えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

VODで小津安二郎監督の『東京物語』を見ました。1953年の映画です。何度も同じ映画を見ています。すると、細かいところにも目がいってしまいます。
この『東京物語』は夏の話で、団扇の絵柄が大スターの高峰秀子だったりします。
何度、見ても、笠智衆の演ずる平山周吉の美容院を営む娘の金子しげが感じ悪くて、それを演ずる杉村春子は上手いなあ。
金子しげの夫の金子庫造はなかばぶらぶらしている髪結いの亭主で、演ずる中村伸郎がいかにもでこの人も上手い。
酒の席でやっぱり出る「戦争はもうこりごりじゃ」のセリフ。これは三度、応召した小津の本音。
平山周吉の義理の娘で戦争で先立たれた夫を持つ紀子の着ている寝巻の柄が小津安二郎の戦争で亡くなったもっとも深い親友、山中貞雄の思い出の花、ケイトウであったりする。
金子しげの美容院は浅草にあるらしく、どこからか夜に浪曲が聞こえてきたりする。
東山千栄子の演ずる平山周吉の妻のとみは昭和の天皇の皇后であらせられた香淳皇后にとても似ています。
熱海の旅館でアコーディオンを弾いている芸人は村上茂子で、ふむふむ、この人が小津安二郎と深い仲であった人なのか? なかなかに美人じゃのう。
ともあれ、日本映画、全盛期であります。


大友啓史監督の『宝島』を見ました。直木賞を受賞した真藤順丈さん原作は、直木賞を受賞した年に読みまして、とても面白かった記憶がありますが、話の筋はまったく忘れてしまっていて、それはそれで、映画鑑賞に都合がよろしゅうございます。敗戦の7年後の1952年から1970年までの現代史を3時間で駆け抜けます。それを背景にした東映のやくざ映画のようでもあって、それに人間のドラマと自由、平等、人権といったテーマが重なります。
主演の刑事のグスクを演ずる妻夫木聡さんがかっこいい。さらにいいのが行方不明の米軍基地から物資を盗んで人びとに分け与える伝説の怪盗団、戦果アギヤーのリーダーの恋人、ヤマコを演ずる広瀬すずさんです。1950年代、1960年代の沖縄の景色がとてもリアルです。そして、それは暴動のシーンになだれこむ。たまりにたまった米軍の無法に怒りがついに爆発する暴動のシーンからつながった希望の言葉のラストがいい。ふと今の現実を顧みれば、アメリカの従属国である日本の矛盾が集約したかのような沖縄の苦しみが今でもつづいていることにぼくは心が痛い。
映画『宝島』公式サイト | 劇場で、たぎれ!


芳賀薫監督の『風のマジム』を見ました。伊藤沙莉さんが日本で初めてのラム酒造りに奔走する女子、伊波まじむを演じていて、楽しい。伊藤沙莉さんの何にもめげない主人公は朝ドラの『虎に翼』再びでとてもいい。
大河ドラマ『べらぼう』で喜多川歌麿を演ずる染谷将太さんが、まじむが通うバーのバーテンダーだったりします。見ながら、こんなバーに行って、ラム酒を飲みたくなります。
伝説の醸造家を演ずるのが、滝藤賢一さんで、この人も面白い。
ライ・クーダーみたいな音楽も素晴らしい。エンディング・タイトルを見ていると、音楽に高田漣さんの名前がありました。
夢が見つかったなら、それに向かって、てくてく歩いていくことって、素敵なことですね。爽やかな清涼に満たされるような映画です。
風のマジム




石川慶監督の『遠い山なみの光』を見ました。かなり面白かった。この映画の序破急の構成は長い序によって、緊張が少しづつましていって、ラストのところで破となり、急となる。謎を観客に問うようなエンディングにカズオ・イシグロさんの原作を読んでみたくなります。映画は推理小説の要素の入った女性映画の名手、成瀬巳喜男監督の映画のようでもあります。
映画の中の長崎の街並みに小津安二郎監督の『お茶漬の味』と黒澤明監督の『生きる』のポスターがある。ということは、これは1952年ぐらいの物語で、長崎の原爆の光景は表されずとも、戦争を生きて、敗戦をむかえ、戦後を生きるということが、どういうことなのか、自ら経験した戦争を語らないということが、どういうことなのか、ぼんやりと、だがある確信をもって浮かび上がるかのようなのです。そして、これは、もしかして、ぼくの父や母の物語でありえるかもしれない、と想像してしまって、戦慄すらするのです。それこそが近ごろのぼくがとても知りたいことでもあるのです。
その戦争、敗戦、戦後を生きた女たちを演じた三人女優、広瀬すずさん、二階堂ふみさん、吉田羊さんの演技も素晴らしい。監督の石川慶さんも原作のカズオ・イシグロさんも恐るべし。わからないところもたくさんあって、もう一度、見てみたい、そのような映画でもあるのです。
映画『遠い山なみの光』 - GAGA


犬童一心監督の『六つの顔』を見ました。人間国宝の狂言師の野村万作さんをとらまえたドキュメンタリー映画です。
前半は野村万作さんの人となりをとらまえたインタビューと昔の写真や残された動画などとなります。インタビューでは野村万作さんは、自らの人生を語っておられます。東京で受けた空襲のこと、父の野村万蔵のこと、祖父の野村万造のこと、兄の野村萬のこと、どの方も既に逝去されておられる狂言師です。子の野村萬斎さんや孫の野村裕基さんも狂言師で、野村万作さんのことを語っておられます。そこから見て取れるのは、野村万作さんの人となりの清廉さと静かさに秘めた古典芸能への情熱であります。
後半は狂言「川上」の全編となります。盲人であるシテが目をあけてくれるという奈良の吉野の川上の地蔵菩薩に参り、目が見えるようになるのですが、地蔵菩薩はシテに、悪縁である妻が目の病の原因である、といい、妻と離縁しなさいと説き、さもなくばまた目が見えなくなる、といいます。さて、どうなるかは、ここでは申すのを控えたく存じます。
狂言「川上」の全編の後、演じた野村万作さん自身の解題、感想、要諦となり、その言葉にぼくは深く感じ入りました。愛しかないのですね、とぼくはこの狂言の巨匠に首肯する次第であります。
映画『六つの顔』公式サイト


日本テレビで宮崎駿監督の『もののけ姫』を放送していて、全編、見てしまった。今、見ながら、もののけ姫のサンの声が石田ゆり子さんであったことに少し驚く。他に田中裕子さん、小林薫さん、名古屋章さん、美輪明宏さん、西村まさ彦さん、森光子さん、森繁久彌さん、といった錚々たる映画俳優の声の出演なのだ。
昔、一回は見たことがあるはずなのだけれど、物語の筋をすっかり忘れてしまっていて、初めて見た時のような面白さであった。この頃の宮崎駿さんは、柳田國男や折口信夫、宮本常一、網野善彦らの民俗学や古代史研究の本は、かなり膨大かつ詳細に読み込んでいただろう、などとぼくは思う。この映画は、死と再生、自然と文明、友情の裏切り、憎しみと愛、敵と味方、差別と被差別、さまざまな相反し、相矛盾する要素を包含した何度でも見たい傑作だ、とも思う。
この『もののけ姫』は、近々、映画館でリバイバル上映されるそうで、やっぱ映画館でも見たいな。


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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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