えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

オンデマンドで小津安二郎監督の『東京暮色』を見ました。
『小早川家の秋』と同じくらいの異色作でした。淡々と悲劇は進んでゆき、どう受けとめたらいいのか分からないほどの、エンターテイメント性のない暗く救いのない結末になります。最近、ぼくが読んだ『小津安二郎』の中で平山周吉さんは、小津は『東京暮色』の中で、自ら作った家族の別れや崩壊の物語の底が見たかったのではないかと書いておられたが、なるほどと思う。
ぼくの心に踏切のところにある眼鏡店の看板が怖いようで強い印象として残りました。登場人物の運命を俯瞰する絶対的な視点、すべてを見ている覚者、ブッダの目、だろうか? わかりません。笠智衆の演じる父がラストシーンで唱えるお経は究極の空を表すかのような般若心経かもしれません。
有馬稲子演じる決して笑わない若い女性は早すぎたヌーベルバーグのようで素敵です。別れた母を演じる山田五十鈴の演技がリアルで凄い。
何度も反芻したくなる異色作です。

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