えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
小津安二郎監督の『長屋紳士録』を見ました。1947年の日本映画です。何度目か再見。
この映画にはいくつかのテーマがあって、その一つが、戦災孤児、浮浪児、ということ。同じ年の映画、黒澤明監督の『素晴らしき日曜日』にも路上生活をする子どもが表されていて、当時の日本で大変な問題となっていたことがうかがわれます。
「長屋」とされているのは空襲後の東京の焼け野原に散見されるバラックの建てものであったりします。すでに東京の町には少しはビルディングも建っている。そんなところにかろうじて残っている人情と礼節を小津は表現したかったのであろう。
老け役ではない笠智衆が登場します。迷子になった子どもを長屋に連れて来てしまう九段の道端で店をだす易の占い師で生計を立てる青年といった役。九段とは靖国神社の参道かと思われ、この「九段」という表現はGHQの検閲を逃れるためかと思われます。小津は後のインタビューで、どうしていつも笠智衆を自身の映画で俳優として採用しているのか、と問われ、ああいう人格者が映画にはいてもらわなくては困る、と答えていたのを思い出します。
貧乏な居間に、後の小津の映画にもよく登場する赤いケトルが置かれていたりします。『長屋紳士録』はモノクロの映画だけれど、あのケトルの色は赤であることを、ぼくは疑いません。
長屋紳士録
レティシア・ドッシュ監督の『犬の裁判』を見ました。動物好きには悲しいエンディングでありました。やはり飼っていた犬のレオを思い出します。この映画での法廷で裁かれる犬もかわいい。1999年に日本で施行された「動物の保護及び管理に関する法律」のことをぼんやり考えたりします。ペットは家族の一員といいますが、犬とか猫とが好きな人はこの映画を見てほしいと思います。ふと、日蓮宗や浄土真宗では動物も人と同じく救われるという教えがあるのを思い出しました。実話に基づくというこの映画を見て、くれぐれも動物たちには申しわけないような、そんな思いもよぎりました。
映画「犬の裁判」 公式サイト
VODで黒澤明監督の『素晴らしき日曜日』を見ました。1947年に公開された日本映画です。映画ってすごい。この映画を見ると、1947年の東京に行けるかのようです。終戦だか敗戦の二年後の米国占領下の日本です。
ストーリーは沼崎勲と中北千枝子の演ずる二人の若く貧しいカップルが日曜日にデートをするという話。
ラストの方の演出は『素晴らしき日曜日』の七年前のチャップリンの『独裁者』のようで、スクリーンの中で中北千枝子演ずるカップルの女性が映画を見ている観客に語りかけるというもの。同じような演出に寺山修司の『書を捨てよ町へ出よう』をぼくは思い出したりもします。
あー、『素晴らしき日曜日』に出てくるカップルは青春なのです。東京の町も、日本も青春で、青春とは何もなくて、それでも夢見ることであるような気がしました。ところで、最近、夢見ることを忘れてはいないか? 今のきみはどうだ? 今のぼくはどうだ? 今の日本はどうだ? 忌野清志郎もこう言っておりました。夢を忘れずに・・・
夜、眠れなくて、ビデオ・オン・デマントで黒澤明監督の『わが青春に悔なし』を見ました。1946年の映画です。戦前の京都大学で1931年の満州事変とも柳条湖事件とも呼ばれるものの勃発時に起こった反体制運動、反戦運動とそれを端緒とするその後の活動家とそれに共感する原節子の演じる女性を主人公としては描いております。
この映画にどれほどのGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の介入、指示、指導、検閲があったかは分かりません。多分、こういう映画を作れ、との指示はあったのだろう。
大げさな演出はいかにも黒澤明の映画という気がします。そう、すでにまぎれもない黒澤映画なのです。
原節子は戦中に満州を舞台にした国策映画『新しき土』という日独合作映画に主演しているのだが、この『わが青春に悔なし』にはどのような気持ちで演技をしていたのだろう? 戦争協力者との汚名を晴らそうと思ったのか、思わなかったのか? 特高警察の刑事を志村喬が演じていて、活動家の母を杉村春子が演じていて、さすがだ、とも思い、この二人は戦後を代表する演技派の俳優で、早くもの揃い踏みです。
歴史は繰り返す、といいますが、昔の京都大学が今のハーバード大学と相似するようなのです。東西の冷戦は始まっていて、GHQの指導やら検閲があるにもかかわらず、「赤」と呼ばれた左翼の活動家を肯定的に描いているのが、少し不思議に思えました。
ヴィデオ・オン・デマントで佐々木康監督の『そよかぜ』を見ました。1945年の日本映画です。並木路子の演じるみちが舞台の照明係から抜擢されて、コーラス隊の一員となり、メインの歌手となるという物語。
楽団員の平松を演じる斎藤達雄の容貌が日本画家の横山大観みたいで、笑えます。あと、楽団員としては上原謙とか佐野周二など。佐野周二はなかなかいい。この映画から終戦直後の大ヒット曲「リンゴの唄」が生まれる。この映画は戦後のGHQ(連合国軍総司令部)の検閲を通った第1号映画とされ、そうではなかった、検閲はされていないという説もあるらしい。二葉あき子の演じる歌手が結婚を期に歌手を引退するというのは、いかにも古い価値観だという気もします。後の1947年に「胸の振子」でヒットとなる霧島昇が男性の歌手の役で登場します。ラストの方のリンゴ畑のシーンが、なんとも多幸感にあふれ、とてもいい。ありし日の純情な日本人の日本映画という気がしました。
マグヌス・フォン・ホーン監督の『ガール・ウィズ・ニードル』を見ました。事実から着想をえた物語ということで、時は第一次世界大戦後で、場所はデンマークのコペンハーゲン。歴史のもっとも暗い何かを描いております。強烈すぎて、暗く、万人にお薦めできないような映画です。小さな子どもがむざむざと殺されていき、それはイスラエルやロシアの蛮行も思い出させ、これが過去のこととして、終わっていない人類の歴史が恐ろしい。見る人は覚悟してごらんあれ。
映画『ガール・ウィズ・ニードル』公式
エドワード・ベルガー監督の『教皇選挙』を見ました。「教皇選挙」とは近頃、新聞などもにぎわしたあのこと、カトリック教徒、14億万人の信者のいるキリスト教カトリックのローマ教皇を枢機卿が選ぶ、選挙のことで、「コンクラーベ」などと称されるものであるらしい。
さすが、アカデミー賞の脚本賞に選出されただけのことはあるストーリーの面白さで、ラストの展開にはあっと驚かされました。舞台はシスティーナ礼拝堂のみで、登場するのは神父と修道女ばかりです。知らない世界をのぞく面白さもありますな。
この映画を見ながら、日本での天皇の代替わり、昭和から平成、平成から令和の時に皇居の中では何が行われたのだろう、などと、ぼくは想像してしまいます。『教皇選挙』は決して事実を基にしてはいないのだけれど、そのあまりに人間的な話の中に、この映画は確かに伝統とは何か、現代に継承するとは何かというにこともテーマになっているような気もします。そして、日本の皇室の行く末なども案じつつ、伝統とその今への継承とは何だろうか、変わらないことと変わることとは何だろう、とぼくは考えずにはおられません。
映画『教皇選挙』公式サイト|2025年3月20日(木・祝)全国公開
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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