えいちゃん(さかい きよたか)
えいちゃんのぶろぐ

昔、NHKのラジオか何かで、生前の谷崎潤一郎がその長編の代表作「細雪」につてインタビューで語っているのを聞いたことがある。この日本の近代文学最高の文豪はその「細雪」について、あれは戦前、戦時下の軍部がうるさくて、めくらましに書いたんだよ、というようなことを言っていた。その「細雪」もついには戦中に軍部によって発行禁止となる。発行禁止となっても谷崎は書きつづけ、戦後「細雪」は完成する。
もう一人、永井荷風は「断腸的日乗」を戦前、戦中、発表のあてもなく、戦後の彼の死の前日まで書きつづけ、死後、発表される。「断腸的日乗」から一節を引用します。
「今秋国民兵召集以来、軍人政治の害毒いよいよ社会の各方面に波及するに至れり。親は44、5歳にて祖先伝来の家業を失いて職工となり、その子は十六、七歳より学業を捨て職工より兵卒となりて戦地に死し、母は食物なく幼児の養育に苦しむ。国を挙げて各人みな重税の負担に耐えざらむとす。今は勝敗を問わず、ただ一日も早く戦争の終了を待つのみ也」
世情を感じ、明日を憂い、こんな二人の作家を思い出した。
もう一人、永井荷風は「断腸的日乗」を戦前、戦中、発表のあてもなく、戦後の彼の死の前日まで書きつづけ、死後、発表される。「断腸的日乗」から一節を引用します。
「今秋国民兵召集以来、軍人政治の害毒いよいよ社会の各方面に波及するに至れり。親は44、5歳にて祖先伝来の家業を失いて職工となり、その子は十六、七歳より学業を捨て職工より兵卒となりて戦地に死し、母は食物なく幼児の養育に苦しむ。国を挙げて各人みな重税の負担に耐えざらむとす。今は勝敗を問わず、ただ一日も早く戦争の終了を待つのみ也」
世情を感じ、明日を憂い、こんな二人の作家を思い出した。

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