えいちゃん(さかい きよたか)

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西川美和監督の『すばらしき世界』を見る。

殺人を犯した罪により服役した刑務所から戻ってきたやくざ、三上正夫を演じる役所広司さんがすごい。刑務所帰りの九州の男を演じているというより、刑務所帰りの九州の男が映画の中のそこにいるようだ。

ステレオタイプに当てはめて見てしまうのは、よいことではないと知りつつも、なんだか、ぼくの父の生まれたところが福岡県の田川で、その土地の空気を吸って育った男たちのことを少しは知っているからだろうなのか、九州の男にはこういうところがあるな、などと思ってしまった。いいや、間違えた、九州の男にはこういうところがある、というより、九州にはこういう男がいて、それは、『無法松の一生』の無法松のような人で、純情でやさしく、だが喧嘩っ早い。

映画を見始めて、すぐにこの役所広司さんの演じる、やくざの世界から足を洗おうとしつつ自分を曲げられず、暴力に走ってしまう三上正夫のことが憎めなくなる。役所さんはシカゴ映画祭で演技賞を獲得していて、これは審査員の受賞理由コメント。

「役所広司は巧みながらかつ違和感なく、主人公に深みと様々な真に迫った感情を与えている。その演技により、一見容赦ない社会の中でしっかりとした普通の生活を手にいれようと奮闘する主人公の姿を我々も共に辿ることができ、彼の力強い演技によって映画全体がしっかりと築き上げられている」

三上正夫と懇意になる近所のスーパーの店長、松本良助を演じる六角精児さんの素晴らしい演技にもなんだか注目してしまった、この人はNHKの「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」に出ている人ではないか。「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」を見ながら、なんだか、おいらと同じことが好きな、おいらと同じような感覚の人がいるな、と思っていたのだが、役者とか俳優であったことは知らなかった。どんな人かと調べてみると、おいらと同じ学年であることを知った。なんだか他人と思えないっす。

おもしろいセリフもたくさん出てきます。

「金持ち連中を枕を高うして眠らせるために温和しく生きるほど、俺らはお人好しじゃなかけん」

世間の片隅でこまいく(福岡の方の言葉でちいさく)なって生きているぼくは、三上正夫がやくざのおかみさんにこの世界に戻ってきてはいけないと説得される、このセリフになぜか、ギクリとしたのです。

「娑婆は我慢の連続ですよ。我慢のわりにたいして面白うもなか。やけど、空が広いち言いますよ」

1990年に出版された佐木隆三のほぼ実話を元にした小説「身分帳」をこの映画は現代の時代背景に翻案していて見事で、西川美和さんはとても丁寧に映画を作られておられり、詩的でありながらリアルな全編であるけれど、映画のラストは鋭く、そして、深い問いを見た人に残すでしょう。

すばらしい映画をありがとう。

映画『すばらしき世界』オフィシャルサイト|大ヒット上映中
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えいちゃん
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男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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