えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ



オンデマンドで小津安二郎監督の『秋刀魚の味』を見た。『秋刀魚の味』は『東京物語』と同じぐらいぼくは惹かれて何度も見てきた。
『秋刀魚の味』は『晩春』、『麦秋』、『東京物語』のような父と娘の物語の原点に戻ろうとした物語ではないか? 『東京物語』の後、小津はいろんな新しい試みをしているけれど、それらの新しさを封印して、カラーの映画で原点に戻ろうとした。
『秋刀魚の味』では小津映画の常連の俳優が総出演して、揃い踏みしているようなところがある。違うところがあるとするならば、ヒロインでの登場人物としての原節子がいないこと。原節子が一人で担っていた陽と陰、その他のの魅力を当時の松竹映画の新進の岩下志麻、岡田茉莉子、岸田今日子の三人で微妙に役割分担しているかのようだ。
もう一つとして、前景化せずとも強い基調音として「軍艦マーチ」が常に流れていることだと思う。主人公の父がレコードでかかる「軍艦マーチ」を初めて聞くときの笑っているのに何か恥だと思い、躊躇し、心のどこかで泣きべそをかいているかのような笠智衆の表情が素晴らしい。そして、主人公の父がラスト近くのバーでのシーンで「軍艦マーチ」を聞きながらされる隣の酔客の会話はまったく残酷で、人生の意味のすべてを再び打ち砕くかのようだ。
『秋刀魚の味』は小津調の父と娘の別れの話であるとともに、一つの戦争のシーンもなくとも決して語られなかった戦争について、三度も従軍した小津の忘れえぬ悔恨がにじみ出てもいる名画だ。『秋刀魚の味』を見るたびに、この映画は新しい何かをぼくに語りかけるかのようなのだ。
昭和三十七年、小津映画のこれが最期の作品となった。お見事。


オンデマンドで小津安二郎監督の『東京物語』を見ました。
この映画は何度も見ていて、ぼくの記憶の底にいくつものシーンが眠っていて、それが揺り動かされ、起きだすかのようで、胸がドキドキして、目頭が熱くなりながら、目を皿のようにして見続けました。
スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』、オーソン・ウェルズの『市民ケーン』をおしのけて、小津の『東京物語』は2012年の英国映画協会の「サイト&サウンド」誌の「映画監督が選ぶ至上最高の映画」で第一位となっています。ヴィム・ヴェンダーズやアキ・カウリスマキ、ポール・シュレイダーもいわずもがな、ウッディー・アレン、マーティン・スコセッシ、クエンティン・タランティーノらも『東京物語』にやられてしまっているのだ。総合芸術といわれる映画だけれど、『東京物語』は世界の宝なのです。
今日も世界のどこかの街の映画館のリバイバル上映として、もしくは場末の名画座で、『東京物語』はかかっているにちがいありません。


オンデマンドで小津安二郎監督の『東京暮色』を見ました。
『小早川家の秋』と同じくらいの異色作でした。淡々と悲劇は進んでゆき、どう受けとめたらいいのか分からないほどの、エンターテイメント性のない暗く救いのない結末になります。最近、ぼくが読んだ『小津安二郎』の中で平山周吉さんは、小津は『東京暮色』の中で、自ら作った家族の別れや崩壊の物語の底が見たかったのではないかと書いておられたが、なるほどと思う。
ぼくの心に踏切のところにある眼鏡店の看板が怖いようで強い印象として残りました。登場人物の運命を俯瞰する絶対的な視点、すべてを見ている覚者、ブッダの目、だろうか? わかりません。笠智衆の演じる父がラストシーンで唱えるお経は究極の空を表すかのような般若心経かもしれません。
有馬稲子演じる決して笑わない若い女性は早すぎたヌーベルバーグのようで素敵です。別れた母を演じる山田五十鈴の演技がリアルで凄い。
何度も反芻したくなる異色作です。


ロブ・マーシャル監督の『リトルマーメイド』を見ました。アニメの『リトルマーメイド』は、見たことはありません。アンデルセンの鬱な悲しい『人魚姫』とはまったく違う話なんですね。
アフリカン・アメリカンのアリエルは別に違和感はありません。まー、かわいらしいです。海の底にはいろんな肌の色の人魚がいるのをこの映画で知りました。
カニとかカモメとか魚とマーメイドはおしゃべりをして、海の中、みんなで歌い、踊ったりします。ミュージカルだ。舞台は大航海時代のカリブの王国。王子とアリエルは『ローマの休日』のようです。美しくカラフルな海中のシーンから一転して、後半からジブリのアニメみたくなる。そして、ハッピーエンドの大団円。あっという間の2時間15分。おもしろかった。
実写『リトル・マーメイド』|映画 - ディズニー公式|Disney.jp


是枝裕和監督の『怪物』を見ました。
小学校の校長を演じる田中裕子さんの怪演がすごいです。いつも、なぜかヒーローではなくアンチヒーロ、よいものでやなくわるものに、ぼくは注目してしまう。でもこの校長先生も意外な展開となる。
映画の中の時間がかならずしも過去から今へと流れないので分かりにくいところもあるのだけれども、ラストの方の物語の展開に驚き、胸のしめつけられるような感動を覚えました。
子どもを撮ると、是枝監督はうまい。今は亡き青山真治監督の『ユリイカ』(子どもの頃の宮崎あおいが出ている)やら、岩井俊二監督の『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』を思い出したりします。『怪物』の子役の二人、黒川想矢くんと柊木陽太くんがたまらなくピュアで美しいです。子どもはすごいわ。
淡々とした映画で、20世紀には家族をなどの小さいことを描く小津安二郎監督の小津調の小津マジックがあったけれど、21世紀には同じく家族とか小さいことを描く是枝マジックがあるのではないかと思ったりしました。
それから遅ればせながら、坂元裕二さん、カンヌ映画祭の脚本賞、おめでとうございます。
時おり流れる坂本龍一さんの音楽も素敵でした。
映画『怪物』 公式サイト - GAGA




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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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