えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ
国立能楽堂で能楽を見ました。坂井孝一先生の講演『平家物語と能が生み育てた優美なる救済劇』があり、狂言は大蔵流『真奪』、能は観世流『敦盛』でした。
『真奪』では「どろなわ」の言葉の由来を知りました。「どろなわ」とは泥棒を捕まえてから縄を結うことで、なるほどの滑稽劇であります。
『敦盛』は平家物語からの話です。源氏の武者、熊谷次郎直実が数え十五歳もしくは十六歳の幼き平敦盛を征伐し、斬りすてたのを後悔し、仏道に入り、その斬りすてた敦盛を回向し、敦盛の霊は慰められ、敵も味方もなく、仏道の前では仲間である、と悟るという話でございました。世阿弥による名作であります。ついには平らかな和解となることに、ぼくも涙するしだいです。能の美しい精神性を感じざるえません。めでたし、めでたし。
吉祥寺のMojo Cafeにて濱口祐自さんと菅原広已さんのライブを見ました。フィンガーピッキングでのアコースティック・ギターの名手のお二人、まず出てきていらしたのが菅原広已さんでした。そのトーキング・ブルースがギネスビールを飲んだぼくの腹と心にしみわたって気持ちいい。そして、濱口祐自さん登場。紀州弁のおしゃべりも面白く、濱口祐自さんのアコースティック・ギターでのブルースのRobert Johnson、ラグタイムのBlind Willie Blake、はたまた、クラシックのエリック・サティの「グノシェンヌ」やら映画「禁じられた遊び」のテーマ、オリジナルの曲もあるインストゥルメンタルは今、世界一のような気もするのです。なんと、ギターは楽に弾けることにこしたことはないと、「グノシェンヌ」や「禁じられた遊び」のテーマは営業秘密の自分で開発した調弦方法を採用しているともおっしゃっておられました。楽しい夜はふけていったのです。
ジョン・クローリー監督の『We Live in Time この時を生きて』を見ました。直球の恋愛ドラマでした。時間が過去、現在、未来へと錯綜しても、何だか分かってしまいます。ついには「バイバイ」という言葉に収斂しつつも、爽やかな語り口でありました。ヒロイン役のフローレンス・ピューの体当たりの熱い演技が素晴らしい。ぼくもこんなピュアな恋愛をしたかったけれど、人生、実らぬ恋ばかり、今ではいまさらの夢のようですな。
映画『We Live in Time この時を生きて』公式サイト
李相日監督の『国宝』を見ました。出入りで父親を殺されたヤクザの息子が歌舞伎役者の名門にあづけられ、名役者となっていく約半世紀の一代記。
主役のヤクザの息子役が吉沢亮くん、歌舞伎の家の跡取り息子役が横浜流星くん、主役のヤクザの息子の父役の永瀬正敏さん、歌舞伎の家の芸にきびしい父役が渡辺謙さん、母役が寺島しのぶさん、ヤクザの息子の恋人役が高畑充希さん、歌舞伎の女形の重鎮の役に田中泯さんであったりして、オールスターキャストです。歌舞伎の家の出の寺島しのぶさんはインタビューで、昔の我が家を思い出した、などとおっしゃっておられました。
歌舞伎の舞台のシーンはとても美しいけれど、血とか親子の葛藤やら伝統が混ざりあい、物語はどこか暗く、重い。その重さが心地よい感動をよぶかのようです。昔の日本映画にこのようなものがたくさんあったような気もします。もちろん、事実に基づく物語ではなく、吉田修一さんによる小説です。かさねがさね、いくつも出てくる歌舞伎の舞台のシーンは素晴らしく、あー、歌舞伎の本ものの舞台を一度、見てみたいものです。エンドロールを見ながら、胸がじーんとなり、芸の道に魅入られということは悪魔に魅入られということであろうか、などと考えていました。
映画『国宝』公式サイト
友だちと高尾山に参り、歩きました。門にあった言葉は「霊氣満山」。山を歩き、氣を出せば、清浄な氣も入ってくる。体は疲れて、心は爽快です。ふと、疲れ追い越されていく自分、後塵となった自分を振り返り、テレビドラマの「水戸黄門」のテーマ曲の山上路夫さんが作詞し、木下忠司さんの作曲した「ああ人生に涙あり」を思い出しました。
♪♪♪
人生楽ありゃ 苦もあるさ
涙のあとには 虹も出る
歩いてゆくんだ しっかりと
自分の道を 踏みしめて
人生勇気が 必要だ
くじけりゃ誰かが 先に行く
後から来たのに 追い越され
泣くのがいやなら さあ歩け
人生涙と 笑顔あり
そんなに悪くは ないもんだ
なんにもしないで 生きるより
何かを求めて 生きようよ♪♪♪
そして、リフトで落とした帽子が駅に届いているのは嬉しかったのです。めでたしめでたし。
VODで小津安二郎監督の『風の中の牝雞』を見ました。何度目か再見。1948年の日本映画です。
住宅街の中に大きな化学プラントのような建物があるのが何か気になります。車は道を走っていない。
戦後、田中絹代の演ずる夫の戦場からの復員を待つ妻が、病気となった子どものために一夜だけ身体を売るということをし、子どもは回復するが、佐野周二演ずる後に復員となった夫と確執となる、そんな話でした。日本と日本人にとって、この頃が一番、苦しかった時かもしれません。
小津自身、この映画を失敗作と認めている。カンヌ映画祭でグランプリをとった『スパイの女』の黒沢清監督はこの映画を小津の映画の中で異色のカルト的なもっとも重要な映画としている。
さて、ウィキペディアから三つの批評を紹介します。映画評論家の佐藤忠男の批評。
「若い娼婦が隅田川沿いの空き地で弁当を食べるシーンを引いて「敗戦で日本人は娼婦のごときものとなった、しかしそれでも、空き地で弁当を食べる素朴さは保持しようではないか」」
アメリカの作家・批評家であるジョーン・メレンの批評。
「夫婦の子どもの名前がヒロ(浩)であることを挙げ「この名前が天皇から取られたのは偶然ではない」とした上で「彼女は日本人の生活のすぐれた点を守るために身を売ったのである。小津は日本人に向かって、すぐれた点、つまり占領によって汚されることのないと彼が信じる日本人の生活の貴重なものを守るために、新しい社会を受け入れるべきだと語っている」」
フランスの映画評論家・映画プロデューサーのユベール・ニオグレの批評。
「戦後日本の道徳的雰囲気についてのもっとも素晴しい要約のひとつであり、小津作品のなかで戦争の時代を締めくくり、今日もっとも知られた後期作品に先立つ転回点としての作品でもある」
ぼくは、妻の不貞を許せない夫への、笠智衆の演ずるその夫の同僚の言葉が、小津安二郎自身の言葉としてどこか響いているような気もしました。
小津安二郎はこの映画の反省として、二度と戦争にまつわる否定的なことは映画にしない、とインタビューで答えていたけれど、後の映画にも被害、加害の両方を深めた戦争の何某かは、小津の映画に隠れて表出されることとなるのです。
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プロフィール
HN:
えいちゃん
性別:
男性
職業:
S.E.
趣味:
音楽
自己紹介:
音楽を演奏したり聴いたりするのが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
歌ってしまいます。そしてギターも少々。
Sam CookeやOtis Reddingなど古いR&Bが好きです。
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