えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

世田谷美術館の『北川民次展 メキシコから日本へ』を見ました。北川民次は第二次世界大戦前にメキシコに渡った絵描きで、そのメキシコでは、フリーダ・カーロの夫、ディエゴ・リベラを中心とした民主主義、民衆主義の壁画運動の盛んであったころ、自由の空気を満々と吸い、民族と民俗の混交した生き生きとした世界を表現していたのだが、戦中の日本に戻り、その窒息するばかりの軍国主義に暗喩を織り込んでの気づかれないような抵抗の絵となる。メキシコでの民衆主義のようなものは北川民次を生涯にわたって突き動かすのだが、日本社会の壁にぶつかり、常に暗中模索に混迷しているかのようでもあるのです。そのような葛藤の鈍色の絵も美しく、メキシコ時代の伸びやかさはないけれど、そのような北川民次の絵を描くことによる戦いにぼくは共感してしまう。
同時開催での『ディレクターの仕事』での大判のポスターの大貫卓也の商業ポスターのたくさんの展示は、ぼくを「Japan as No.1」と呼ばれた1980年代と1990年代に引き戻すかのようで、眩暈のするような、むしろ思い出したくないとも思える狂乱の何かを感じてしまう。それに対比するかのような雑誌「暮らしの手帳」の編集長であった花森安治のレタリングはあまり1960年代、1970年代的なノスタルジーなのだ。この展覧会では、その花森安治が世界大戦中の軍部の広報部で国策宣伝の仕事をしていたのが明かされ、ぼくは驚き、当惑しててしまう。花森安治は戦中については何も語らず、「暮らしの手帳」の素晴らしさを支えた戦後の花森安治のとなえる「生活の中の美」とはどのようなもので、どのように生まれ、どのように企図されてあったのか?
小さな企画として『川田喜久治 シリーズ <地図> より』という写真展も開催されていた。川田喜久治の発見し捉えた原爆ドームの天井の染みは、多くの人が焼き尽くされ、一瞬にして天に昇った凄惨な痕だという。これは決して忘れてはならないことだし、核爆弾は決して使われてならないものだ。
世田谷美術館 SETAGAYA ART MUSEUM


浅草の木馬亭で『ウチナージンタ1994-2024』と称されたインディーレーベル「off note」30周年記念のコンサートを見ました。出演したミュージシャンを失礼にも敬称略でご紹介します。大工哲弘(唄, 三絃)・大工苗子(箏, 囃子)・梅津和時(saxophone, clarinet)・大熊ワタル(clarinet, accordion)・中尾勘二(saxophone, klarinette)・関島岳郎(tuba)・向島ゆり子(violin)・石川浩司(percussion)。素晴らしい歌と演奏でした。客先は何か、ぼくの同世代の同胞たち、同志たちの同窓会のような空気にあふれておりました。みんな、よく生きのびてきたよ。ミュージシャンたちにレスペクト。「off note」の主催者の神谷一義さんにもレスペクト。ぼくらの第二章の始まりだ。


アレックス・ガーランド監督の『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を見ました。『シビル・ウォー』の映画の中ではいきなり内戦下のアメリカ合衆国でカリフォルニア州とテキサス州の合同軍が首都のワシントンD.C.に進撃しております。それがどのようないきさつなのかは語られません。ニューヨークにいる主人公の報道カメラマンは仲間たちとワシントンD.C.に向かうというロードムービーになり、さまざな内戦の実相が描かれます。それを見ながら、4年前のアメリカ大統領選でトランプがワシントンの議会に向かえとアジテーションをしたことをぼくは思い出しました。当時、ニュースでこれを見ながら、1970年の日本で過激派の学生たちが成し遂げたかったことが、あっさりと行われたことに驚きもしました。日本のアメリカに赴任する大使館員は、ここは東の端と西の端にアメリカ共和国があり、残りの中央部は広大なジーザスランドだと教わるとどこかで聞きました。
閑話休題、『シビル・ウォー』の映画の中では荒んだ暴力がはびこり、ラストでは、驚くべきことに、あっさりとあることが実行されてしまいます。それは何であるかは、この映画をこれから見る人のためにも、述べるのを控えたくも思うのです。暴力の国、アメリカ合衆国。
映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』|大ヒット上映中


小説家であり、ルポライターであり、バイク乗りでもあった今は亡き戸井十月さんの著した『ゲバラ最期の時』を読みました。この『ゲバラ最期の時』を読みながら、反抗的なぼくは、キューバであれ、ベトナムであれ、ましてや中華人民共和国であれ、朝鮮民主主義人民共和国であれ、政治的自由のない国に生まれなくてよかっとも思ってしまうが、ウクライナやガザでの子どもたちの凄惨な受難を見るにつけ、チェ・ゲバラが生きていたら、どう行動していただろうかと思ってしまう。付け加えるに、当邦にもどれば、ぼくは永住権を持つ市民には、日本での投票の権利、政治に関与する自由があってしかるべきだとも思う。
閑話休題、この『チェ・ゲバラ最期の時』は、実際に戸井十月さんが出会い、インタビューしたゲバラに実際に会った人の話もふんだんにさしはさみ、簡潔にしてすぐれたチェ・ゲバラの評伝になっていて、素晴らしい。チェ・ゲバラの最期を書いた「第六章「よく覚えているのは、チェが少しも絶望的にならずに歩いていることでした」」と「第七章「誰がやっても目を閉じさせることはできなかったのです」」は迫真の文書です。
ゲバラ最期の時/戸井十月




鈴本演芸場で再び令和六年十月上席昼の部です。前編を見た蝶花楼桃花師匠の「地獄八景亡者戯」の後編を見たいと思って来ました。見た演目を書きつつ、時には少しの感想などを。前座の春風亭貫いちくんの「金明竹」、二つ目の春風一刀くんの「庭蟹」、小梅さんのマジック、春風亭勢朝師匠の「大師の杵」。金原亭小馬生師匠の「辰巳の辻占」で何だかすごく眠くなってしまう。柳家小菊師匠の三味線弾きの、唄いの粋曲、都々逸があり、三遊亭歌奴師匠の「寝床」で爆笑。春風亭正朝師匠の「初音の鼓」、ホンキートンクのお二人の漫才。桃月庵白酒師匠「夕立勘五郎」もおおいに笑いました。仲入りの後、ウクレレえいじさんのウクレレ漫談。柳家小ゑん師匠の「フイッ」はもとは三遊亭円丈師匠の新作で、驚くべきシュールな笑いです。ストレート松浦さんのジャグリング、主任は蝶花楼桃花師匠の「地獄八景亡者戯」の後編です。
桃花師匠の「地獄八景亡者戯」の後編では、実は何度か眠くなってしまった。ぼくは桃花師匠の「地獄八景亡者戯」の一時間半にもなる全編を、再び数年後に聞きたいと思った次第です。そして、おこがましくも、落語という芸能は、例えば、五街道雲助師匠や林家正蔵師匠を見ても分かるように、生涯をかけて、切磋琢磨についやすような芸能だとも思うのです。ぼくが注目する女流の若手の落語家が三人いて、二つ目の鈴々舎美馬さん、林家つる子師匠、そして、今日も拝聴した蝶花楼桃花師匠なのだけれど、もう還暦のぼくには彼女たちの晩年様式の落語を聞くことはできないだろうと思いつつ、寄席の末席に座り、できうる限り、応援し続けたいと思ってもおります。そうだ、やっぱ、寄席は時代を継いで受け継げられるパラダイスなのです。


紀尾井ホールでパソナグループ「夢オーケストラ」のコンサートを見ました。夢オーケストラは、昼間はパソナグループで働いているプロのクラシックミュージシャンではない人たちの集団で、ぼくはその力量と技術に驚いてしまうのですが、そこにプロの指揮者である曽我大介さんが入り、ラストの曲にゲストのプロのピアニストの小原孝さんが入っておりました。曽我大介さんの立ちふるまいのオーラにも圧倒されてしまいます。
「音楽で巡る世界のExpo」というテーマで選曲され、一曲目に演奏された曲はシュトラウスの『美しき青きドナウ』で、その美しい音楽の響きにぼくは眠くなってしまう。2曲目が「ゴジラ」のテーマ曲を作った伊福部昭の『シンフォニア・タプカーラ』。「タプカーラ」とはアイヌ語で「立って踊る」という意味で、その土俗とすら感じさせる現代音楽のような異様な旋律も含み、めったに聴くことのできないこの曲に胸の高鳴る面白さを感じました。20分の休憩をはさんでエルガーのおなじみの『威風堂々』の第一楽章。次にラヴェルの組曲『マ・メール・ロワ』で、その中の「パゴダの女王レドロネット」が細野晴臣さんの作る中華風ポップスメロディーを思い出させ、面白かった。ラストはいつかオーケストラのライブで聴いてみたいと思っていたガーシュインのピアノ協奏曲『ラプソディ・イン・ブルー』を小原孝さんのピアノが加わり、堪能しました。
素晴らしいコンサートの、前から4列目という素晴らしい席のチケットを手配してくれたお友だちに感謝、感謝です。アンケートに要望する曲としてマーラーの五番と書いたぼくだけれど、この戦争の終わらない世界にあって、「子どもと戦争」というテーマでコンサートをしてはくれまいか?


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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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