えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

ロジャー・ミッシェル監督の『ゴヤの名画と優しい泥棒』を見ました。ジム・ブロードベントとヘレン・ミレンの演ずる初老の夫婦、ケンプトン・バントンとドロシー・バントンの会話を見ていると、ちょっと違うけど、落語のようで、少し「芝浜」や「火炎太鼓」を思い出したりしました。コメディーなのだけれども、その映像は1960年代のブリティッシュのスタイリッシュで、1961年にロンドンであった本当の絵画盗難事件を題材にしています。後半は法廷劇となり、びっくりするようなやっぱ納得の判決と後日談につながります。
イギリスの映画で舞台はロンドンのはるか北、労働者の町、ニューカッスル。民主主義の生まれた国のイギリス。ユーモアはユーマニティ。ケンプトン・バントンのセリフ「あなたはわたし、わたしはあなた」。とんでもなく嫌なニュースが続く中、おいしいミントティーのような映画でした。ごちそうさま。
映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』オフィシャルサイト


リー・ダニエルズ監督の『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』を見ました。
もしや、ビリー・ホリデイというとその悲惨な生い立ちや事件、麻薬、人種差別の陰鬱な映画かと少し躊躇していたのですが、それほど暗くもない映画でありました。それというのもステージで歌うシーンがたくさんあり、音楽の映画として素晴らしかったからで、不世出の天才シンガー、ビリー・ホリデイになりきったアンドラ・デイの歌唱シーンはすごいです。
映画の内容としては、人種差別を告発「奇妙な果実(Strange Fluet)」を歌ったビリー・ホリデイをFBIが安寧秩序を乱す存在として危険視し、麻薬の件で逮捕するが、ビリーは服役とその釈放後も屈せず「奇妙な果実」を歌いつづけていくというもの。
映画を見て、昔、読んだ大橋巨泉・油井正一訳の「奇妙な果実―ビリー・ホリデイ自伝」を再び読みたくなりました。などと思ってアルバム「奇妙な果実」の大和明さんの書かれたライナーノーツを読んでいると、「奇妙な果実―ビリー・ホリデイ自伝」の引用があり、ぼくもここで引きたいと思います。
「私は遊び半分に集まるナイト・クラブの客に、私の歌の精神を感じとってもらえるか、まったく自信がなかったのである。私は客がこの歌を嫌うのではないかと心配した。最初に私が歌った時、ああやっぱり歌ったのは間違っただった、心配していたことが起こった、と思った。歌い終わっても、一つの拍手さえ起こらなかった。そのうち一人の人が気の狂ったような拍手をはじめた。次に全部の人が手を叩いた。(中略)今もって私はこの歌を歌うたびに沈痛な気持ちになる。パパの死にざまが瞼に浮かんでくるのだ。しかし私は歌いつづけよう。リクエストしてくれる人々のためばかりではなく、20年を過ぎた今でも南部では、パパを殺した時と同じようなことが起こっているからだ。」
エンドロールにかぶさる正装で恋人と踊るシーンは、ビリーが生涯、得たくて得られなかったもののような気がして、涙が禁じえなかった。1960年、ビリーが44歳で亡くなった後の公民権運動で白人も黒人も街頭で抗議をするアメリカをビリーは見ることもなかった。
ビリー・ホリデイはアメリカの最も偉大な歌手なのです。ぼくのお薦めのビリー・ホリデイのアルバムを一枚選ぶとすれば、やはりコモドア・レコーズの"The Geatest Interpretations Of Billie Holiday"です。
ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ


濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』を見ました。
映画を観る前に居酒屋で前飲みしていて、やっぱ、こういう長尺の映画はどこかで眠くなるかなと思いつつ、まったく眠らないで興味津々で見続けて、ラストの45分間で怖いような展開になり、それがあたかも自分のことのようなことでもあるように思われ、胸が締め付けられました。心に傷をもついろんな人に観てもらいたいような映画でした。
夜の帰り道にぼくはこの映画『ドライブ・マイ・カー』の車で走るシーンや、チェーホフの芝居からの引用のすべてを肯定するかのようなラストシーンを思い出し、目頭が熱くなる。
ぼくは、この『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー賞を取ることを陰ながら応援しております。
映画『ドライブ・マイ・カー』公式サイト


TVアニメの『スローループ』をよく見ています。日本の釣り人口の0.1%ほどだといわれるフライフィッシング、その圧倒的少数派のフライフィッシングの楽しさも『スローループ』ではよく描かれていています。「スローループ」というタイトルもなるほどと思う。「スローループ」とは"SLOW LOOP"のことで、「ゆっくりしたわっか」ということ。フライフィッシングでは急いだり、力を入れたりしては、毛鉤は飛んでいきません。それは、ぼくがやっと知った生活と人生の秘訣でもあります。
いろんところにある釣具店だけれども、フライフィッシングのコーナーは隅においやられていたり、もしくはなかったりします。しかし、フライフィッシング専門の釣具店もちらほら見かけるということは、少数派ながらも、フライフィッシャーはなんだか熱く、密度は濃い。『スローループ』はほんわかした家族の話で、そこにフライフィッシングのフックが入る。そう、この『スローループ』を見て、フライフィッシングを始める若い人もいて欲しいな。
TVアニメ「スローループ」公式サイト


原一男監督の『水俣曼陀羅』を見ました。水俣病患者と国との裁判の戦いを主軸に、チッソという会社による公害がもたらしたものをまるごと、とらまえようとする6時間以上もの長尺のドキュメンタリーで、ほとんど眠くならずに見れました。
半世紀以上の間、この水俣の公害でもたらされてものは解決されておらず、未だに戦いの途上でもあって、後世のためにもこの映画が残されてよかった、とぼくは思う。そして、日本という国は、足尾鉱山から福島第二原発まで、棄民を是とする政策の国であるように思え、暗澹たる気持ちになりながら、水俣病被害者やその支援者の明るさと笑顔にぼくは何だか励まされるような気持ちにもなりました。
エンディングロールで不知火海が映され、山を取り戻せ、川を取り戻せ、そして、海を取り戻せ、とぼくは心の中で叫んでおりました。
ぼくは、20年間もの間、このフィルムを撮りつづけてくれた原一男監督に感謝を、半世紀以上、戦いつづけた水俣の人たちに敬意を表したいと思います。
映画「水俣曼荼羅」公式HP


佐渡岳利監督の『SAYONARA AMERICA サヨナラ アメリカ』を見ました。ポップ・ミュージックの巨匠、細野晴臣さんの2018年のアメリカ・ツアー、ニューヨーク公演とロサンゼルス公演をとらまえたドキュメンタリーです。
2019年というと、新型コロナウィルスは流行する前で、その映像に、コロナ禍の2021年の細野さんのインタビュー映像がさしはさまれる。この『SAYONARA AMERICA』のテーマのひとつが"In Memories of No-Masking World"で、細野さんは、今の状況をもうもとには戻らないのではないかといい、コロナの前が10年以上前のようだともいう。ウィルスも怖いけど、人間も怖いよと、世界が全体主義にそまることを危惧し、自由がいいよという。ぼくも、右からも、左からもその流れが来ているように思え、自由がいいよと思う。
さて、この映画『SAYONARA AMERICA』のアメリカ公演の話にもどらなくては。マヤンというところの決して小さくはない2階の観客席もあるロサンゼルス公演の3曲目か4曲目の「薔薇と野獣」の曲の時、ステージの後ろから客席をとらえる映像があるのだけど、お客さん、みんながゆらゆらとリズムにあわせて踊っている映像にぼくの目頭はうれしくて熱くなる。
細野さんは、このアメリカ公演の後は、休もうかなと思っていたそう。そこにコロナ・ウィルスで、まったく楽器にさわっていなかったそうだけど、こうしていてもつまらないんで、また(音楽を)始めようかなと、細野さんはおっしゃっておられました。この映画を見て、細野晴臣さんはすばらしい、音楽はすばらしい、そんなことを思っておりました。
エンディング・テーマで流れる"Sayonara America, sayonara Nippon"に自由への思いが込められているようで、ぼくの心は震えていました。2022年がやってきて、ぼくも自由に歌いつづけますぞ。
映画『SAYONARA AMERICA サヨナラ アメリカ』公式サイト


リーズル・トミー監督の『リスペクト』を見ました。アレサ・フランクリンの伝記映画。幼少のころの思い出から30歳でのあの1972年の伝説のチャーチコンサートまでが描かれれています。
なんでも、この映画のプロジェクトはアレサの存命のころから進められていて、主演のジェニファー・ハドソンはアレサ自身もこの人ならと認めていたという。ジェニファー・ハドソン、すさまじい歌唱力で歌っている姿はアレサが乗り移っているかのようです。
輝かしいアメリカナンバーワンのシンガーは苦悩の人生の中で、歌がなによりもの武器で、自由、Freedomと敬意、Respectを求めてやまない青春時代を過ごしておりました。一番、好きなシーンはアラバマのマッスル・ショールズにあるフェイムスタジオでミュージシャンたちとセッションし、レコーディングするところ。本当に片田舎のスタジオでミュージシャンの多くは白人で、なにこれ、とアレサは思うが、演奏してみると、すばらしくソウルフルなサウンドにアレサはのっていく。扉を叩いて、時代の開けられた、歴史的な瞬間に立ち会ったような気持ちになりました。
おっと、これ以上のネタバレはしない、しない。
アレサの父である黒人教会のもっとも有名な牧師のC.L.フランクリン師を演じているフォレスト・ウィテカーがみごとです。この稀代の複雑な人格の牧師をある意味、名演していて、素晴らしい。
さてアレサのアルバムでぼくの推薦は、"Aretha Gospel"、"I Never Loved A Man The Way I Love You"、"Amazing Grace"の3つかな。がつんとやられてください。
ぼくが映画館の店主ならば、この『リスペクト』とドキュメタリー映画『アメイジング・グレイス』の上映を同時開催します。『リスペクト』を見て、つづいて『アメイジング・グレイス』を見て、完璧だ。
映画『リスペクト』公式サイト


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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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