えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

ジュゼッペ・トルナトーレ監督の『エンニオ・モリコーネ 映画が恋した音楽家』を見ました。
エンニオ・モリコーネというと、ぼくの中ではイタリアのニノ・ロータに並ぶ偉大な映画の音楽家の作曲家で、大好きな音楽家なのです。ニノ・ロータがフェデリコ・フェリーニ監督のサウンドトラックならば、エンニオ・モリコーネはセルジオ・レオーネ監督のサウンドトラックで、二人の巨匠と二人の音楽家は第二次世界大戦後の映画と芸術を高みに引き上げました。
この『エンニオ・モリコーネ』では、モリコーネ自身が自身の音楽にまさしく捧げたといってもいい人生とその音楽、数えきれない映画『荒野の用心棒』や『ニュー・シネマ・パラダイス』などの自身のサウンドトラック、そして、妻への愛についても饒舌に語りつづけていて、とても面白くて二時間以上があっという間に過ぎていきました。
あー、音楽をジャンル分けするなんてつまらない。映画の中で、モリコーネ自身の映像以外にも、クエンティン・タランティーノからブルース・スプリングスティーンまでモリコーネへの賛を語ってもいます。ぼくもモリコーネの音楽は小学生のころ、頻繁にテレビで再放送されていたマカロニウェスタンの中で聴き、ぼくの音楽への嗜好とそれへの愛の根っこのところにあるのを再発見した次第です。
映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』公式サイト


ヒューマントラストシネマ渋谷で高橋慎一監督の『THE FOOLS 愚か者たちの歌』を見る。
新宿の某所でFOOLSのボーカルの伊藤耕が歌っていたSYZEやギタリストの川田良が弾いていたSPEEDをぼくがティーンエイジャーのころ見てからの長い年月が経っていて、それは驚くべきことだ。そのころ耕は公園通りに捧げますとMCをたれて、渋谷の屋根裏かどこかで「街を歩いてみろ」を歌っていた。こんな歌詞であったことも思い出す。
♪♪♪
街を歩いてみろ
おれたちのものなんて
どこにもないぜ♪♪♪
映画館から駅への帰りすがり、渋谷の街は今でもますますそうだな、と思う。
ロックの魂を体現したバンドはFOOLSだった。パンクをいつのまにか後にしてFOOLSはブルースやファンク、ロックンロールに回帰していた。出会えて、生で聞けて本当によかったな。今もライブバーで一人、ぼくがへたな歌を歌っているのも、高校のころ伊藤耕に憧れたからのような気もする。
映画の中での川田良の言葉。
「おれに支持政党なんてないよ
しいていえば、おれは宇宙共産党
それでこの宇宙共産党の定員は一人で、所属しているのはおれ一人
そういうやつが百万人いればいい世の中になるんじゃない
いや、滅茶苦茶になるか(笑)
…
おれには家も家族もないよ
住んでいるのは地球の上」
良の遺言はこうだったらしい。
「同士諸君よ、私の屍を越えてゆけ」
飄々と、ぼけたみたいにして、鋭く問いかける高橋慎一監督はインタビューの天才だ。
棺桶に収まった耕の屍の表情はどこか怒っているみたいだった。重い問いを発しながら映画はエンディングに向かう。
この映画を見ている二時間近くは、ぼくには驚くべき時間で、映画にくぎ付けになり、ぼくは刮目せざるえなかったのだ。
映画『THE FOOLS 愚か者たちの歌』公式サイト


瀬々敬久監督の『ラーゲリより愛を込めて』を観る。年の瀬にドスンと感動し、感涙してしまった。
この映画を見る前に,ぼくの亡き父もシベリアの抑留者であったことなどを思いだす。もしも父がこの映画を観たのなら、どう思っただろうか、などとも考える。この映画の主人公のように極寒の果てに地でたくさんの死も見ただろうが、父は戦後を生きぬいた。これ以上に何があろう?
そして、父にとって戦後の世界は、いつまでも戦後であったのかもしれないとも、なぜか思ってしまう。たぶん、片時も戦争のことは忘れたことはなかったのではなかろうか?
『ラーゲリーより愛を込めて』もそのような映画であると思った。
映画『ラーゲリより愛を込めて』公式サイト


中江功監督の『Dr.コトー診療所』を見ました。こういうラストの大団円は好きだなぁ。
映画を見ながら、なんだか、「ヒポクラテスの誓い」ということを思い出してしまっていた。
「・この医術を教えてくれた師を実の親のように敬い、自らの財産を分け与えて、必要ある時には助ける。
・師の子孫を自身の兄弟のように見て、彼らが学ばんとすれば報酬なしにこの術を教える。
・著作や講義その他あらゆる方法で、医術の知識を師や自らの息子、また、医の規則に則って誓約で結ばれている弟子達に分かち与え、それ以外の誰にも与えない。
・自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない。
・依頼されても人を殺す薬を与えない。
・同様に婦人を流産させる道具を与えない。
・生涯を純粋と神聖を貫き、医術を行う。
・どんな家を訪れる時もそこの自由人と奴隷の相違を問わず、不正を犯すことなく、医術を行う。
・医に関するか否かに関わらず、他人の生活についての秘密を遵守する。
この誓いを守り続ける限り、私は人生と医術とを享受し、全ての人から尊敬されるであろう!
しかし、万が一、この誓いを破る時、私はその反対の運命を賜るだろう」
時代遅れのところもあるかもしれないけれど、ただただ人のためにという本質は変わらない。ぼくはぼくの人生において、人のためにと労をいとわずに、何かをしたことがいくらばかりであっただろうか、などとも映画館を出てから、考えてこんでしまう。誰かのためにということは本当に素敵なことです。
映画の中の南の方の小さな島に、その素敵な人、大丈夫ですよ、といってその手をさしのべ治療に全霊をかけるその人、ドクター・コトーは確かにいたようなのです。
映画「Dr.コトー診療所」公式サイト


コゴナダ監督の『アフター・ヤン』を見ました。
近未来のある時、ベイビーシッターとして家族の一員となっていたロボットもしくはアンドロイドが故障で動かなくなり、調べているうちに、そのロボットには一日に数秒間だけ、記憶を動画ファイル、フォログラフィのファイルとして記録を残す機能が備わっていて、その記録には家族の大切な時間や謎の知らない女性が移されていて、というようなストーリーでした。
コゴナダ監督は小津安二郎監督を最も敬愛している、ということで、とても静かな映画で、ときおり眠くなりながらも、そのアーティスティックな世界に惹きつけられてしまっていました。
何度も、何度も劇中で使われる"I want to be"という歌詞で始まるとても印象的でかっこいい曲があって、エンドロールを見ていると、Takeshi Kobayashi"のクレジットが出てきてびっくりしてしまう。後から調べてみると、ぼくも過去に見たことのあった岩井俊二監督の『リリー・シュシュのすべて』の挿入歌のリメイクなのでした。テーマ曲は坂本龍一さんでそれももちろん素晴らしい。
たくさんの動画ファイルの記録されているところが宇宙のようで、ぼくは、過去から未来までの世界のすべてがアーカイブされているというゼロ・ポイント・フィールドを妄想してしまう。小津安二郎の映画のように「家族」ということがこの映画大きなテーマで、そこに老子などの東洋思想が暗喩としてちりばめられている。家族の映画を撮りつづけた小津安二郎の墓標は「無」の一字だそうだ。禅? 近代に遅れてやってきた東洋の感受性と思考は出口の見つからない世界へのよき一撃なのであろうか?
ロボットと友だちであるミカを演じる子役のマレア・エマ・チャンドラウィジャヤが天才的に素晴らしくて魅力的。子役が素晴らしいというのは、ぼくは岩井俊二さんの映画を思い出します。
小津安二郎がこの『アフター・ヤン』を見たら、どう思うでしょう? にやりと微笑むのではないかしら?
映画『アフター・ヤン』公式サイト


新海誠監督の『すずめの戸締り』を見ました。
はじめのほうは地震を起こすような荒ぶる自然の力を平定しようとするなんて、そんな力は人には与えられていようはずもないじゃないかと、ぶちぶつと心の中でひとりごちつつ、映画を見ていたのですが、いつの間にか、もっていかれ、感動しておりました。ぼくの眼にうっすら涙も。
この前、見た『天間荘の三姉妹』と同じく地震ということがが物語の重要なモチーフとして出てきます。そして、『すずめの戸締り』はロードムービー、旅する物語。「平家物語」や「方丈記」の昔から日本人は、目の前のどうしようもない絶望のような悲しみを物語によって、それを語り聞くことによって、前を向いてきたような気がします。
映画を見て、映画館を出てくると、女子の声であのシーンがよかった、云々すんぬんという、後ろの方で友だち同士が話している声が聞こえました。学校で、見た、見たと聞ききあう声、こういうのっていいなと青春をはるか昔に過ぎたぼくは思うのでした。でも、こんな映画を見て、感動しているなんて、ぼくも心は古びていないのさ。
映画『すずめの戸締まり』公式サイト


北村龍平監督の『天間荘の三姉妹』を見ました。『天間荘の三姉妹』という題名から往年の成瀬巳喜男監督やら小津安二郎監督らの映画みたいな映画かなと想像していたが、まったく違っていた。高橋ツトムさんの原作を知らないぼくにとって、後半一時間はあっと驚くストーリー展開でした。この前、見た『秘密の森、その向こう』に通じる場所の持つ記憶みたいなについての映画でもあるような気がしました。この映画の舞台の「三ツ瀬」は世界のどこかにあるとぼくは信じて疑わない。
ゆめゆめうたがふことなかれ
三姉妹の末娘を演じるのんがとてもよかったし、ダメな父ちゃん、ダメ男演じる永瀬正敏がなんとも渋いいぶし銀の味があって素晴らしい。おまけにその役どころは、いつでもどこでもカメラを手放さないフォトじじいなのです。以前見た『あん』という永瀬さんさんが樹木希林さんとともに主演を演じたオリンピックの映画やらそのNHKのドキュメンタリー、パワハラとかのことで評価を落とした川瀬直美監督の映画を思い出した。特別なファンではないけれど、密かに川瀬さんには映画界で生き残って欲しいと思っています。
しかし、のんのこの演技、地なのだろうか、役の演技なのだろうか? 彼女の演ずる天真爛漫さに肉親と生き別れ、死に別れし天涯孤独という役が心に沁みます。
映画「天間荘の三姉妹」公式サイト


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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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