えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督の『トリとロキタ』を見ました。ベルギーを舞台にした仲良しの10代の少女ロキタと、まだ幼い少年トリ、アフリカから移民してきた子どもの話に今という時代が生々しく映し出される。なんだか、是枝裕和監督の『誰も知らない』を思い出した。ヒューマニティーを訴える映画だけれど、その結末に胸にふたがれる思いです。『トリとロキタ』は何かとても美しいものを描いていて、けれども、映画にはひとすじの希望があった方がいいと思うのだが、どうだろう?
ダルデンヌ兄弟監督最新作『トリとロキタ』3月31日(金)公開
平山周吉さんの著した『小津安二郎』を読了しました。小津安二郎監督の映画の好きな人には恰好の本で、興味深く、そして、面白く、読み始めたら止まらなくなってしまうような全部で二十一章の小津安二郎についての論考の本でした。
「第六章 人の如く鶏頭立てり「東京物語」」や「第七章 「晩春」の壺は、値百万両」では何か怖いような推論が展開されるのだけれども、小津安二郎という映画監督は、生涯、ファミリードラマを撮り続けながら、前の戦争で逝った人たちの無念を決して忘れなかった人でもあったのだと思う。今年で没後六十年、生誕百二十年の巨匠の亡くなった年、1963年は、ラジオの放送から、戦争の尋ね人のコーナーが無くなった年なのだそうだ。1963年のその後を生きていたら、小津安二郎はどんな映画を撮っていたかというようなことを考えるのは詮方ないことで、ただ時おり、小津安二郎の映画を見て、まさしく戦後を生きた人たちと時間をともにし、意識せずとも戦死者を追悼したくなるのです。
オンデマンドで小津安二郎監督の『晩春』を見る。
主演の原節子は外国の映画の女優みたいだ。原節子がスクリーンの上で微笑むと、世界全体が明るくなるようです。悲しげな表情は世界が暗くなる。そして、脇役の杉村春子の演技の自然さはリアルですごい。たくさんの名優に尊敬される大女優、ここにあり。
昔の鎌倉はこんなところだったのかと少し驚くけれど、お寺のシーンでは今と同じなんですね。1949年の作品『晩春』のそこかしこの風景で占領下であることが、さりげなく示されてもいる。
原節子の娘が抱く笠智衆の父への思いは、エレクトラコンプレックス的な何かを感じさせもする。ストーリーは特になく、娘と父の別れがあるのみで、それは、ユング的にいえば、人の心の普遍に深く沈んでいる何かであるとも思う。
『晩春』は小津調全開です。半世紀以上も経ち、絶大に評価される小津の映画の独特はこの『晩春』に始まったのかもしれない。