えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
よみうり大手町ホールで『日本凱旋公演Bunraku 人形浄瑠璃文楽✕アニメーション背景』と題された公演を観ました。アメリカ合衆国での文楽の公演の凱旋公演です。簡略な舞台セットに「もののけ姫」で美術監督をした男鹿和雄さんが背景のアニメーション画像をてがけておられ、その画像(動画)の最小の動きが、不思議に文楽の世界と美しく呼応しておりました。
この公演は、ぼくが観る初めての実物の文楽の公演であります。いとうせいこうさんの解説付き。当日出演した三味線奏者の鶴澤清志郎さんとおしゃべりをされて、三味線のさわりのことなども話されておりました。いとうさんもおっしゃっておられましたが、太棹のしゃみせんの濁った大きな音と朗々と謡われる義太夫の声の音と合わさると、ジミ・ヘンドリックスのロックのようでもあり、とてもかっこいいのです。
演目は「曾根崎心中 天神森の段」と「伊達娘恋緋鹿子 火の見櫓の段」。どちらも夢幻能に通ずるかのような美しく、あやしく、哀しい世界。大島渚監督の映画「愛のコリーダ」や「愛の亡霊」なども思い出してしまいます。特に「曾根崎心中」は強烈な内容であるのをあらためて感じました。江戸時代、事件があいつぎ、公演禁止となりもしたそうなのです。再び、今度は全編のすべての段を観たい文楽であります。
これで歌舞伎も観たし、能楽も観ているし、文楽も観た。この三つを日本の三大古典芸能というそうで、どれも素晴らしく、もっと若くからこれらの古くから日本にある舞台芸術に触れておればよかった、との悔いもぼくにはあります。映画「国宝」の影響か、客席には若い人もちらほらとおり、未来の古典芸能の存続を思って、ほっと胸をなでおろすのでした。
十月二十五日、日経ホールにて「第九十二回大手町落語会スペシャル二人会~やっぱり、さん喬・権太楼~」でした。
初めに柳家権太楼師匠と柳家さん喬師匠の対談がありました。共通の師である五代目柳家小さんのことやら、立川談志、柳家小三治、柳家喬太郎師匠、春風亭一之輔師匠のことなど、歯に衣着せぬ語りぶりに、公表できない内容、多し。笑ってしまう。そして、前座の柳家小きちくんの「道具や」、柳家さん喬師匠の「締め込み」、柳家権太楼師匠の「二番煎じ」で、三本の滑稽噺でおおいに笑い、仲入りです。
仲入りの後、柳家権太楼師匠「猫と金魚」でまた大笑い。主任は柳家さん喬師匠で、人情噺の「中村仲蔵」。その迫真の語りに観客席のすべては耳をそばだて水を打ったかのように静まりかえる。目の前に江戸の情景がありありと浮かび、江戸の人たちの粋でせつない心も確かにつたわろうというものだ。
暗いこの世のつらさ忘れ、落とし噺は心のオアシスです。
宮崎駿監督の『もののけ姫』を映画館で見ました。「IMAX」とかいう巨大スクリーン、強力音響の劇場で見ました。その没入感も素晴らしく、画面の小さなところにも目がいきます。とてもよかった。IMAXでいつか、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』を見てみたい。
『もののけ姫』のアニメを超えたかのようなこのスケール感、宮崎駿監督って黒澤明とかが好きなのかな、などと思ってしまいます。
日本史におけるたたら製鉄のことなどが気になります。あと、出雲と伊勢のこととか、和人とアイヌのことなど。それに癩者、遊女。のちに宮崎駿さんは、他者と生きるとはどういうことかを描きたかった、とおっしゃっておられました。パレスチナとイスラエル、ウクライナとロシア、それらのこと顧みれば、『もののけ姫』の問いかける何かはいたって今日的なのです。
ラストの大団円の草花が育ち、咲きみだれもするシーンは、宮崎さん自身、その意味は説明ができないそうです。その大団円にぼくは何度、見ても、感動します。
『もののけ姫』は、語るべきいろいろなことどもを包摂した、アニメという範疇を越えて、日本の映画史に残る名画であることに疑いはありません。
『もののけ姫』4Kデジタルリマスター【IMAX上映】
十月二十三日、上野の鈴本演芸場で令和七年十月下席昼の部です。見た演目を書き出してみます。前座の柳亭すわ郎くんの「真田小僧」、二つ目の金原亭馬吉くんの「道具屋」、鏡味仙志郎と鏡味仙成のお二人の太神楽曲芸、三遊亭歌武蔵師匠の「金の大黒」、春風亭柳枝師匠の「目黒の秋刀魚」、ロケット団のお二人の漫才、弁財天和泉師匠の「謎の親戚」、林家正雀師匠の「大師の杵」、遠峰あこさんのアコーディオン歌謡、柳家甚五楼師匠の「子褒め」で仲入りとなりました。鈴風金魚さん、鈴風にゃん子さんのお二人の漫才 、三遊亭白鳥師匠の「ナースコール」、三遊亭歌奴師匠の「佐野山」、ダーク広和さんの奇術 、主任は蝶花楼桃花師匠の「お菊の皿」でした。
今日の前半はけっこう居眠りをしておりました。そんな中で、弁財天和泉師匠の「謎の親戚」が面白かった。新作落語のよさも、ぼくは分かってきたようなのです。仲入りの後は、目も覚めて、がっつり聞きました。鈴風金魚さんと鈴風にゃん子の爆笑漫才。三遊亭白鳥師匠の新作「ナースコール」も面白い。三遊亭歌奴師匠の安定の人情噺「佐野山」。ダーク広和さんの奇術のとぼけた味。蝶花楼桃花師匠の怖くない定番の怪談噺「お菊の皿」で大笑いしました。
暗いこの世のつらさ忘れ、寄席は心のオアシスです。
三井記念美術館で『円山応挙 革新者から巨匠へ』展を見ました。これまであまり足を運ばずにいた日本画の展覧会に最近、はまっております。今日もいいもの観ました。後に財閥となる三井家は円山応挙のよき、もっとも熱心な今でいうパトロンだったそうで、今回の展覧会も見ごたえがありました。とくに「竹雀図屏風」や「遊虎図襖」、伊藤若冲の「竹鶏図屏風」と対となっている、いわば合作の「梅鯉図屏風」が若冲の絵もあわせて、とてもいいと思いました。応挙の描く生きものたちがとてもかわいいのです。若冲との合作は、お互いに立てながらも、一番、得意なものを描いたという風情ですな。お互いのレスペクトが伝わってきます。
ところで、近ごろ、ぼくは日本の伝統の何がしかに惹かれますが、ふと立ち止まって考えてもしまいます。最近のインターネットではびこる排外や差別をあおる右翼、いわゆるネトウヨには嫌悪を感じますが、ぼくなどは彼らのいうパヨクなのでしょう。維新の会という政党は助成金を打ち切り、文楽を途絶えさせようとしていましたな。国立劇場の建て替えもしくは補修を長く店ざらしにして、何も進展させない自由民主党のどこが保守なのかぼくにはさっぱり分かりません。すると、ネトウヨとは真逆の坂本龍一が長谷川等伯についてインタビューで熱く語っていたのを思い出しました。ぼくといえば、今回の円山応挙展、平日にもかかわらず、たくさんの人で賑わっていることにほっと胸をなでおろすのです。
山田無文さんの著した『十牛図 禅の悟りにいたる十のプロセス』を読みました。この本は臨済宗の僧侶であらせられた山田無文さんが昭和二十八年(1953年)に祥福寺専門道場にて頭をまるめたかばかりの若い僧侶に向けての「十牛図」の講話を古い録音テープから書き起こし、昭和五十七年(1982年)に禅文化研究所から出版されたものであります。山田無文さんは昭和六十三年(1988年)に遷化されておられますが、やはり高僧の言葉は古くならず、ぼくがいうのも僭越ながら、素晴らしい「十牛図」の解題であります。
昭和二十八年は日本の敗戦からの七年も続いた米軍の占領からと、それの解かれた翌年だと思えば、感慨もあります。敗戦もその後の混乱も持ちこたえた天台の教えに、どこか、新しく始まった日本に、高僧も胸高らかに、心新たになっておられるなにがしかをぼくは読みながら感じました。
章立てによって「十牛図」とはどのようなものかは、想像できそうなので、記します。
第一「尋牛」
第二「見跡」
第三「見牛」
第四「得牛」
第五「牧牛」
第六「騎牛帰家」
第七「忘牛存人」
第八「人牛倶忘」
第九「返本還源」
第十「入鄽垂手」
このように「十牛図」は牛を追い求める十の絵からなり、禅の悟りへのプロセスを表したものということです。この前、読んだ五木寛之さんは自身の著した「諦める力」の中では「返本還源」の後、「入鄽垂手」が来るのが素晴らしいと言っておられました。十の絵も面白く、とくに「入鄽垂手」の絵は驚きでもあります。禅の悟りのなんと楽しきことよ。さて、「第三「見牛」」での無文和尚の話を紹介し、この項を了としたいと思います。
諸国を放浪し、修行と布教に邁進する一遍上人が由良興国寺の法灯国師にお目にかかって歌を示された。
となうれば仏もわれもなかりけり
南無阿弥陀仏の声ばかりして
すると法灯国師は、
「そりゃまだ修行が足らん。もうひとつ工夫をしなさい」
さらに三年の工夫をされて、また法灯国師にお目にかかって歌を示された。
となうれば仏もわれもなかりけり
南無阿弥陀仏なむあみだ仏
法灯国師は、
「まあ、おまえさんはそこらでよかろう」
そこらでよからうと言われると気になるもので、
「それでは禅師、あなたはいかがですか」と言うと、法灯国師は、
となうればわれも仏もなかりけり
裏のお池に風がそよそよ
十牛図-禅の悟りにいたる十のプロセス
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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