えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

entry_top_w.png
谷川俊太郎さんが選者となられた岩波文庫版の『茨木のり子詩集』を読む。

詩集を読む楽しみは、展覧会でお気に入りの何枚かの絵を見つけるように、いくつかのお気に入り詩を見つけることだとも思う。そのような、いつまでも美術館でその絵の前で佇んでいたいかのような、ぼくの好きな何度も読みたい詩の二編を紹介すれば、他にも何度も読みかえしたい詩がいっぱいあるけれども、『見えない配達夫』から茨木のり子の原点であるかのような「わたしが一番きれいだったとき」と『鎮魂歌』からの「りゅうりぇんれんの物語」。

詩を選び、この詩集を編んだ谷川俊太郎さんは詩集としては茨木のり子の最晩年の『歳月』がいいという。ぼくも同じようにも感じた。この『歳月』は茨木のり子さんの亡くなった後、出版された詩集なのだが、どの詩もさきに逝ってしまった夫への挽歌であり、なまめかしい恋文であるかのようでありながら、石清水の清浄さなのだ。美しい。







entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

茨木のり子さんが訳し、編集した『韓国現代詩選<新版>』を読む。1990年に日本の詩人によって選ばれ、訳され、日本で出版された隣の国の1980年代の現代詩のアンソロジーが装いも新たに去年、出版された本。

1990年、詩は韓国の人々の中で読まれ、韓国の本屋の詩のコーナーは日本のそれの六倍から七倍はあり、ひとびとはむさぼるように詩のコーナーにたかり、読んでいたとこの『韓国現代詩選』の訳者はいう。日本の現代詩はあるにはあるものの、それを読む人は多からず、今の韓国はどうだろうか? 1980年の光州事件の悲劇から軍事政権による独裁、その後の民衆・学生らによる抗議運動、1987年の独裁政権の終焉と再びの民主主義に確立。1980年代の韓国の詩の言葉は熱い。それがうらやましい。

この詩選で姜恩喬(かんうんぎょ)さんの詩をを読み、韓国の人たちが、日本でいえば桜の花のように、椿の花を愛しているのを知った。山の中のつばきは、それは、それは赤くて、眼から血を流すほどの悲しみを表すという。

さて、この本の「時代を越える翻訳の生命」の斎藤真理子さんの解説にある、訳者であり詩人である茨木のり子さんの詩の定義に、ぼくは深くうなずいてしまう。

「いつも思うのですが、言葉が離陸の瞬間を持っていないものは、詩とはいえません。じりじりと滑走路をすべっただけでおしまい、という詩ではない詩が、この世になんと多いのでしょう」

詩と詞の違いはあれど、ぼくの歌う詞はどうだろうかとふと思ってしまう。








entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

山崎泰廣さんの著した『真言密教阿字観瞑想入門』を読みました。この真言宗の大僧侶の著した本を読めば、阿字観と月相観の瞑想の哲学としての拝啓から、個人や社会に与えたもう深い意義と意味、実践までよく理解できるというもの。

実はぼくは阿字観のための小さな掛け軸と月輪観のための小さな掛け軸を二幅、買ってしまっておりますが、この前、お寺に阿字観を僧侶の指導のもと経験してから、このようなことはお寺ですべきものではないかというような気がして、家で行なわずにいる。しかし、いつか、小さな清浄な茶室、六角堂のようなところを見つけ、もしくはこさえて、この『真言密教阿字観瞑想入門』や僧侶の指導を思い出し思い出ししつつ、瞑想をしてみたいなどと妄想してもいるのです。

古い書物『菩提心論』にはこうあるという。

「我れ、自信を見るに形、月輪の如し。何か故にか月輪を以って喩とするならば、満月円妙の体は、則ち菩提心と相類せり」

そして、『阿字観用心口決』にはこうあるという。

「阿字は月輪の種子・月輪は阿字の光なり。月輪と阿字は全く一なり。胸中にこれを観ずれば、自身即ち阿字と成る。阿字は即ち自心なり」

ゆめゆめうたがふことなかれ






entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

旅先の宿で藤原新也さんの著した『日々の一滴』を読みました。なんか、旅先でテレビを見ることってなんくなりましたね。昔は、旅先で見たテレビ番組は、それぞれの地方のローカル色が何かしらあって面白くも感じこともあったのですが、今はどこも同じ。それと同時に、地方から人はいなくなり、町や村はくたびれていった。この『日々の一滴』はそんな時代の写真付きの日記といった佇まい。

今は戦争準備を進めているような最悪へ向かう時でもあるようにぼくには思えてしまい、この本は、記録と記憶として今を残すべく、藤原さんは上梓したのではあるまいか? この『日々の一滴』は現代にあらわれた永井荷風の『断腸亭日乗』のようでもあるのです。






entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

大江健三郎の『新しい人よ眼ざめよ』を何度目かの再読。クリスマスの近くには、このエポックメイキングな名作を読みたくなってしまう。前に読んだ時とは違うところで感動している自分に気づき、以前は速く読みとばしていたところを丹念に読んでいたりする。

生涯で再び読みたい本がたくさんある。この『新しい人よ眼ざめよ』は、今の時代にこそ、さらに光輝いている、という発見もあった。

絶筆宣言をしてしまった大江先生、沈黙を破り、ぜひとも何かを書いてください、ぼくは心貧しくも願っています。






entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

若竹千佐子さんの著した『おらおらでひとりいぐも』を読んだ。

この小説を読みながら、これはすぐれて現代小説なのではないかと思いはじめていた。この『おらおらひとりいぐも』には、「ポリフォニー(多声・和声)」があり、ジェームズ・ジョイスの「意識の流れ」があり、ガブリエル・ガルシア・マルケスの「魔術的リアリズム」があり、確固たる「ナラティブ(語り口)」を持っている。

若竹千佐子さんは、岩手県の遠野出身で、東京に若くして出てきて、夫の死別の後、小説を書く教室に通いつづけながら、63歳でデビューした『おらおらひとりいぐも』で芥川賞を取ったという。その標準語と東北弁のいりまじった文体は圧倒的で素晴らしく面白い。東北の出身でこの小説に感涙したという、ぼくに紹介してくれた友だちに感謝します。ありがとう。

読後、ぼくはなぜか、映画『フェリーニのアマルコルド』や深沢七郎の小説を思い出すようであったのはどうしてだろう?






entry_bottom_w.png
entry_top_w.png

石牟礼道子さんと藤原新也さんの対談集である『なみだふるはな』を読む。石牟礼道子さんの水俣を語る故郷を愛おしむ言葉は美しい。そして、藤原新也さんのこんな言葉にぼくは強くゆさぶられる思いがした。引用します。

「そのメカニズムは不明ですが、こうしてみると原発三十基分の放射能はすでに世界を覆っているのではないかとも考えられる。そんな中で申しわけないと思うのは、福島の場合もそうですが、ほかの罪のない動植物も巻き添えにしていることです。実は現地で一番ショックを受けたのは飯館村の線量の高い地区の地面で番のアリが狂ったようにエンドレス状態で輪を描いてグルグル回転していたあの光景です。ああやって回りながら死ぬのでしょう。あの狂ったアリは、水俣病にかかって鼻の先でくるくる踊って海に飛び込む「踊り猫」そのものなんです。その光景を見て自分に罪を感じました。
 そのような大罪を犯した僕たちは滅びてもいい。というよりも滅びるべきだと僕は思っております。つまりこの地球上の0.01パーセントに過ぎない人間が99.99パーセントの生物の命を奪おうとしている。そういう生物は滅びるべきです」

ぼくにとってこの言葉は、なんとも重い問いのように思えに考え込んでしまう。そして、やはりぼくは命への捧げもののような石牟礼道子さんの美しい詩や詞でもある言葉に戻ってゆく。いや、戻ってゆこう。






entry_bottom_w.png
<< 前のページ   HOME   次のページ >>
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6]  [7]  [8]  [9]  [10]  [11
plugin_top_w.png
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
えいちゃんのお奨め

ライブのお知らせ

ぼくのTwitter

plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
最新コメント
[12/23 ロンサム・スー]
[07/27 gmail account]
[08/29 えいちゃん]
[08/29 みさき]
[05/18 えいちゃん]
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
ブログ内検索
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
最新トラックバック
plugin_bottom_w.png
Copyright えいちゃん(さかい きよたか) by えいちゃん All Rights Reserved.
Template by テンプレート@忍者ブログ