えいちゃん(さかい きよたか)

えいちゃんのぶろぐ

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谷崎潤一郎の著した『陰翳礼讃』を読みました。去年、太田美術館で江戸時代のもっとも後期の浮世絵画家である葛飾応為のほの暗い「吉原格子先之図」を見てから、古典の大家であり、ノーベル文学賞の候補ともなる文豪であり、ヘンタイな小説家である谷崎の『陰翳礼讃』を再読したいと思っておりました。

谷崎は、厠やら羊羹、屏風、障子、和紙、漆器、能、文楽などの日本のありとあらゆるものを持ち出してきて、日本の陰翳を礼讃しているのです。面白かった。

読んだのは中公文庫版で、『懶惰の説』、『恋愛及び色情』、『客ぎらい』、『旅のいろいろ』、『厠のいろいろ』も掲載。戦争をはさんだ昭和の時代、昭和五年から昭和二十三年に書かれた名随筆の案配です。

陰翳礼讃 -谷崎潤一郎 著
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ぼくの大好きなパスカルズが音楽を担当しているということで、興味を持ち、伊勢朋矢監督の『日日芸術』を見ました。

この前のNHKの朝ドラで趣里演じる福来スズ子に弟子入りを志願する福島出身の小林小夜役を演じた富田望生さんが、そのまま俳優としての富田望生を演じています。ある日、富田望生が普段は見かけない喫茶店に入ってみるとセロテープのつぎはぎの奇妙な眼鏡をもらい、それをかけて、世界を見てみると、いつもとは違う景色、ものやことが見えてしまうことから映画は始まります。

面白かった。美しかった。富田望生さんはもっとも注目すべき若手の俳優だとぼくは思いました。パスカルズも眼鏡をかけると見える摩訶不思議な楽団として出演していて、それも、とても楽しい。丘の野原の上でみんなで踊るシーンとか、最高です。じゃがたらの江戸アケミのこんな言葉も映画に登場して、はっとしました。

「やっぱ自分の踊り方で踊ればいいんだよ」

そんな踊りもたくさん出てくるのです。そして、芸術って素晴らしい。自分の踊り方で、きみにも、きっとぼくにもできますよ。

映画『日日芸術(にちにちげいじゅつ)』公式ページ
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府中市美術館で『ほとけの国の美術』展を見ました。この美術展のいう「ほとけの国」とはどこかといいますれば、仏教の発祥したインドではなく、伝わった中国でもなく、鑑真が来日し、その教えが独自の発展を見せた日本のことなのです。その仏教にまつわる美術を集めた江戸時代を中心にした展覧会なのでした。

地獄、極楽、来迎、浄土、禅、悟り、そして、仏性(心)をもつ動物(『大般涅槃経』で動物は人と同じく仏性をもつとされる)たちの絵を見ながら、ぼくは江戸時代こそ、世界でもっとも早くポップアートが花ひらいたのではないかと愉しくもなるのです。このありがたきこと、かたじけなきことこの上もない教えを伝えて、そして、解き、説いてくれた、鑑真よ、空海よ、最澄よ、ありがとう。

春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術
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イスラエルの歴史学者、イラン・パペ博士が2007年の来日時の講演と議事応答を記した『イラン・パペ、パレスチナを語る 「民族浄化」から「橋渡しのナラティヴ」へ』を読む。

イラン・パペさんは、シオニズムに疑義、反対意見を提示し、1947年のイスラエルの建国の際にパレスチナ人に行われたことは、民族浄化などによる追放だとし、イスラエルのすべての大学から任官拒否され、殺害予告され、イスラエルを出国せざるえず、今はイギリスのエクセター大学で教鞭を取っている。「共に生きることを望むなら彼らを二つの国に分けることはできない」のメッセージとともに、イスラエルとパレスチナは正式に二国家共存により解決されるのではなく、ユダヤ人とアラブ人のどちらが主導権を持つわけでもない一つの民族共生国家による平和をパペさんは主張している。

この本で主張されている「橋渡しのナラティヴ」は、まだ完成されていない概念のようだけれども、その困難さこそ未来に寄与され、何か明るいものを照射するかのようなのです。ぼく自身のことに話をたぐりよせれば、残った人生で「橋渡しのナラティヴ」に何かを寄与するような歌が作れ、歌えれば本望のような気もしてくるのです。そして、ガザの本当の平和を祈らずにはいられません。

イラン・パペ、パレスチナを語る
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国立能楽堂で能楽の鑑賞をしました。狂言は「二九十八」の昔のおおらかな笑いです。能は「嵐山」。「嵐山」を見たぼくは、日本の桜の林や森では、春になり、桜の咲くとき、日本の男の神と女の神は、毎年若がえり、夫婦の儀式をし、「祝言」をあげていることは、決して疑えません。感動しました。シテの蔵王権現の仕舞の、ありがたき、かたじけなき日本の心のような詞章でございます。

 和光利物の御姿
 我本覚の都を出でて
 分段どうごの塵に交わり
 金胎両部の一足をひっさげ
 悪業の衆生の苦患を助け
 さて又虚空に御手を上げては
 たちまち苦海の煩悩を払い
 悪魔降伏の青蓮のまなじりに
 光明を放つて
 国土を照らし
 衆生を守る
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東京芸術大学の美術館で「大吉原展」を見て、午後の一時半ごろ鈴本演芸場の四月上席昼の部に参りました。古今亭春菊師匠の「お花半七馴れ初め(宮戸川の前半)」、入船亭扇遊師匠の「初天神」、姉さん方三人のだるま食堂のコント、柳家はん治師匠の「妻の旅行」で中入りとなりました。花渡家ちとせ師匠の浪曲「秋色桜」、林家正雀師匠の「猫の皿」、橘家圓太郎師匠の「親子酒」、アサダ二世さんの奇術、主任は金原亭馬生「紙入れ」で、その後、入れ替わり、立ち替わりの大喜利の春らしい高座舞でした。橘家圓太郎師匠の「親子酒」がなんだか印象に残りました。落語パラダイスですな。
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上野にある東京芸術大学の美術館で開催されている『大吉原展』を見に行きました。どうしても見たかった展覧会です。

近頃、好きな落語を聴きに寄席によくか通っているのですが、廓噺というジャンルさえあって、例えば、この前に聴いた鈴々舎美馬さんの二つ目昇進披露の公演での吉原を背景にした長講の「文七元結」がすばらしかった。そして、林家つる子師匠の自らの解釈と改作による「紺屋高尾」が、素晴らしいこと、限りなかったのです。

この『大吉原展』には江戸の世のもっともきらびやかな文化の発信地であった吉原遊廓の陽の要素の前提となる「苦界」とも呼ばれた負や陰の部分にも、監修者の江戸時代と文化の研究者である田中優子さんは光を当てるかのようで、素晴らしい。見学しているうちに、ぼくの耳には、林家つる子師匠の「紺屋高尾」の花魁、高尾太夫の「ここにあるものはあたしのものなんか何にもないんだよ」が響いてくるようです。

浮世絵に描かれた遊女や辻村寿三郎さんの花魁の人形を配した吉原のジオラマの素晴らしさ、美しさ。この展覧会で見つけた辻村寿三郎さんの吉原への言葉を引用させてください。

 華の吉原仲の町。
 悲しい女達の住む館ではあるのだけれど、それを悲しく作るのは、あまりに彼女達に惨い。
 女達にその悲しみを忘れてもらいたくて、絢爛に楽しくしてやるのが、
 彼女達のはなむけになるどろうと。
 男達ではなく、女達にだけに楽しんでもらいたい。
 復元ではなく、江戸の女達の心意気である。
 女の艶やかさの誇りなのだ。
 後にも先にも、この狂乱の文化はないだろう。
 人間は、悲しみや苦しみにもにも、華やかにその花を咲かせることができるのだから、ひとの生命とは尊いものである。
 私は、置屋の料理屋で育ったので、こうした苦界の女達への思い入れが、人より強いのかもしれない。
 辛いこと、悲しいこと、苦しいこと、冷酷なようだけれど、それらに耐えて活きているひと達の、なんと美しいことだろう。
 ひとの道に生まれてきて、貧しくても、裕福でいても、美しく活きる姿をみせてこそ、
 生まれてきたことへの、感謝であり、また人間としてのあかしでもあるのです。
 艶めいて、鎮魂の饗宴のさかもりは、先ず吉原の女達から・・・・・・

その技芸に富んだ遊女の生活とその過酷さ。公娼制度の廃止によるアンビバレントな負の部分。いろんなことを感じ、考えさせられます。ここで、この展覧会で知った松尾芭蕉の高弟、宝井其角の一句。

 闇の夜は吉原ばかり月夜哉

この句は、「闇の夜は、吉原ばかり月夜哉」と読んだときと、「闇の夜は吉原ばかり、月夜哉」と読んだときの二つの意味を有しているという。ぼくは歴史の向こうに消え去り、弥陀の本願の岸辺で眠る遊女たちの平穏を祈るばかりです。

それから、三千五百円のすこし値のはる図録もすばらしかった。全オールカラーの大きく分厚い本は吉原研究の集大成のようでもあります。

大吉原展
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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