えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
片桐健滋監督の『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』を見ました。殺陣などのアクションシーンがすごくて、古いぼくは、これは黒澤明監督の頃から綿々と続く東宝映画の伝統を見せられているかのようにも思えます。とくに土方歳三を演ずる舘ひろしさんがかっこいい。しかし、それよりもいいのはアリシパを演ずる山田杏奈さんなのです。欲に取り憑かれ、汚泥の中でもがき苦しむ登場人物らの中で、アリシパだけは、彼女が現れると静かで清浄な風が吹くかのようです。この静かな清浄の風こそが、ぼくには『ゴールデンカムイ』に隠された裏にあるメッセージだとも思えてしまいます。さて、物語は何処に向かうのか、野田サトルさんの原作の漫画をを読んでいないぼくには分かりませんが、アリシパの清浄な風が、さまざまな悪なるものを浄化し、正し、世界を救うことを願ってやみません。
映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』公式サイト
地引雄一さんの著した『ストリート・キングダム 東京ロッカーズと80'sインディーズシーン 最終版』が面白くて、一気読みしました。この本は、つい最近、公開された田口トモロヲ監督の『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の原作にあたる本です。映画よりも広範囲に時代も少し長く、いろんなバンドやことがらがつづられています。
367ページの本は、143ページまでが写真集であったりします。その写真集のどこかに、愚かなことにも、客席のどこかに自分が写っていないかと探したりしていまいます。
文を読めば、あのころが真空パックされているようで、一気に熱気をおびた風景と人たちの走馬灯が展開されるかのようです。けれども、そのシーンの後半は、ぼくはほとんど経験していないことに気づきました。後半のそのころはブルースやリズム・アンド・ブルース、ソウルに目覚め、そのような所謂ブラック・ミュージックばかりを聞いていたのであります。そんな中で、二つだけ動向が気になり、追いかけつづけたバンドがあって、この本『ストリート・キングダム』にはあまり載せられていないFOOLSとJAGATARAでありました。FOOLSはParliamentやSLY And Familystoneで、JAGATARAはFela KutyやJames Brownみたいで、彼らの音楽にマイノリティや弱者が生きのびるためのビートやリズムを感じたのです。
読了後、ふと、英国の偉大なるパンク・バンド、CLASHのリーダー、ジョー・ストラマーの言葉を思い出します。
Punk is attitude, not style.
STREET KINGDOM The Final – Tokyo Rockers & the 1980’s indies scene by Yuichi Jibiki
マイリス・ヴァラード監督とリアン=チョー・ハン監督の共同監督による『アメリと雨の物語』を見ました。神戸の近くの里村の古い民家でベルギーの外交官の子どもとして生まれた赤ちゃんの0歳から4歳までを、その赤ちゃんの視点で描いた物語でした。
時代は1969年前後からのことのように思われます。時は反米の学生運動が日本でも都市では吹き荒れていたころです。今はトランプというアメリカ合衆国の大統領が世界中の良心に火をつけているようでもあるのですが・・・。けれども、この映画の中の日本はとても静かで美しい。まるで嘘のような静かな美しさは、田舎を舞台に、赤ちゃんの視点で物語られているからでしょうか? そのような背景の日本の景色の美しさが際立っており、それはとても素晴らしい。そして、この映画はフランス映画で、今、欧米どころか世界中で二度目のジャポニズム・ブームかもしれません。
映画の初めの方では、この映画はスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』の続編かと思わせるようなところもあり、哲学的思弁も語られ、謎めいたシーンも多く、それにも惹かれてしまいました。それは生きていることの不思議さと生の肯定であるようにも思えて、何度も見たくなるような傑作なのです。生まれてくる赤ちゃんを待つお母さんに見てほしい、そのような映画でもあります。
原作のアメリー・ノートンの『チューブな形而上学』は絶版となっているようですが、ぜひとも読みたく、出版社のみなさま、再版してはいただけないでしょうか? お願いいたします。
映画『アメリと雨の物語』公式サイト
岡倉天心が英語で著し、田中万里生さんが翻訳し、岡倉登志さんの監修した『茶の本』を読了しました。明治人が英語で書いた名著『The Book Of Tea』の決定的な新訳であります。
ぼくは新渡戸稲造の著した『武士道』こと『Bushido: The Soul of Japan』、内村鑑三の著した『代表的日本人』こと『Representative Men of Japan/Japan and the Japanese』とともに、この『The Book Of Tea』こと『茶の本』を明治の日本人の英語で書いた名著だと思うものです。とくにこの『茶の本』は日本の美しさを表して白眉であり、海外をよく知って、仏教や道教の源流であるインドや中国の文化への敬意も忘れず、コスモポライツ、世界市民的な視点で、英語で書かれてこそ、確かに見えてくる日本や日本人とその美しさがあるだろう、などとぼくは思うのです。
ネトウヨらの日本礼賛にも教条主義的左翼の日本嫌悪にも強い何かの違和感を持つぼくには、この本は、この本に付された会田誠さんの解説、エッセイとともに、説得的でありました。現代美術家の会田誠さんは、今の時代の実践と実作の内側から岡倉天心の人と思想を書かれ、出色であります。
名著の新たな復活を祝うばかりでなのです。
茶の本 | 株式会社トゥーヴァージンズ