えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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アグニエシュカ・ホランド監督の『人間の境界』を見ました。原題は「緑の国境(Green Border)」。ポーランドとベラルーシの国境線を行きかう難民の過酷な行程を追った物語でした。ベラルーシからポーランドに国境を越えれば、ベラルーシに鉄条網を越えて、おし返され、ベラルーシでは、またポーランドに返され、ただ人として生きようとしていた人たちが、ぼろぼろになるまで傷つけられ、亡くなっていく子どもすらいるという、過酷な世界の現実を突きつけられたような気がしました。難民にもいろんな人がいます。アフガニスタンの人、トルコのクルド人、シリアの内戦を逃れた人、アフリカの人、などなど。難民以外に、人権のために身をていする活動家、国境を警備する兵士、警備兵のカウンセリングをする精神科の医師、それらの複眼の視点で物語は進んでいき、モノクロの画面から目が離せません。ぼくの大好きなポーランドの巨匠であるアンジェイ・ワイダ監督のいくつかの映画(『地下水道』や『鉄の男』など)をぼくはいつしか思い出していました。後日談として、ヨロッパに横たわる人種差別、肌の色による差別、民族差別が暗示されます。国家が暴力でもって人をなぶりものにし、隔てるこの世界の現実にいつ変化は訪れるのだろう?

映画『人間の境界』公式
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横須賀美術館に『驚異の細密表現展―江戸・明治の工芸から現代アートまで―』と『鈴木敏夫とジブリ展』を見に行きました。

『驚異の細密表現展』は洋画や工芸品ではなく、竹内栖鳳の「狐」や小茂田青樹の「虫魚画巻」などの明治以降の日本画がよかったように思う。ついに、ぼくにも審美眼が身に付いてきたのだろうか? いいや、ただ生きものの可愛らしさに惹かれたというだけのような気もします。滝藤萬次郎の陶磁器の「色絵花鳥文大花瓶」などは柳宗悦の解く民芸とはまったく違った美なのです。分かりやすく、面白い。

『鈴木敏夫とジブリ展』は戦後の昭和、平成、令和の日本がそのままというような展覧会でした。平日の昼だというのにたくさんの人で、友だち同士で来ている人らは、嬉々として、昔ばなしか何かのおしゃべりをしている。子どもづればかりと予想していたのだが、大人が多く、女の人も多い。ジブリの映画って女子が主人公の名作も多いように思い出す。鈴木敏夫さんは、宮崎駿さんが年の離れた兄で、高畑勲さんがさらに年の離れた大兄のような歳の戦後生まれであった。1970年の学生運動の高揚にもろにかぶっている。慶應義塾大学の無党派の全共闘のリーダー的存在だったのだけれど、正式に組織に入らないかといわれ、この運動は、こんなおじさんから指図されて動いているのかと思い、運動から身を引いていったそうだ。その後、何年間もバイト生活をし、ある時、友だちから、バイトに逃避して人生を生きなくていいのかといわれ、たまたま徳間書店に受かり、入社して、宮崎駿さんや高畑勲さんに出会う。その後の活躍は御存じの通り、名映画に後ろにそれを支える名プロデューサーありで、それが鈴木敏夫さんであった。鈴木敏夫さんの膨大な蔵書も展示されてあって、それにも驚く。これから何かクリエイティブなことをしたいと思っている若い人にもお勧めのこの展覧会は予約が必要で、6月18日(火)まで開催中です。

その後、谷内六郎館にも入り、『足もとに目をむけると』展に癒されました。
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町田市立国際版画美術館で『幻想のフラヌールー版画家たちの夢・現・幻』展を見ました。美術評論家の相馬俊樹さんが企画協力をしておられるこの展覧会のタイトルにある「フラヌール」とは「遊歩者」という意味らしい。おいらのことかい?

はるか昔の高校生のころ、マルキド・サド、ジョルジュ・バタイユ、ジャン・コクトー、澁澤龍彦らの小説などをよく読んでいたのを思い出しました。いつか再読したい。ジャン・コクトーは短編映画もシュールな傑作でした。小説で特に澁澤龍彦の『高丘親王航海記』はまごうことなき傑作です。

このような展覧会に足をはこんだぼくは、今夜は何か奇っ怪な夢を見るでしょう。それもよし。
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世田谷美術館に『民藝 MINGEI — 美は暮らしのなかにある』展を見に行きました。内村鑑三にならっていえば、「民藝」という言葉と概念を打ち立てた柳宗悦は近代以降の柳田國男とならぶ「代表的日本人」だと、ぼくは思のだが、「民藝」とは「民衆的工藝」であり、日常生活で用いられてきた無名の手仕事の品々の美をそのように称するといいます。その「民藝」は柳田國男の「民俗」とならぶ、日本の庶民の心の美しさの証左であるような気もするのです。しかも、柳宗悦亡き後の「民藝」は、その後継者によって世界各国の美の発見にまで広がっていき、日本でもその手仕事は現代にまで伝わっているということも、この展覧会で知りました。その現代ということでいえば、若い人にもっと足をはこんでもらって、日本の美しさを感じてもほしいような、見ることのとても楽しい展覧会でごさいました。

『民藝 MINGEI — 美は暮らしのなかにある』公式サイト
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鶴見駅近くのサルビアホールギャラリーにて『山内若菜 予感展』で山内若菜さんの絵画、日本画を鑑賞しました。若菜さんの絵を見ると、その圧倒的なマチエールにとても心うごかされます。その実物の絵を見ていると、その描かれた具象以外にも、生きもののあらゆる森羅万象が現れては消えて、また現れるかのようで、見とれてしまい、あたかも不思議な輪廻転生のような、それは日本画を越えた日本画のようなのです。素晴らしかった。
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登戸駅近くのNAMNAM Spaceというところで開催されている『パレスチナ あたたかい家』と題された展覧会に行ってみました。一部屋のスペースに新進の作家のパレスチナ支援のためのいろんな絵や作品が並んでいます。このような展覧会を見に来るのは、ぼくのような、かわりもの、はぐれものの老人ばかりで、閑散としていると思いきや、それなりの人の入りで、ぼく以外は若い人ばかりであるのを、ぼくは希望と感じたのです。きっと、みんなの思いは一つ、虐殺がやむことを願うばかり。

この展覧会は、満州国という植民のイスラエルと同じような過ちを犯し、敗戦し、敗戦の前にはガザのようの爆撃にあい、二発の原爆を落とされ、平和を謳う憲法を持つにいたった、戦災の後も、何度も災害からの復興をした、そのようの日本人らしいインデペンデントな素晴らしい展覧会であるし、戦争に抗する多様な表現であると思うのです。一昨日は憲法記念日でありましたが、そう、平和を謳う憲法こそ今や深い部分で日本らしく、日本人の美しい心のようであります。この停戦を願う小さな展覧会は、灯された希望そのものだ思ったのです。

Palestine,Our Warm House
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府中市美術館で『ほとけの国の美術』展を見ました。この美術展のいう「ほとけの国」とはどこかといいますれば、仏教の発祥したインドではなく、伝わった中国でもなく、鑑真が来日し、その教えが独自の発展を見せた日本のことなのです。その仏教にまつわる美術を集めた江戸時代を中心にした展覧会なのでした。

地獄、極楽、来迎、浄土、禅、悟り、そして、仏性(心)をもつ動物(『大般涅槃経』で動物は人と同じく仏性をもつとされる)たちの絵を見ながら、ぼくは江戸時代こそ、世界でもっとも早くポップアートが花ひらいたのではないかと愉しくもなるのです。このありがたきこと、かたじけなきことこの上もない教えを伝えて、そして、解き、説いてくれた、鑑真よ、空海よ、最澄よ、ありがとう。

春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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