えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

ジュリアン・テンプル監督の『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』を見ました。
ぼくはこのドキュメンタリー映画の主人公のシェイン・マガウアンがボーカルと作詞作曲をしていたポーグスが大好きなのです。
『シェイン』はシェイン・マガウアン自身の過去や現在のインタビューからその生涯を解き明かそうとするもの。まー、なんて、シェイン・マガウアンとは滅茶苦茶なやつだろうか。ジェームズ・ジョイスを読む不良とかロンドンにいたんだな。シェインは今、六十四歳であるらしい。おいらよりも少し年上の兄貴で、すっかりアルコールと薬でボロボロ風なのだが、シェインはシェインのままなのだ。映画の中で今の彼が昔を語る時の澄んだ邪気のない瞳にぼくは魅せられてしまう。こんなきれいな目の光をもつ人をぼくは知らない。
シェイン・マガウアンさん、あなたは本当のことを歌う本物です。
映画『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』公式サイト


樋口真嗣監督の『シン・ウルトラマン』を見ました。
映画館の席から立つ時、たくさんのアイスコーヒーが残っていて、なんだかんだで、つまりは、飲むのを忘れるぐらい面白かった。何せ、子どものころ初代の「ウルトラマン」とか何度も再放送されて見ているからね。
企画と脚本は「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明さんで、初代「ウルトラマン」への敬意を込めたオマージュらしきシーンもたくさんあって、ぼくのような世代は、うれしくなってしまう。「ゼットン」とか「ゾフィー」とか、とても懐かしい響きではないか。
そういえば、「ウルトラマン」って、日本の神仏を物質化したような表現だと、昔から思っていた。狩野芳崖の「悲母観音」とか、「ウルトラマン」の顔は、いかにも能面にありそうな気もする。いやいや、それは庵野秀明いわく、もともとのデザインをした成田亨さんのいうとおり「真実と正義と美の化身」なのだ。
きっと世界の終わりには青い空に印が現れる。けれど、ぼくらの力で「真実と正義と美の化身」のウルトラマンは召喚されるのです。
ゆめゆめうたがふことなかれ
映画『シン・ウルトラマン』公式サイト


マイク・ミルズ監督の『カモン カモン』を見ました。最近、見るのはファミリー・ドラマばかりですな。
あの『ジョーカー』のホアキン・フェニックスが、まったく違う、本を読むときは老眼鏡をかけなくてはならない老年にさしかかろうとする中年太りの伯父さん、ジョニーを演じています。家庭的なこととは縁の薄そうなジョニーは、ぼくとどこか重なっているようにも思えてしまった。役者っていろんな人になれてしまってすごい。
そのジョニーとある事情で生活することになる九才のジェシー役のウッディー・ノーマンがこれまたいい。『ペーパー・ムーン』のアディのテイタム・オニールや『都会のアリス』のアリスのイエラ・ロットレンダーを思い出してしまった。
ジョニーはラジオを舞台にしたジャーナリストをしているらしく、全米の各地で小さな子どもたちやティーンエイジャーにインタビューをして音声を録りためているという設定。悲しくもないいくつもあるそのシーンでぼくの眼は決壊して、涙が止まらなくなってしまっていました。
映画『カモン カモン』公式サイト


シアン・ヘダー監督の『Coda コーダ あいのうた』を見ました。
この映画のタイトルである「コーダ/CODA」とは、Child of Deaf Adults」の略語で日本語でいえば「聾唖の親を持つ子供」という意味らしい。障碍者のする謙譲とか障碍者への憐みとかこの世界から永久に無くなればいいんだ。世界に必要なのは思いやりで、人は自由で平等です。
映画にもどり、愛にあふれた素晴らしいファミリー・ドラマでした。
昔の日本映画もこんなファミリー・ドラマの映画がたくさんあったと思い出すようでもありました。
舞台の町は漁師の港町で、漁師の港町ってアメリカでも日本でも世界中、こんな感じなのだろうか?
アメリカの映画に出ている俳優さんって抜群にうまい。
主演のエミリア・ジョーンズが演じたルビーにコーラスを教える先生役のエウヘニオ・デルベスが途中から宮本亜門さんに見えてきてしまった。もしかして、宮本亜門さんってこんな風に演技指導しているのではないかしら? そんなわけないか。
この映画、音楽がフックにもなっていて、そこも魅力。コーラスのアレンジでのマーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの「You're All I Need To Get By」とかデヴィッド・ボウイの「スターマン」とか素晴らしいです。
後ろの方の席で映画の途中からだれかがずっとすすり泣いておりましけれど、ぼくはこの映画を見てとても暖かい気持ちになりました。
映画『Coda コーダ あいのうた』公式サイト


ケネス・ブラナー監督の『ベルファスト』を見ました。1969年の北アイルランドのとある港町、ベルファストを描いた監督自身の少年時代の自伝であるような映画です。
ジュード・ヒル演ずる子ども、バディが素晴らしい。カトリーナ・バルフ演ずるお母ちゃんが素晴らしい。ジェイミー・ドーナン演ずる父ちゃんのある意味、孤立した立ち位置は、いかにも、厳しく苦しいぞ。がんばれ、父ちゃん。コリン・モーガン演ずる兄ちゃんのビリーもいて、困難な時代の中、バディに人生を生きる知恵を授けてくれるキアラン・ハインズ演ずるじいちゃんやジュディ・デンチ演ずるばんちゃんもいる。なんとも心温まる家族劇となっていました。
全編でベルファストが生んだ哲人のようなブルー・アイド・ソウル・シンガー、ヴァン・モリソンの歌が流れ、これもぼくにとってはとっても気持ちいい。ビルボード東京やブルノート東京で音楽を聴きにいった時のアンケートの、これから見てみたいアーティストには、いつも「ヴァン・モリソン」と書いてしまうのです。
映画『ベルファスト』オフィシャルサイト 全国絶賛公開中!


ロジャー・ミッシェル監督の『ゴヤの名画と優しい泥棒』を見ました。ジム・ブロードベントとヘレン・ミレンの演ずる初老の夫婦、ケンプトン・バントンとドロシー・バントンの会話を見ていると、ちょっと違うけど、落語のようで、少し「芝浜」や「火炎太鼓」を思い出したりしました。コメディーなのだけれども、その映像は1960年代のブリティッシュのスタイリッシュで、1961年にロンドンであった本当の絵画盗難事件を題材にしています。後半は法廷劇となり、びっくりするようなやっぱ納得の判決と後日談につながります。
イギリスの映画で舞台はロンドンのはるか北、労働者の町、ニューカッスル。民主主義の生まれた国のイギリス。ユーモアはユーマニティ。ケンプトン・バントンのセリフ「あなたはわたし、わたしはあなた」。とんでもなく嫌なニュースが続く中、おいしいミントティーのような映画でした。ごちそうさま。
映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』オフィシャルサイト


リー・ダニエルズ監督の『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』を見ました。
もしや、ビリー・ホリデイというとその悲惨な生い立ちや事件、麻薬、人種差別の陰鬱な映画かと少し躊躇していたのですが、それほど暗くもない映画でありました。それというのもステージで歌うシーンがたくさんあり、音楽の映画として素晴らしかったからで、不世出の天才シンガー、ビリー・ホリデイになりきったアンドラ・デイの歌唱シーンはすごいです。
映画の内容としては、人種差別を告発「奇妙な果実(Strange Fluet)」を歌ったビリー・ホリデイをFBIが安寧秩序を乱す存在として危険視し、麻薬の件で逮捕するが、ビリーは服役とその釈放後も屈せず「奇妙な果実」を歌いつづけていくというもの。
映画を見て、昔、読んだ大橋巨泉・油井正一訳の「奇妙な果実―ビリー・ホリデイ自伝」を再び読みたくなりました。などと思ってアルバム「奇妙な果実」の大和明さんの書かれたライナーノーツを読んでいると、「奇妙な果実―ビリー・ホリデイ自伝」の引用があり、ぼくもここで引きたいと思います。
「私は遊び半分に集まるナイト・クラブの客に、私の歌の精神を感じとってもらえるか、まったく自信がなかったのである。私は客がこの歌を嫌うのではないかと心配した。最初に私が歌った時、ああやっぱり歌ったのは間違っただった、心配していたことが起こった、と思った。歌い終わっても、一つの拍手さえ起こらなかった。そのうち一人の人が気の狂ったような拍手をはじめた。次に全部の人が手を叩いた。(中略)今もって私はこの歌を歌うたびに沈痛な気持ちになる。パパの死にざまが瞼に浮かんでくるのだ。しかし私は歌いつづけよう。リクエストしてくれる人々のためばかりではなく、20年を過ぎた今でも南部では、パパを殺した時と同じようなことが起こっているからだ。」
エンドロールにかぶさる正装で恋人と踊るシーンは、ビリーが生涯、得たくて得られなかったもののような気がして、涙が禁じえなかった。1960年、ビリーが44歳で亡くなった後の公民権運動で白人も黒人も街頭で抗議をするアメリカをビリーは見ることもなかった。
ビリー・ホリデイはアメリカの最も偉大な歌手なのです。ぼくのお薦めのビリー・ホリデイのアルバムを一枚選ぶとすれば、やはりコモドア・レコーズの"The Geatest Interpretations Of Billie Holiday"です。
ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ


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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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