えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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栩木伸明さんの著した「アイルランド紀行」を読了した。中世からの過去にさかのぼりながら、19世紀末のW.B.イェイツから始まり、21世紀初頭のU2までのさまざまな文化事象を、原文を日本語訳しながら読み解かれ、アイルランドという土地がたくさんの詩や詞、歌の豊かなゆりかごであったのを知りました。一つ一つの章が短く、どこかのアイルランドのパブに入り込み、黒いビールかウィスキーを飲みながら、誰かの小さなお話を聞くかのようです。そんな風に読み進んでいくと、小さなことどもの中に人の歴史やら今やらの真実は伝えられていくのかな、と思いました。おもしろかった。





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杉浦日向子さんの著した「大江戸観光」を一気に読みました。1984年から1985年までに若かりしころの杉浦日向子さんがいろんな雑誌書き散らした文を集めた本です。書き散らしたといても、そこは江戸に対しての並々ならぬ好学、篤学の志を感じ、しかも、文体は軽妙洒脱で粋なもの。おもしろかった。

江戸の太平の世、260年間、戦争がなかったそうだよ。戦後70年だなんて、まだまだだな。あと190年さ。

日向子さん、いまから11年前、まだまだ、若いうちに逝っちまったな。おしかねえやー、美人薄明っていうじゃねーか。まだまだ、おいらの読んでいない本もいっぱいあるしな。やっぱ、おしいわな。






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去年の8月頃に神奈川近代文学館が佐野洋子展があって、見に行き、そこで買った本がまだ読んでいなくて、今頃、読んでしまった。この「わたしが妹だったとき」という佐野洋子さんの本は佐野洋子さんがちいさいころ、日本は戦争中で、満州国という名で今の中国の一部を統治していて、その北京という大きな町での少女時代の幼い兄との思い出を絵とともに綴ったもの。この本のカバーの表紙の裏にあった佐野洋子さん自身によるこの本の解説です。

わたしとお兄さんは、
だれよりも気の合う遊び仲間でした。
わたしに弟ができ、また弟ができ、また弟ができたのに、
わたしは、お兄さんとばかり遊んでいました。
お兄さんが、ある日、遠くへいってしまうまで―。
これは、わたしが妹だったときの、
お兄さんとわたしの話です。

佐野洋子さんの絵本の原型のようなものは、このようなところにあって、この生きられなかったお兄さんが名作「100万回生きたねこ」になるような気もしました。もう一つの隠れた名作だとも思いました。






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オノ・ヨーコさんの著した「グレープフルーツ・ジュース」を読みました。南風椎さんの訳もすばらしく、ステキな言葉がちりばめられていて、いくつか、ぼくの胸の奥の方に入っていって、きれいなお花が咲くようでした。何度も読み返し、思い浮かべたなら、ぼくはいろんなことができるのかもしれません。もっとも大切な心の中のことです。







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河合隼雄さんの著しわしたものを河合隼雄さんの子息の河合俊雄さんが編纂した岩波現代文庫の「<心理療法>コレクション」の中の一冊「ユング心理学と仏教」を読む。「I ユングか仏教か」の章でなぜ、自分の心理療法の患者への治療を進めていくうちに、仏教の考え方へ近接すらしていったのか、その発端から始まり、「II 牧牛図と錬金術」では十牛図の物語に興味深い紐解きもなされ、その後、西洋から東洋、東洋から西洋へとその文化を照射しつつ、さらなる東洋の思想の深みに錘をおろすかのようなのだ。

「まえがき」でデイヴィッド・H・ローゼンさんが河合さんへ捧げている芭蕉の句です。

「此のあたり目に見ゆるものは皆涼し」

「IV 心理療法における個人的・非個人的関係」ではこう述べられる。

「人間関係を個人的な水準のみではなく、非個人的な水準にまでひろげて持つようになると、その底に流れている感情は、感情とさえ呼べないものではありますが、「かなしみ」というのが適切と感じられます」

この章はこう結ばれる。

「クライアントにそのような楽しい世界のよさを教えたりするよりよりも、心理療法を行うとき、私はかなしみの中心に自分を置こうと心がけている、と言えます。その場にずっといると、楽しい世界が自然にひらかれていきます」

河合さんは学者や文筆家であるよりもまず、悩み苦しむものを治療しようとする医師であったような気もするのです。そして、河合隼雄さんの「エピローグ」でのしめくくりの言葉としてあげられた作者不詳の西洋人の詩「1000の風」。

「『1000の風』
訳 南風椎

私の墓石の前に立って
涙を流さないでください。
私はそこにはいません。
眠ってなんかいません。

私は1000の風になって
吹きぬけています。
私はダイアモンドのように
雪の上で輝いています。
私は陽の光になって
熟した穀物にふりそそいでいます。
秋には
やさしい雨になります。

朝の静けさのなかで
あなたが目ざめるとき
私はすばやい流れとなって
駆けあがり
鳥たちを
空でくるくる舞わせています。
夜は星になり、
私は、そっと光っています。

どうか、その墓石の前で
泣かないでください。
私はそこにはいません。
私は死んでないのです。」






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「大江健三郎自選短篇」を読了した。デビュー作「奇妙な仕事」から1992年の「マルゴ公妃のかくしつきスカート」までさまざまな短篇を大江さん自身が新たに加筆修正をほどこしたもの。

「I 初期短篇」、「II 中期短篇」、「III 後期短篇」に分かれていて、時代につれて、文体が変化してきたことも判る。その中で、ぼくは異質なものを無理やり接合したような文体でもある「II 中期短篇」が一番おもしろかった。その「II 中期短篇」なのだけど、連載の抜粋がほとんで、読んでいくと、そのすべてを読んでしまいたくなる。「I 初期短篇」は戦後文学の時代潮流を受けとめ、椎名鱗三や梅崎春生の小説とどこか近しいものもあるように感じた。「III 後期短篇」の「火をめぐらす鳥」は枯れた澄み切ったふうで、小説家の年齢をかさねて変わっていき、それに合わせて小説の変わっていくのかと思った。

どの時代の作品にも、何か小さな啓明のようなものがあり、感動しました。とくにラストに収められた「火をめぐらす鳥」は美しくて深く、ずしんと感動しました。






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臨済宗の僧侶であらせられる松原哲明さんの著した「般若心経の「空の心」を知るための絵物語 十牛禅図」を一気読みする。これは十牛図を市井のお坊さんらしく、実生活のあれこれを例にとり、語ったもので、おもしろいかった。イラストレーターの津久井智子さんの描きおこした新たな十牛図もかわいらしくて好きです。「解説「十牛図」」という章では十牛図の物語をなすその図にそえられた言葉「序(じょ)」と「頌(じゅ)」の原文の詩と意訳と解説が述べられており、この単純なようで奥の深い十牛図の理解に役立ちます。

このように小さな本ですが読みどころ多いこの本で、ぼくがもっとも感銘を受けたのは「第九 返本環源(へんぽんげんげん)―自然界に戻り、花を見る」でした。返本環源の心境の譬えとして北原白秋の詩「からたちのの花」があげられていました。ぼくは何度、失恋をしてこの詩を読み、泣いたことでしょう。ほんとうですよ。引用させてください。

「からたちの花が咲いたよ
白い白い花が咲いたよ

からたちのとげはいたいよ
靑い靑い針のとげだよ

からたちは畑の垣根よ
いつもいつもとほる道だよ

からたちも秋はみのるよ。
まろいまろい金のたまだよ

からたちのそばで泣いたよ
みんなみんなやさしかつたよ

からたちの花が咲いたよ
白い白い花が咲いたよ」

ぼくは恐れ多くも返本環源を感得できたことがあるとは思えませんが、もうひとつ、中村雨紅の作詞した唱歌「ゆうやけこやけ」も返本環源を感じさせるのだそう。引用しますね。

「ゆうやけこやけで日が暮れて
山のお寺の鐘がなる
おててつないでみなかえろう
からすといっしょにかえりましょ

子供がかえったあとからは
まるい大きなお月さま
小鳥が夢を見るころは
空にはきらきら金の星」

そしてその後に十番目の入鄽垂手(にってんすいしゅ)があるのだそうです。鈴木大拙はこの章をとても大切だと言っております。愚か者のようにもあるのだけど、酒瓶と笑みをたずさえて、町にもどっていくのです。すてきじゃないですか。







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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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