えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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新渡戸稲造が著し、須知徳平が訳した『武士道』を読む。その昔、司馬遼太郎が昭和という時代を批判しつつ、武士道の電気のようなものがどこか日本人に残っていた時代まではよかったが、それが失われ、日本の国家も日本人も堕落してしまったというようなことをインタビューで話していて、その武士道は何だったのかと思い、この『武士道』を読んでみたという次第。ぼくは司馬遼太郎が称揚する明治がそれほどよい時代とは思えない。ぼくは、明治維新によって多くの武士の精神を有していたと思われる若者の命が争った双方で失われ、明治以降の日本を作ったのは残りかすの卑怯者ではなかったかとも思ってしまう。だからこそ、孤立の士であり新渡戸の盟友でもあった内村鑑三は『代表的日本人』を英文で書き、同じく孤立の士であった新渡戸稲造は英文で『武士道』を書いたのではなかろうか?








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平山周吉さんの著した『満州国グランドホテル』を読む。前の大戦での中国での戦争において日本が「王道楽土」、「五族協和」を謳い、でっち上げ的に作り上げた満州国を、グランドホテルに見立て、そこに出入りした、さまざまな人たちを一人一回、一章で取り上げ、全三十六章、全565頁の大著であった。

その冷静な筆致に満州国に出入りした魑魅魍魎のような人たちがくっきりと浮かび上がりかのようで素晴らしい。三十六人の人以外の超有名人、甘粕正彦、岸信介、李香蘭などは何度もこの本に登場する。

ちなみに甘粕正彦はベルナルド・ベルトリッチ監督の『ラストエンペラー』で坂本龍一に演じられたけれど、この映画の描く満州国はそのさまざまな細部においてフィクションばかりの嘘ばかりなのを思い出す。坂本龍一さんはベルトリッチ監督の甘粕正彦の割腹自殺の最期を抗議し、ピストル自殺に改めさせたが、それすらフィクションで、史実は青酸カリの服毒自殺であった。この『満州国グランドホテル』や山口淑子(李香蘭)の著した『李香蘭 私の半生』によれば、天皇が敗戦を宣言するその前日か何かに満洲映画協会の社員が一同集められ、甘粕は敗戦を明らかにし、日本女子はその貞節を最後まで貫かなくてはならないと言い、全女子社員に小さな宝石箱が配られたという。その集会が終わり、宝石箱を開けると、中には致死量の青酸カリが入っていたが、それを服用し、自殺する人はいなかった。事実はベルトリッチの考えたフィクションよりも奇なり。

さて、『満州国グランドホテル』に戻り、最終章の「第三十六回 「北海道人」島木健作が持ち帰った一匹の「満州土産」」では柄谷行人の批評文も引用しつつ、満州国に批判的に迫ろうとしている。あまりに鋭い柄谷さんの文を引用する。

「この点にかんして参照すべきものは、日本と並行して帝国主義に転じたアメリカの植民地政策である。それは、いわば、被統治者を「潜在的なアメリカ人」とみなすもので、英仏のような植民地政策とは異質である。前者においては、それが帝国主義的支配であることが意識されない。彼らは現に支配しながら、「自由」を教えているかのように思っている。それは今日にいたるまで同じである。そして、その起源は、インディアンの抹殺と同化を「愛」と見なしたピューリタニズムにあるといってよい。その意味で、日本の植民地統治に見られる「愛」の思想は、国学的なナショナリズムとは別のものであり、実はアメリカから来ていると、私は思う」

さて、この『満州国グランドホテル』に登場するのは軍人、官僚、映画人(笠智衆、原節子、小暮美千代)、文学者(小林秀雄)、小説家、言論人(石橋湛山)、右翼活動家(世界的なクラシック音楽の指揮者小澤征爾さんの父)などエリート層ばかりで、一般の民間人、開拓民、庶民は後景の遠のいている。そのことについて、平山周吉さんは深く後悔しているらしいことを「あとがき」で知った。第五回の八木義徳のに出てくる、八木の聞いた満鉄に揺られながらの夫婦の言葉「広うおまんな、広うおまんな」が常に平山さんの胸に、その後、その夫婦はどうなったかのかという思いとともに繰り返されたという。その声にまだ十代の若さのぼくの亡き父の「広いのう、広いのう」という九州弁が重なるかのようだ。敗戦後、生死をさまよう辛酸をなめて帰国したらしいが、父がそのことを詳しく語ることはなかった。本を閉じる。






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五木寛之さんの著した『歎異抄手帳』を読む。この本は、浄土真宗の開祖、親鸞聖人の弟子、唯円が聖人の本当の教えを著したとされる『歎異抄』を五木寛之さんが現代語に訳した「私訳 歎異抄」を手帳の体裁にしたものであります。いろんな『歎異抄』の現代語訳を読んでみましたが、この五木寛之さんの訳が一番ぼくの心に届き、心の奥にまで落ちるようであったのは、五木さんがこの本の中の「「私訳 歎異抄」まえがき」で書かれたこのようなことであったからなのかもしれません。

 他人を蹴落とし、弱者を押しのけて生きのびてきた自分、敗戦から引き揚げまでの数年間を、私は人間としてではなく生きていた。その黒い記憶の闇を照らす光として、私は歎異抄と出会ったのだ。

その「黒い記憶」がどのようなものであったかの詳細は生涯、五木さんは明かすことはないだろうけれど、だからこそ、この五木さんの訳のよる「私訳 歎異抄」は切実でやさしいような気がします。釈徹宗さんのすぐれた解説「五木私訳『歎異抄』について」と歎異抄の原典も付けられております。釈徹宗さんは浄土真宗の住職でもあられ、歎異抄の原典を音読することを勧めておられ、ぼくも音読してなるほどと思いました。五木寛之さんの伴侶であられる五木玲子さんの素敵な画もさしはさまれております。

何度も読み返すだろう現代語訳の『歎異抄』にやっと出会えました。






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旅先の宿で一晩で藤平光一師匠の著した『中村天風と植芝盛平 氣の確立』を読んでしまいました。何度目か再読です。

藤平光一さんを師匠と表したのは、ぼくの通う合氣道の道場の会「心身統一合氣道会」を創立した偉大な人であられるからであります。この『氣の確立』を読めば、「心身統一合氣道」がどのような武道であるのかが、合氣道を経験したことのない人でも、よく解るように説かれているように思われます。しかも、この本は藤平光一師匠の自伝ともなっていて、藤平光一師匠が人生をかけてこの「心身統一合氣道」を確立したことが丁寧に著されてもおります。

まだ準五級のぼくですが、これからも継続して、地道に修行、精進してまいりたいと存じます。




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鞍掛伍郎さんと角田陽一さんが執筆し、関根健司さんがアイヌ文化・アイヌ語監修をし、瀬川拓郎さんが監修した『カラー版 1時間でわかるアイヌの文化と歴史』を読みました。アイヌについて様々な方面からの概説入門的、網羅的な本でありますが、豊富なカラーの図や絵が楽しい一冊でありました。

自然を神としたアイヌの哲学、神話、宇宙は今の時代に新たに発掘され、生かされるべきとことも多いのではないかなどと思います。しかも、交易の民であったアイヌが日本文化の一つのルーツとなったことは容易に想像できるような気もします。叶わぬ夢ではありますが、ふと、文化人類学の祖であるクロード・レヴィ=ストロースがアイヌについて著述したならばどんな本となってであろうかとぼくは想像してしまう。






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このまえ、横須賀美術館の『new born 荒井良二』展で買った絵本『きょうはそらにまるいつき』を読みました。荒井良二さんの絵はなんて自由なんでしょう。『きょうはそらにまるいつき』の小さな物語はなんて清々しいのでしょう。普遍につきぬけてゆく願いと祈りも感じました。ぼくはふと今夜の空の月はどんな形だっただろうと思ってしまいます。







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マーク・カーランスキーさんが著し、片岡夏実さんの訳した『魚と人の知恵比べ フライフィッシングの世界』を読みました。この本でフライフィッシングという釣りの方法がどういう歴史をたどり、今のフライフィッシングとなったかを知り、その魅力がどこから由来するのかも少し分かった気がしました。

ぼくはいくつかの種類の釣りを試したことがありますが、渓流でのフライフィッシングに何か特別のぼくを惹きつけてやまない何かがあります。それは釣ってもフィッシング、釣れなくてフィッシングで、そこにあるものなのです。その何かに通じるような端的な言葉でこの本は締めくくられております。その言葉はぜひこの本をお買いになり、お読みください。

ぼくは一人で渓流に立ち、毛鉤を投げるぼく自身を思い描いたりします。それは、なんて自由で満ち足りているのでしょう。







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えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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