えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
この前、国立能楽堂で見た能の『善知鳥(うとう)』が強烈な内容で、頭から離れず、もう一度、反芻しようと、早稲田大学で名誉教授をしておられる能楽の研究者である竹本幹夫さんの著した『対訳でたのしむ 善知鳥 うとう』を読みました。上段の現代語訳があり、下段に小さい文字での原文の詞章の載せられた本です。再度、その内容を確認し、凄まじい何かを感じ、その粗筋を記したいと思った次第。
立山の地獄谷で修行の僧侶は成仏できずにいる亡くなった漁師に出会う。猟師は陸奥の国にいる自分の残した妻と子に会い、その妻の持っている自分の形見の笠と蓑に向かって読経し、冥福を祈って欲しいと頼む。その際には、片方の袖を渡すから、その袖が形見の服をぴったり合うはずだと言い、姿を消す。僧は修行をしつつ、陸奥の国にまで行き、泣きぬれている女とその子どに会う。形見の片方の袖のない服と僧侶の持ってきた袖がぴたりと合い、まさしく霊として会った猟師の妻と子であるのが判明し、僧侶は形見の笠と蓑に向け読経をする。そこに猟師の霊が現れる。霊は生前に行った善知鳥の狩りを再現するかのようなのだ。善知鳥という鳥の子は親鳥を真似て「うとう」と呼びかけると雛鳥は「やすかた」と答え、無邪気に寄ってくるのを、猟師は狩りをする。漁師は際限もなく夢中となり、むしろ殺生を楽しむように狩りをする。たくさんの親鳥は血の涙を流し、猟師の笠や蓑は真っ赤に染まれど、夢中となった猟師は狩りをやめない。その姿を霊となった漁師は、生きていくためにはそうするしかなかったのだが、初めて深く悔いる。そして、猟師は今は飛べない雉となり永劫に獣に追いたてられているというのだ。その姿を僧侶は救うこともかなわず、妻とその子は静かに見ることしかできずにいる。漁師は退場し、妻と子、僧侶も去っていく。
昔、高野山の金剛峯寺の長い参道のおびただしい墓の中にいくつもの生類の慰霊碑があったのを思い出したりする。それにしても救いのない強烈な内容に心は重くなり、今、ガザで行われていることはこのようなことではないかとも思い、戦慄した。停戦を願うのみ。
浅草演芸ホールへ令和六年九月上席昼の部を見に参りました。見た演目を記しておきます。前座の柳家小きちくんの「黄金の大黒」、前座の春風亭貫いちくんの「山号寺号」、2つ目の入船亭扇太くんの「道具屋」、柳家さん花師匠の「初音の鼓」、小梅さんのマジック、柳家わさび師匠の「券売機女房」、隅田川馬石師匠の「元犬」、林家楽一師匠の紙切り、柳家小ゑんシショウ「いぼめい」、桃月庵白酒師匠の「つる」で一回目の仲入りでした。ロケット団のお二人の漫才、柳家一馬師匠の「雑俳」、入船亭扇遊師匠の「たらちね」、鏡味仙志郎師匠と仙成師匠の大神楽曲芸、春風亭一朝師匠の「てんしき」、鈴々舎馬風師匠の漫談で二回目の仲入りでした。柳家喬之介師匠の「初天神」、林家木久扇師匠の「初選挙」、柳家権太郎師匠の「無精床」、柳家小菊師匠の粋曲、主任は柳家さん喬師匠の「ちりとてちん」。今日は夏の暑さが少しはやわらいだからか、笑いながら、居眠りしてしまうという芸当をぼくはしてしまいましたが、林家木久扇師匠の大爆笑に重ねて、春風亭一朝師匠、柳家権太郎師匠、柳家さん喬師匠の大御所三人の揃いの滑稽噺の大爆笑。。そんなことで寄席はパラダイスですな。
国立能楽堂で能楽を鑑賞しました。見た狂言は『雷』、能は『善知鳥』。「善知鳥」と書いて「うとう」と読みます。
『雷』は空から、もしくは天から落ちてきた人のような雷が腰を打ち難儀しているのを免状を持たない薮医者が治療するという滑稽な話。とても楽しい。
一転して『善知鳥』は鳥を狩りすることを生業としていた猟師の霊の救われぬ悲しい話で、毛鉤釣りを趣味とするぼくも、釣った魚はもらさず生きて放してはいるけれども、他人事ではなく、何かとても重いものが心に残りました。すべての生きものは他の生きものによって生かされているに他ならず、地球環境ということならば、人という種こそもっとも罪深く思われ、観劇の後、観客は静かに拍手をし、押し黙って、客席を立つようでもあったのです。子を思う親鳥の血の涙と、それでも生きていくために、子や連れ合いのためにも鳥を狩らねばならない人の親の煉獄の謡いは、これこそまさしく現代にも通じる名曲であると思われ、ぼくは圧倒されたのです。
福島県の方を一泊二日の旅をしました。首都高のあたりで故障車の渋滞にまきこまれ、もっと早く福島に入れる予定であったのですが、既に夕方になっていて、どこにも行かず、湯野上温泉というとろのにしきやという宿、民宿に直行となりました。その宿が当たりでこざいました。黒い立派な木の梁のある古民家を改装した素敵な宿は隅々まで風情ある佇まいで、檜風呂の温泉も素晴らしく、夕食の会津料理の懐石料理がとても美味しかったのです。何でも台風の影響により、ぼく以外はキャンセルということで、静かさが気持ちよく、山間の集落の宿でゆっくりと鈴虫の歌うのを聞きながら、ぐっすりと眠りました。
翌日は、この旅の目当てでもありまする南会津の伊南川水系での渓流でのフライフィッシングをしました。舘岩川に入渓し、ボーズ(一匹も釣れないこと)でしたが、たった独りでの渓谷入りで、清浄なる景色の中、清浄なる空気をいっぱい吸った気がして、とてもよかったです。釣り道具を後片付けしていると、地元の知らない人から、釣れましたか、と声をかけられ、正直にゼロ匹でした、と応えると、その人も渓流釣りをたしなむらしく、釣れる小河川のことなどを教えてもらいましたよ。釣り人同士の、一期一会の美しい友情を胸に、降りだした雨の中、車を家路に走らせたのです。たくさんの渓流のある南会津。翌の春にはまた来たいな。
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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