えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

弘理子監督の『鹿の国』を見ました。諏訪大社の御神事をとらまえたドキュメンタリーにして、奈良時代から伝わり、そして、途絶えた冬の儀式を再現したものでもあります。
鹿が神への捧げものとして奉納されるそれは、何やら神秘的でもあり、その営みが愛おしくもあります。ぼくは、この映画『鹿の国』を見ながら、クロード・レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』や柳田國男の『遠野物語』、宮澤賢治の『鹿踊りの始まり』を連想していました。月並みな言葉ながら、鹿の捧げの供犠には自然、命への畏敬があって、いよいよ残酷さの止まらない西洋の近代以降への抗いすらあるようにも思えるのです。
諏訪大社では、近ごろ、僧侶たちを向かい入れ、儀式さえ行わていて、近代の受容である明治維新より前の伝統に立ち帰ろうとしているようであることに、ぼくは驚いてしまうのです。立ち戻った鹿の国の、その霊力は人にもおよび、人と国の本来を取り戻すかのようでもあるのです。
映画「鹿の国」公式サイト


ジェシー・アイゼンバーグ監督の『リアル・ペイン 心の旅』を見ました。ユダヤ人としての出自をもつニューヨークで育った若い二人の従兄弟同士がポーランドでガイドツアーの旅するという話。旅の終着点は祖母がアメリカに移民に来る前に住んでいた家で、ガイドツアーではユダヤ人の一斉蜂起の記念碑やアウシュビッツ強制収容所を巡るのだが、ポーランドでのユダヤ人の記憶の町並みの景色は遠景にあり、声高には語られない。その遠景にこそ、ぼくは作りものではないリアルを感じた。従兄弟同士は幼なじみなのだけれど、まったく正反対の性格で意見があわず、旅での口論がつづいていくだけで、これといったストーリーはない。
ユダヤ人はナチスのドイツにガス室に送られ600万人も殺された。恐ろしいことだ。翻って、日本の広島と長崎にトルーマンのアメリカによって原爆が落とされ、21万人が殺された。恐ろしい。今という時代となっても、ネタニヤフのイスラエルは爆撃により4万人の市民を殺し、その7割が女性と子どもだという。
映画『リアル・ペイン』に戻れば、祖父、祖母の時代に人類の犯した過ちにより、主人公たちは世代を越えて、いつ痛みだすかもしれない傷のようなものをかかえて、人生の旅をしているかのようなのだ。その痛みは忘れない方がいい何かであるとぼくは思う。
リアル・ペイン~心の旅~ | Searchlight Pictures Japan


小泉堯史監督の『雪の花 ともに在りて』を見ました。吉村昭原作のど真ん中の時代劇映画です。
主演の福井の町医者を松坂桃李さんが演じ、その妻を芳根京子さんが演じています。芳根京子さんが可憐でいい。町医者に西洋医学を授ける京都の蘭方医を役所広司さんが演じています。役所広司さんはかっこいい。
天然痘という疫病に立ち向かった医師にまつわるヒューマンドラマの物語は、乱れることなく真っすぐにめでたし、めでたしの大団円に向かっていきます。ダイナミックな事件が静かに、静かに結末に向かいます。何か昔の日本映画のようなので、けれん味なく、破綻なく進んでいくのが、逆に素晴らしいと思いました。
小泉堯史監督は、黒澤明監督に最も遅れて教わった高弟で、美しい日本映画を撮りたかったそうで、この『雪の花』は黒澤明というより小津安二郎監督の映画のようでもあって、デジタルではなく、フィルムで撮られたすべてのシーンが美しい絵のようでもあるのです。いい映画を見たという嬉しい感動すらあったのです。
映画『雪の花 ―ともに在りて―』大ヒット上映中 - 劇場公開作品


安達もじり監督の『港に灯がともる』を見ました。震災、双極性障害、アルコール依存症、民族、国籍、アイデンティティ、差別、故郷、町、家族、いろんなことが微妙に絡まりあいながら、映画の物語は進んでいきます。面白い。それに、主人子の金子灯を演じる富田望生が素晴らしい。透明感のある自然な演技。胸に深く染み入るような感動をおぼえました。
映画『港に灯がともる』公式サイト


朝ドラの『ブギウギ』と『虎に翼』がとても面白かったので隠居の身としては『おむすび』も見続けていたのですが、もう見なくてもいいかなと思ってしまいました。老人に一歩足を踏み入れたぼくには物語を駆動する「ギャルの魂」とか、よく分からないのです。若いころは誰でも自由を求めていたとも思いつつ、ギャルってなんだろうか? ふと、あの時代、携帯電話に小さい人形とかオーメントとかをめいっぱい付けていた高校生を思い出したりもしましたが、『おむすび』にはのれなくて、もう見なくてもいいだろうと思った次第です。どうでもいいことと半分は思いつつ、なんとなく書いてみました。


ベリコ・ビダク監督の『キノ・ライカ 小さな町の映画館』を見ました。フィンランドの巨匠、アキ・カウリスマキ監督が鉄鋼業も廃れた斜陽の町、カルッキラに私財を投じて「キノ・ライカ」という映画館を作るというドキュメンタリー映画でした。
アキ・カウリスマキさん自身が作業員として、梯子にのぼって大工仕事をするシーンなどに驚きます。カウリスマキさんの住む何もないような田舎町の仲間たちが、たくさん登場し、おしゃべりをします。ぼくもビデオとかではなく、映画館で見る映画が好きなので、カウリスマキさんの仲間たちの言葉に共感してしまいます。何のストーリーもないけれど不思議に眠たくならないのはどうしたことか?
カウリスマキさんはこの酷い世界にあって、人生も終わりに近づき、この町に何か、よいものを残したかったというのです。じんわりと心が暖かくなり、感動しました。
映画『キノ・ライカ 小さな町の映画館』公式サイト


中田秀夫監督の『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』を見ました。お客さんの半分ほどが小学生で、あたりにお菓子を食べている音がどことなく響いておりますが、大人が見ても何か感じるところのあるようないいような内容の映画でございました。
食べると夢がかなうという駄菓子屋の「銭天堂」に猫の霊力か何かで、たまに招待される人がいて、騒動となります。ばかばかしい話が面白い。落語の噺みたいでもあります。
銭天堂の女主人の紅子を特殊メイクをして演ずる天海祐希さんが面白い。「銭天堂」の紋をちりばめた美しい着物を着て、なぜか「ござんす」とかのの怪しげな吉原の花魁言葉をしゃべります。「ヤマ缶詰」とか「もてもてもち」とかの駄菓子屋で売られている駄菓子のネーミングも洒落ていて、面白い。動き始めた黄金色の招き猫がかわいい。招き猫は特殊な駄菓子を作る職人のようなのです。
いろいろと見どころのたくさんな『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』ですが、そこでの駄菓子を食べた人が幸せになれるか否かは、食べた人の心次第のようなのです。
面白かった。
映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」公式サイト


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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。


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