えいちゃん(さかい きよたか)

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ハヤカワepi文庫の高橋和久さんが新たに訳したジョージ・オーウェルの「一九八四年」を読了した。新しい訳に読みやすい日本語になっているそうですが、巻末に付けられたトマス・ピンチョンの解説もおもしろい。オーウェルについてピンチョンは、オーウェルは自分が"反体制的左派"の一員であると考えていた、これは基本的に英国の労働党を意味するとし、この「一九八四年」の解説で端的に鋭いことを書いている。ぼくがなるほどと思った文章を引用してみます。

「労働党とスターリン政権下の共産党との間に類似性が見いだせることを多少とも意識していたのである。彼にとっては、どちらも労働者階級のために資本主義と闘う運動を装いながら、現実には、自己の権力の確立と永続化に腐心しているに過ぎなかった。大衆は、その理想主義、階級格差に対する怒り、そして低賃金を厭わない労働意欲につけこまれ、ただ利用されるためだけに存在し、繰り返し何度も裏切られるのだ」

自由の国、アメリカに存する謎めいたもっとも代表的な現代の小説家の言うことは正鵠を得ているような気もするのだった。しかも、これは左派の政治組織に限らず、あらゆる組織に今や瀰漫していはしないだろうか。

この小説の本国であるイギリスでは「一九八四年」はもっとも有名で読まれない小説であるとも言われているらしい。けれども、オーウェルの自由とヒューマニティを失わない何らかの左派精神のようなものはジャンルを超え、映画監督で言えばケン・ローチ、ロック・ミュージシャンで言えば、そのものずばり"1984"というアルバムもあるデヴィッド・ボウイ、そして、ション・レノンやジョー・ストラマー、モリッシーらに広範に受け継がれているのではなかろうか。

「一九八四年」は第二次世界大戦終結後の1948年の早きに書かれていて、その小説家の想像力の横溢がリアルを追いかけるさまに驚いてしまう。わけのわからない支離滅裂に崩壊した宇宙、偉大なる失敗作なのだと思った。






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えいちゃん
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歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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