡昇平の「俘虜記」を読了した。所謂第二次世界大戦の戦記もの文学でフィリピン戦線で大岡自身と思われる視点から日本人兵士が、アメリカ軍と戦闘し敗走し捕えられ捕虜となり終戦を迎え帰国するまでが著されている。大岡の戦記文学がこんなにおもしろかったとは知らなかった。退屈でもある捕虜の日常は日本という蛸壺のような社会、もしかして民俗学者、柳田国男いうところの「孤島苦」、シンガー、友川カズキのいう「よどんだ島国」、辛辣にいえば愚劣で少しだけ愛おしくもあるような社会の縮図のようでもあった。それを大岡昇平の理性と知性が照射していく。大岡昇平の大作「レイテ戦記」にも挑戦しようかなと思った。







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柄谷行人さんの著した「遊動論 柳田国男と山人」を読了した。民俗学者としてではなく、経世済民を志した思想家、哲学者、そして明治、大正、昭和を駆け抜けた官僚としての実践者でもあった、そのような柳田国男の生涯と著作を読み解くというような内容は、正直に言って、とても難しかったのだけど、柳田が生涯をかけて追及した本居宣長の説く古道、神の古の道を説いたこんな言葉をこの本から引用して紹介します。

「ひたすら神の照鑑(しょうかん)を信頼して疑わず、冥助(みょうじょ)の自然に厚かるべきことを期して、祭をただ宴集和楽の日として悦び迎える」

いろいろ難しいこと、書いてあるけれど、こんなの、とても素敵です。おやすみZZZzzz.....






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増田寛也さんの著した「地方消滅」を読む。この本によると、今、日本は極点社会に向かっているらしい。極点社会とは何かといえば、それは、東京の人口の一極集中化がさらに進み、地方に住む人々がいあなくなり、地方が消滅し、集中化した東京、極点でも出生率が低迷し、女性が子どもを産まなくなり、人口が急激に減っていく、ということだそう。それは現在も進行中で、近い将来、896の自治体が消滅しかねなく、しかも、今、対策を立てても、効果の現われるのは60年先だという怖い話もある。

この本は極点社会を食い止めるための対策が論ぜられているのだけれど、確かに地方の小都市を旅したりすると、その静まりかえった夕方のシャッター街に震撼としたりするのを思い出す。それに、朝、奴隷船のような小田急線に乗って、都心に通勤に出かける時、本当に東京の一極集中の歪を身に染みて感じ、その終わりをひしひしと感じもするのです。急激な人口減はあっさりと医療や福祉の崩壊を招きかねず、あぁ、ぼくたちのこの社会はどうなってしまうんだろう。子どもたちのいなくなった公園や広場、学校を思い浮かべると、ひしひしと寂しくもあります。






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柄谷行人さんの編纂した柳田国男の文集「「小さきもの」の思想」を読了した。柳田国男というと「遠野物語」に代表される昔話の採取者というイメージが持たれてしまうのだけど、それにとどまらずに、明治、大正、昭和という時代をまたがって、経世済民を志し、近代によって無くされていく何か「小さきもの」に価値を見出し、日本の状況を「孤島苦」と喝破し、敗戦後は、日本人は社会を「死者ととともに」再建することを望んだ、最も偉大な思想家だったことが、柄谷行人さんの解題とともに読み進めていくと、よくわかります。柳田国男の思想の大きなあらましを知ることのできる入門編的な重い一冊でした。








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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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