えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
VODで成瀬巳喜男監督の『浮雲』を見ました。1955年の映画です。原作は林芙美子の最後の名作。小津安二郎は「俺にできないシャシンは溝口(健二)の『祇園の姉妹』と成瀬の『浮雲』だけだ」と語っていたそうです。
戦後の大スター、高峰秀子が主演をし、戦中に植民地で出会った男、森雅之の演ずる富岡兼吾と戦後も不倫関係を続ける幸田ゆき子を演じております。幸田ゆき子の運命は一貫して下降線をたどり、見ていてつらくもなります。岡田茉莉子さんが薄幸な末路となる富岡の若いもう一人の不倫相手のおせいを演じていて、なるほど、明るいけれど、、はかなくも散ってしまい、印象的。森雅之の演じた富岡を見ながら、太宰治ってこんな男だったのかも、と思ってしまいました。
森雅之の富岡兼吾も、高峰秀子の幸田ゆき子も病的な自罰傾向にして、自滅的で、ぼくはそこに横たわる日本の惨めな敗戦を見てしまう。この『浮雲』は、1955年の当時、大ヒットして、キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位、監督賞、主演女優賞、主演男優賞となった問題作にして、日本人の敗戦と戦後の悲劇がとりついたかのような異様な傑作だ、と思いました。
横浜の中華街で軽く食べ、飲みをした後、YOKOHAMA BUNTAIで"45th ANNIVERSARY TOUR MOTOHARU SANO AND THE COYOTE BAND"とタイトルされたコンサートを見ました。佐野元春さん、デヴュー45周年は、今のバンド、THE COYOTE BAND結成、20周年だそうです。45周年の音楽生活で、今もコンサートツアーをし、新しい楽曲を書き、新しいアルバムを発表し、ロックンロールを転がし続けています。かっこいい。
今夜のコンサートも新旧の楽曲をごちゃ混ぜにしたセットリストで、佐野元春さん自身もMCで言っていたのだけれど、決してノスタルジーにはならない、今を生きる音楽で素晴らしかったのです。音楽も素晴らしければ、生の演奏とシンクロするバックの巨大スクリーンに映される映像も素晴らしく、その相乗により、今の混迷する時代と世界を撃つメッセージもビシビシと伝わってきて、感動しました。
ところで、余談ではありますが、佐野元春のコンサートの後は、無性にイギリスのフロイト派の精神科医、R. D. レインの詩を読みたくなるんです。どうしてだろう。佐野元春さんはインタビューで自分のことを「ぼくみたいなはぐれもの」と言っていたのを思い出し、ぼくもぼく自身がそうだと共感してしまいます。
Keep on Rockin' forever!
錦糸町のすみだトリフォニーホールで『ケルティック・クリスマス2025』とタイトルされたコンサートを見ました。なんか『ケルティック・クリスマス』には毎年、来ています。今年の出演者です。
(シャロン・シャノンのグループの3人)
シャロン・シャノン(アコーディオン)
ジム・マレー(ギター)
キリアン・シャロン(バンジョー)
リアム・オ・メンリィ(ヴォーカル、ピアノ、ボーラン)
(ザ・ステップクルー・トップ3の3人)
キャラ・バトラー(アイリッシュ・ダンス)
ジョン・ピラツキ(オタワヴァレー・ステップ・ダンス、フィドル)
ネイサン・ピラツキ(オタワヴァレー・ステップ・ダンス)
ダン・ステイシー(オタワヴァレー・ステップ・ダンス、フィドル)
ポール・ブレイディ(ヴォーカル、ギター)
クレア・サンズ(ヴォーカル、フィドル、ギター)
みんな入れ代わり立ち代わり、歌ったり、演奏してくれたり、踊ってくれたりして楽しい。
踊りは超絶で、もしかしてこれがタップダンスの元祖だろうか?
リアム・オ・メンリィさんやポール・ブレイディさんの歌を聞いていると、そのメリスマ、独特のコブシにヴァン・モリソンを思い出す。そうか、これはアフリカン・アメリカンのソウルと並ぶアイルランドのソウル、ケルティック・ソウルに違いない。かっこいい。
リアム・オ・メンリィさんの容貌はジム・モリソンやガース・ハドソンのようだ。このような姿、顔の人の音楽はいいに決まっている。バンドがセッションのようになり、リアム・オ・メンリィさんはボブ・マーレイの"I Shot the Sheriff"を歌い始める。アイルランドの人びとも、ジャマイカの人びとも大英帝国から死ぬほど抑圧され、苦しめられた、そのような人たちなのであった。そのリアム・オ・メンリィさんは伝統を大切にするシンガーで、英語ではなく、古来からのアイルランドの言葉、ゲール語でも歌ってくれて、まるでケルトの聖なる何かが降り立つかのようでもあったのです。
シャロン・シャノンさんのアコーディオンはボタンだけのコンサーティーナみたいな楽器で、その少ないボタンを駆使して、どこまでもパワフルに飛んでいって、素晴しい。
今年も楽しい『ケルティック・クリスマス』でありました。
セピデ・ファルシ監督の『手に魂を込め、歩いてみれば』を見ました。イラン出身はの亡命者で、今はフランスのパリで活動するセピデ・ファルシさんとパレスチナ人のパレスチナ人の若きフォトジャーナリスト、ファトマ・ハッスーナさんのスマホの電話での交流と恐るべきガザの惨状をとらまえたドキュメンタリーでした。ファトマ・ハッスーナさんは地獄のようなガザに閉じ込められ、何もかも奪われ、最期まで夢と希望だけは失わなかった。まず初めに、壁も戦争もこの世界からなくなれ、とぼくは願い、祈る。
映画『手に魂を込め、歩いてみれば』公式サイト
浅草に行くとほんの少しだけ外国からの観光客が減っているように感じます。高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁を巡り、中国外務省が日本への渡航自粛を呼びかけておりますが、こんな時に政府筋のいうことを聞かず、無視するかのように、しれーっと日本に来る中国人には、何ともいえぬ親近感をぼくは抱いてしまいますな。去年、見た英国ロイヤル・オペラの「トゥーランドット」のように早くなってほしい、とぼくは夢想してしまう。人びとよ、庶民よ、人民よ、悪い仮面を脱ぎ捨てましょう。