えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
篠原勝之さんの著した私小説集『骨風』を読んだ。
私小説とは日本の明治からの小説技法で、もっぱら作者の身辺雑記を書くもの。私小説の大家としては、徳田秋声があげられる。読みながら、中上健次のある種の小説を思い出した。中上が身辺を書きながら故郷の紀州、熊野の地を思うように、篠原さんは東京や山梨での身辺を書きつつ、少年時代の北海道、父や母、弟を思い出す。全部で八編で「骨風」、「矩形と玉」、「花喰い」、「鹿が転ぶ」、「蠅ダマシ」、「風の玉子」、「今日は はればれ」、「影踏み」。
その中の何篇かに深沢七郎さんのことが出てくる。一時期、篠原さんは深沢さんのラブミー農場に居候して、自給自足の農業の手伝いをしていた。ぼくもその手伝いをしてみたいと、思い立ち、ラブミー農場を訪ねたことがある。いるはずのクマさんこと篠原さんがいない。クマさんがいると思ったんですけど、いないですね、どうしたんでしょうか、と深沢さんに聞いてみると、深沢さんは、クマはよー、最近、テレビとかで生意気なことしゃべるようになったから、追い出してやった、と言っていた。クマさんはそのころよくテレビに出演していた。いま、この短編集を読み、クマさんが深沢さんおことを親方と呼んでいたのを知った。
伝染病蔓延るこの今の世の中を、深沢七郎さんは、どう言うのだろうと、想像してみるに、深沢さんは、みんな、病気になって死んでいけばいいんだよ、人間、みんな、死ぬんじゃねーか、と答える予感。そのことにぼくは返答を窮してしまう。深沢さんは、えばるものが大っ嫌いだった。こんなこともしゃべってくれた。この前、畑一面がセイタカアワダチソウか何かの雑草におおわれてよ、憎たらしくなって、ぜんぶ引っこ抜いてやった、せいせいしたよ。
さて深沢七郎さんを親方にもつ篠原勝之さんの小説集『骨風』に戻り、クマさんは自分のためにこれらを書きつつ、それは人のための祈りでもあるような気がした。救いとは何なのかぼくにはよくわからない。人は思い出を残し、誰でも死んでいき、それは自然そのもののようなのだ。
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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