えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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坪川拓史監督の『モルエラニの霧の中』を見ました。

途中で休憩の入る3時間48分の大作は北海道の室蘭で撮られ、特別な登場人物は一人も出てこず、たいした事件も起こらないのだけど、それでも、心に染み入る何かがあって、とても感動しました。

今は亡き大杉漣さんや小松政夫さんが出演しています。大塚寧々さんや香川京子さんも出ています。「土佐源氏」の一人芝居の名優、坂本長利さんが機関車の元機関士、今は公園の動かない展示物のD51の老いた整備係りの役で出演していて、これが素晴らしかった。高校生役の久保田紗友さんもよかった。あまり笑わない少女役。

ふるさと映画の『モルエラニの霧の中』、俳優ではない人たちもたくさん出演していて、映像は詩的でありながら、とてもリアル。室蘭ロケの7話の連作で、それぞれの物語は人と人でつながり、話ごとに主人公が入れ替わり、あっという間の4時間近くでした。

一番好きなシーンは、坂本長利さん演じる怪我をした展示物の機関車の整備係りを竹野留里さん演じる高校生が病院に訪ねて、二人で屋上で製鉄所のもくもくと煙をあげる煙突が並んでいるのを眺めるところです。高校生がこうつぶやく。

「室蘭って機関車みたい…」

この映画の話はすべて、室蘭に移住したというより生まれたところに戻った坪川拓史監督自身が町の人から聞いた話だそう。そして、「モルエラニ」とはアイヌ語で「小さな坂道をおりた所」という意味らしい。監督は室蘭についてこんな風に言ってもあります。

「室蘭の人たちは、口癖のように「何もない町」って言うんです。でも僕から見たら、こんな素敵な町はない。それを映画で伝えたいという思いもありました」

いつか行ってみたいところが、またふえてしまった。

モルエラニの霧の中
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福永壮志監督の『アイヌモシリ』を見ました。

アイヌ民族の近年、行われなくなってしまった祭礼「イオマンテ」について、現代の視点から描かれています。どんなに観光化されようが、ある民族の祭りには、生活やら死への考え方、道徳などの起源ともなるある民族のもっとも大切なエートスが伝えられているような気がするのです。淡々とした描き方の中に、この『アイヌモシリ』は、近年、途絶えてしまった「イオマンテ」などの諸々のことについて、問いを鋭く発しているようにも思え、ぼくは、口をつぐまざるえなく、簡単な答えを出せそうにはないのだけれども。

この映画のエンドロールを見ながら、深く感動している自分がおりました。古く伝えられたアイヌの心も、アイヌモシリ(アイヌ語で「人間の静かなる大地」を意味する言葉、また16世紀以降で、北海道を指すアイヌ語の地名)の自然や動物たちも美しい。

アイヌモシリ
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廣田裕介監督の『映画 えんとつ町のプペル』を見ました。

原作は関西のお笑い芸人だという西野亮廣さんという人なのだが、最近、そういうテレビを見なくなってしまって、誰だろう? となってしまう。けれど、先入観なしにこのアニメーション映画を見れたことはよかった、と思います。

途中でストーリーの筋書きが、なんとなく、こうなるだろう、と思っていたとおりに話は進んでいったのだけれども、それでも感動して、胸がじーんとしてしまった。舞台は、今の日本のようだ、とも思ってしまった。それでも、星や空を見る人は見ているのです。

『映画 えんとつ町のプペル』公式サイト | 大ヒット上映中!
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ダニエル・ロアー監督の「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」を渋谷のホワイト・シネクイントで見た。

ザ・バンドとはカナダ人とアメリカ人の混成ロックバンドで、1968年から1978年に活躍した5人編成の最も偉大なロックバンドだと思う。アルバムはすべて持っているけれど、ぼくはやはりファーストの"Music From Big Pink"とほぼラストの"Northern Lights - Southern Cross"が大好きです。"Northern Lights - Southern Cross"の後に"Islands"があるけれども補遺集のような気もするのです。

15歳ぐらいのころから、ギターのロビー・ロバートソンとドラムスのリヴォン・ヘルムは高校もやめて、ロニー・ホーキンスのバンドで巡業していたことに驚く。その後、ベースのリック・ダンコ、ピアノのリチャード・マニュエル、キーボードのガース・ハドソンが加わり、ロニー・ホーキンスの元を離れると、バンドに化学反応が起こり、今までのロックンロールやサイケデリックでもない渋く深い音楽を奏で始める。そして、そのころから、シンガーでもあった3人、リヴォン・ヘルム、リック・ダンコ、リチャード・マニュエルに、ジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリン、ジム・モリソンを死に追いやったアレの魔の手が入り込み、蝕み始める。

このロビー・ロバートソンからの視点のザ・バンドの物語に、ぼくはロビーとリヴォンの対立の話はもういいだろうとも思う。ビートルズの4人のように、ザ・バンドはこの5人で、誰ひとり欠けてもザ・バンドではないではないかしら?

この映画を見終わって、昔、20年近く、ほぼ同じメンバーでバンドをしてきた経験のあるぼくは、やはり弾き語りではなくバンドがしたいなと思うのだった。にもかかわらず、今のぼくがバンドができていないのは、すべて因果応報、自業自得のなせることでもあるのだけれども。

さて、ぼくの大好きなザ・バンドのGeorgia On My Mindを紹介します。崩壊寸前のザ・バンドが演奏した1976年のハローウィン前夜のサタデーナイトライブというアメリカの人気番組でのライブです。

映画「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」公式サイト
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外崎春雄監督の「鬼滅の刃」を見ました。満員の映画館で映画を見るのなんてひさしぶりです。右にティーンエイジャー、多分、ローティーンの女子たちがいて、左にお母さんに連れられた小さな女の子が座っておりました。

主人公は炭焼きの少年で、額に聖痕のようなあざがあります。炭焼きといえば柳田國男が大正時代に書いた「山の人生」を思い出してしまいます。

夢のまわりに無意識があり、その中に精神の核が浮いているという話など、なかなかアバンギャルドなアニメで、夢と現実が折り重なり、大正時代という設定もあって、わけがわからないところも多々あり、1970年代や1980年代の「アングラ」とか呼ばれた演劇を思い出しました。気づいたものたちは夢から覚めて、鬼たちと戦わなくてはならない?

左にいた小さな女の子は、途中、結構、退屈しているようで、あと何分、とお母さんに聞いていたりしてましたよ。ぼくは泣けなかったけれど、右にいた女子たちはラストシーンでシクシクと泣いているようでした。大正時代の設定であるにも関わらず、映画の物語の不思議は、今の時代の状況をくっきりと映し出しているようでもあるのです。シクシクと泣いている女子たちに、何か、正義が叶わないような深い葛藤があるのかもしれない、などとぼくは思っていたのです。

こんな映画にも泣けないぼくの心が、どこか、かわいてしまっているような気もし、若い魂がうらやましい。これから、ぼくは若返るぞ。

劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編公式サイト
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黒沢清監督の『スパイの妻』を見ました。

蒼井優さんの演技がすごい。その身のこなし、振る舞い、喋り方、昔の日本、小津安二郎や黒澤明、溝口健二の映画に見られるみたいな、例えば原節子みたく、あるいは三島由紀夫の小説に登場するような、古い戦争期の昭和の日本の女性そのものみたいだ。

映画の物語は歴史の暗部をえぐり、加害の日本を描きながら、サスペンスを通じて、男と女の愛のかけひきの物語となり、ある時の社会や日本と対峙した一組を肯定し、それでよしとメッセージする。黒沢清監督がインタビューで答えていたように、エンターテイメントと芸術の垣根を越えて、映画の力を見せつけられました。

途中で戦争期に非業の死を遂げた山中貞雄の映画が、映画の中で映し出される映画としてほんの少しだけ見ることができる。これはきっと短い人生を生きた映画監督への黒沢清さんからのレスペクトの表明だろう。

ところで、ネトウヨと呼ばれる人たちはこれも反日とけなすのだろうか? まったく鬱陶しいやつらだ。

ベネチア映画祭の栄誉ある銀獅子賞受賞、おめでとうございます。

『スパイの妻<劇場版>』
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ベンジャミン・ターナー監督とゲイブ・ターナー監督による共同監督での「メイキング・オブ・モータウン」を見ました。1960年代にヒットチャートの上位をビートルズとともに分け合ったデトロイトの音楽レーベルの「モータウン」の会社がデトロイトにあって、ロサンゼルスに本所地をまでのドキュメンタリーです。

社長のベリー・ゴーディと副社長のスモーキー・ロビンソンがあのころの「モータウン」を楽しくしゃべくりあっております。このポップ・ミュージックに偉大なる貢献をしたお二人はとても元気で、仲が良い感じで、公民権運動の1960年代のことを思えば、音楽というジャンルにとどまってはいなくて、こういう二人のことを「朋輩」とか「戦友」というのではないかしら。

「モータウン」のアーティスト、スモーキー・ロビンソン&ミラクルズ、テンプテーションズ、マーサ&ザ・ヴァンデラス、シュープリーム、マーヴィン・ゲイ、スティービー・ワンダー、ジャクソン5らの歌う古い貴重なフィルムがきら星の如くに映画館のスクリーンに映し出され、すばらしい音楽が館内に広がっていく音楽映画であるとともに、この映画は「モータウン」という素晴らしい会社そのものを描いた映画ともなっています。あー、ぼくはこんな会社で働いてみたかったとも思ってしまう。なんだか、これから独立して新しいことを始めようとしている若い人たちに是非、見て欲しいとエンドロールを見ながら思っていました。旧友、ベリー・ゴーディについての音楽の何か特別のものを天から与えられたスモーキー・ロビンソンの言葉を紹介しますね。

「才能のある人間はいる。ただ、ベリー・ゴーディというリーダーはいない」

あっ、そうか、新しいことを始めるに、おいらも遅くはないか。

「メイキング・オブ・モータウン」公式サイト
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プロフィール
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えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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